1.《ネタバレ》 クリスマスイブを迎えたその日、幼い子供たちとともに楽しい祭日を祝っていたバーンズ一家。だが、そんな順風満帆な家族の元に何の前触れもなく長男ベンが帰ってくる。母親であるホリーは満面の笑顔で彼を迎え入れるのだが、ベンの妹であるアイヴィーや義理の父親はあからさまな拒絶反応を示すのだった。何故なら彼はかつて、医者に処方された鎮痛剤のせいで依存症となり、クスリ欲しさに売人となって家族に散々迷惑をかけたから――。「今まですまなかった。でも、俺はもうすっかり真人間になったんだ」。そんなベンの言葉とホリーの説得もあり、家族は渋々一日だけならと彼を受け入れることに。だが、過去の酷い行いは彼を簡単には許してくれない。外出から帰ってきた家族は、家の中が滅茶苦茶に荒らされ、しかも愛犬が居なくなってしまったことを知る。哀しみに沈む家族のため、ベンは母親とともに家を飛び出すのだった。彼のせいで依存症となり命を落としてしまった娘の両親、彼にクスリを横流ししていた教師、そして売人時代の危険な仲間たち。犬を連れ去ったのは、果たして誰なのか?ベンは家族のために自らの過去と向き合おうとするのだが…。かつて些細なきっかけで麻薬中毒となった長男と彼を献身的に支えようともがく母親との特別な一日を描いたヒューマン・ドラマ。ジュリア・ロバーツがそんな母親役を熱演しているということで今回鑑賞してみたのですが、いやはや、これがよく出来た脚本の力が光る佳品に仕上がっておりました。本当にたった一日の出来事しか描かれていないのですが、それでもここにはこの母子の良い時も悪い時も含めた濃密な時間がちゃんと存在している。安易に回想シーンに逃げることも出来ただろうに敢えてそうしなかったのには、監督の覚悟を感じる。きっと過去に何度も裏切られ、そして酷く傷つけあったこともあったのだろう。それでも息子を必死で信じようとする母親の深い愛情に、僕は終始心を揺さぶられっぱなしでした。物語の後半、母子は連れ去られた愛犬の行方を捜して街を奔走するのですが、ここら辺のサスペンスの描き方も巧い。居なくなった息子の行き先を知るために、麻薬中毒のホームレスに敢えて麻薬を渡すシーンは、この問題の根深さを炙りだすことに成功している。そして、タイトルの二重の意味を浮かび上がらせる秀逸なラスト。哀切極まりないメッセージに、僕は思わず涙してしまいました。お薦めです。