1.《ネタバレ》 同一の一連のエピソードを3人の異なる視点から語ってゆく…とゆーのは、確かに『羅生門』或いは(そのエピソードが本質的には男女の三角関係だという点では)『去年マリエンバートで』なんかにも構成としては酷似してると言えるでしょう。ただ、今作は上映時間の大半に渡って繰り広げられるその3つの「主張」に関して、映像的にはソコに決定的な矛盾があるワケでもなく(例えばル・グリがマルグリットに乱暴を働いたのが事実か否か、という部分とかが争点になるワケではなく)、あくまで各章で実際に観せるエピソードの取捨選択によるニュアンスの差異(と、映される映像自体の若干の物理的差異)に依って鑑賞者に与える3人の印象とゆーのが移り変わっていく、という意味での心理的サスペンスという感じではあったですかね(=ミステリー的なトリックが重厚・複雑、というよりはずっとシンプルなヤツ)。
だから同じ話を3回観せられるワケなのですが、映画自体の諸々のクオリティが非常に高度なのもあって、その部分は間延びしてるというコトもなくずっとハラハラと観入ってゆけましたね。そして、肝心なラストの決闘で誰が勝つのか(=誰が勝つ「べき」なお話なのか)という点にまたハラハラ感を残す為にか、結局3人ともに何らか「瑕」がある、とも言えなくもない様なお話で、最後まで中々にムズムズもしたのですよ。男2人はワリと単純なクズなのですケド、まあ微妙ですがマルグリットにも完全に「後ろめたさ」が無かったかとゆーと…(彼女も根本的には全く悪くないのですが、ゆーてル・グリの「主張」のある部分1割程度は真実に見えなくもない…というレベルかとは思いますが)
とは言えその意味では、やはり時代的なコトもあって非常に「抑圧された女性」という存在であるマルグリットに関して一番「丸く収まる」この結末は、納得感やホッとする感の観点からは非常に無難なハッピー・エンドだったとも思います。そして重ねて、映画自体の質は歴史ものとしてもサスペンスとしても、かつ部分的に挿入される壮絶なアクション面にしても極めて高レベルだったと言って好いでしょう。普通に傑作の部類だと思いますね(流石リドリー・スコット、また次回作が観たくなってしまいますね)。