1.《ネタバレ》 ここは何処までも凍てついた大地が続く北欧の小さな島国、ラプシ王国。大鴉王と呼ばれ、その残虐非道な性格から周囲の国々を恐れさせたオーヴァンディル王の元、貧しいながらも人々は平穏に暮らしていた。そんなある日、攻め入った国から多くの奴隷を戦利品として持ち帰った王は、腹違いの弟の裏切りに遭い、悲運の死を遂げてしまうのだった。国王の側についた者は皆、残虐な手法で殺され、王妃は無理やり新たな国王の妃とされてしまう。そしてまだ10歳になったばかりの幼い王子アムレートは殺されそうになりながらも何とか一人、小さな舟で逃げ出すのだった。「いつの日か父の仇を討つ!母上を救い出す!」と何度も何度も誓いながら――。数年後、ロシアでヴァイキングとなり、近隣の町で略奪を繰り返していたアムレートは、父の仇であるフィヨルニル王が戦に破れ、遠くアイスランドの地まで追われたことを知るのだった。今こそ復讐の時はきた。故国で語り継がれてきた預言者の幻に導かれるまま、奴隷に身をやつしたアムレートは密かにアイスランドへとやってくる。ただ、亡き父の復讐を果たすために……。中世北欧のヴァイキング文化をモチーフに、父王を殺された王子の苦難に満ちた復讐劇を生々しく描き出す英雄譚。とにかく血腥い!!北欧のヴァイキング映画って何本か観ましたが、どれもこれもリアルで残虐でとにかく濃い濃い濃い!!例えるなら、『300(スリーハンドレッド)』のシリアス版みたいな。ヴァイキングっって、どんなけ野蛮な人たちなんだ(笑)。でも自分はこーゆーこちらにまで血の匂いが漂ってきそうなこの荒んだ世界観、けっこう好きでした。中世の英雄譚らしくかなりシンプルなお話なのでその分、俳優陣の熱演が光ります。主役を演じたアレキサンダー・スカルスガルドのそのただ淡々と復讐を果たしてゆく寡黙な演技も素晴らしく、彼に惹かれてゆく奴隷役のアニヤ・テイラー=ジョイもすこぶる魅力的。そんな俳優たちを、シャープでスタイリッシュな映像で捉えたこの監督のセンスも抜群にいい。モノクロームを基調としたこの映像が終始カッコよく、重厚な音楽がよりこの世界観を引き立てています。芸術的価値は充分高い。前作『ライトハウス』の時から監督の映像美には注目してましたが、本作で見事に完成されたんじゃないかな。燃え盛る火山をバックにした最後の闘いと、その後のヴァルキリー登場には思わず拍手しそうになっている自分がいました。うん、満足!!