4.《ネタバレ》 少年時代の微妙な力関係の変化が如実に表れている。
猿の世界と同じくらいパワーバランスに敏感で、残酷なくらいに人間関係が変わってしまう。
ガキ大将の武が子供っぽい感情の揺れを見せるのがリアル。
東京から疎開してきた進二に優しくしたかと思えば、いじめて泣かせもする。
きまぐれのような武の行動に、進二への強い関心と執着がうかがえる。
進二の胸を突き刺したのは、武に取り入っているという女子の言葉。
女子に弱虫とか強い者に媚びている奴と思われるのは、少年にとってこの上ない屈辱だ。
進二が武に反抗してみせたのも無理はなく、共感できる。
力に頼って押さえつける者は、いつかは力によってひっくり返される。
武がボスの座を陥落してから、今までの仕返しにいじめられるのを無抵抗で黙って耐えているのは、ガキ大将のプライドそのもの。
自業自得ではあるものの、その姿は潔い。
それに比べて、健介は合理的で頭はいいが復讐がジメジメと陰性だ。
懐かしい原風景を見るような作品で、描かれた時代こそ違えどノスタルジーが刺激される。
時を経ても色あせない類の映画だろう。
山田太一の脚本だけに、隙のないしっかりとしたドラマになっている。