2.《ネタバレ》 佐賀で研究会があった折、ピアノの思い出にまつわる映画が近く公開されるので、ぜひ皆さんにその映画を見てほしいというお誘いがあった。えっ、音楽の研究会でもなかったのに、なぜピアノ?とその時は不思議に思ったのだが・・・。
映画を見ると、それは単なるピアノの思い出話や特攻隊の悲劇ではなく、戦争への怒りを込めたものだということがよくわかった。
特攻隊となって飛び立つ前に「ピアノを思う存分弾きたい・・・」。二人の若者がピアノを弾き、戦地へ飛び立つまでの話であれば、泣けるお話で終わってしまう。だがその後がこの映画のメインなのである。
ピアノを弾いた特攻隊員の一人は、実は飛行機の整備不良で基地へ戻ってくる。しかしたとえ整備不良であっても、当時の日本では、それは戦死した同胞に対して卑怯者・臆病者としか扱われず、許されないことであった。
この映画の中に「振武寮」というものが出てくる。当時は軍の重大秘密とされ、外部に漏らすことが絶対にできなかった恥部。その振武寮での扱いを映画にし、戦争の愚かさを訴えたのがこの映画なのだ。
映画の中にドキュメンタリー作家やラジオ局の記者らが出てくるが、いかに真実を聞き出すことが難しかったかがよくわかる。