7.《ネタバレ》 中年夫婦の件待機を描いた映画。盛りを過ぎた上原謙を面白くもおかしくもない亭主にしたところが上手い
亭主の言うこと成すことが癇に障る原節子の妻は思いあまって東京の実家に家出する。
羽を伸ばしてるようで、どこかで気が咎めている。心配。だから手紙を書くが出さない。
職安に行って仕事を探したりする。書いた手紙は離婚を仄めかす内容だったのかもしれない。
要は拗ねているのだ。もっと私にかまってよ、もっと私を見てよ。
猫と小林桂樹がいい。
夜遊びして平気で今夜ここへ泊めてと言う姪の里子をビシッと諫める時の言葉に
この映画の肝とこの夫婦への監督の本音がある。
あの言葉を聞いた三千代は帰る決心をする。
大阪に訪ねてきた里子を三千代はだらしないと批判するが実家にいる時の
三千代だってドッコイドッコイ。
脱ぎ散らかした着物を杉村春子の母親がパッパと片付けるところにチャンとそれが出ている
また着物をテキパキと片付ける杉村春子のさりげない上手さは絶品!!
三千代の悩みなど悩みではない。
世間の人は、そんな退屈な日々をそれぞれ鬱屈を抱えて、それを「そんなもんだよ」と
やりすごしているのだ。今日明日の生活を懸命に生きている。
「めし」の心配の方がはるかに大事なのだ。
けっこうなご身分ですね。いい気なもんだお嬢さんは・・・・・・・
成瀬のそんな冷ややかな皮肉が聞こえてきそうな秀作。