12.《ネタバレ》 こういう実話で社会性を持った作品は好きです、個人的には。このお話はいわゆるTVの「やらせ」問題では元祖ともいうべき事件だそうですね。なんでたかが「やらせ」で議会でとりあげる様な騒ぎになるんだよと思いますが、そこはそれぞれの登場人物の思惑が交差していたからで、そこら辺の描写はレッドフォードらしくきっちり描かれていて好感が持てます。ですけど、「誰も損していない、みんな儲けたじゃないか」という大人のロジックがラストを締めることで、この作品の印象を弱めてしまったのじゃないかな。結局、良心から自ら議会で証言したチャールズ・ヴァン・ドーレンだけが貧乏くじを引いたように見えるところが皮肉です。「トカゲのしっぽ」にされた下請けプロの社長や、出世の足がかりにするために事件を調査した弁護士もその後の人生では成功をおさめて裕福になったととれるテロップが流れて、バカ丸出しの観衆が大笑いする映像をエンドタイトルに持ってくるところはなかなか味がある構成でした。 名優ポール・スコフィールドとジョン・タートゥーロの演技が光っているのは当然ですが、映画監督が二人(マーティン・スコセッシとヴァリー・レヴィンソン)も出演しているのも面白い。特にスコセッシはなんか貫禄さえ感じさせる好演でした。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-04-18 00:23:00) (良:1票) |
11.《ネタバレ》 「今さらTVのヤラセに驚かないよ」という意見は的外れでは無いと思うが、この映画の舞台をもう一度思い出して欲しい。時代は1950年代の後半。映画が作られた頃から数えて40年前、今となっては約50年も前の話なのだ。クイズ「21」が始まる時間になれば誰もがチャンネルをクイズ「21」に回し、仕事帰りのサラリーマンは「21」を見るために足早に帰宅の途につく。家に帰れなかった者は近くの家の窓にへばりつき、「21」を視聴する。このオープニングを見れば「21」が当時のアメリカ人にとってにどれほどのものだったかが容易に分かる。当時のアメリカ人にとって毎週放送のあるクイズ「21」は、今の日本に例えればワールド・カップの日本戦が毎週あるようなものだったのかもしれない。それほどにアメリカの民衆が熱狂していた「21」のヤラセに、超エリート一家のヴァン・ドーレン家の1人で名門のコロンビア大学で講師をしているチャールズ・ヴァン・ドーレンが関与していたというのだから、その衝撃は計り知れない。この映画では3人の人物に焦点が当てられているが、ステンペル(ジョン・タトゥーロ)とグッドウィン(ロブ・モロー)はユダヤ人という共通点があり、グッドウィンとチャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)はエリートという共通点がある。そしてステンペルとチャールズは「21」で戦い、ヤラセで決着を付けたという因縁がある。この3人のトライアングルが実に見事でドラマチックな展開を見せる。そして注目したいのが、このスキャンダルの後グッドウィンはJFKのスピーチ・ライターになり、その後アメリカに少なからぬ影響を及ぼしたという点だ。クイズ「21」のスキャンダルはTVの倫理観を揺るがし、TVの視聴者に対する影響力の大きさを物語っただけでは無く、アメリカの激動の60年代の到来を予感させる象徴的な事件だっと言えるだろう。このアメリカの転換点を象徴する大事件を約2時間で観客に提示する事が出来たロバート・レッドフォードの手腕は見事。 |
10.《ネタバレ》 TV業界のやらせ行為は1956年当時に於いて衝撃が大きかったのが今では誰でもさもありなんと言えるので、「公的事業ではなく娯楽番組においての不正行為によって皆が得をした、誰も傷ついていない」委員会でのダン・エンライトの証言にうっかり納得しそうになる本作。彼や事業者達がチャールズ・ヴァン・ドーレンをビジネスの道具としてしか見ておらず傷つけたとは頭の隅にも浮かばない事が薄ら寒い。父子がケーキを食するシーンが忘れられません。自業自得の後戻り出来ない苦しさを吐き出すのを懸命に堪える息子と訝る父、もどかしさで泣きそうに。お目当てのポール・スコフィールドに満足させられ、嫌いなレイフ・ファインズの驚きの好演に得した気分になりました。監督の生真面目さを感じる良作。 |
9.《ネタバレ》 良かった。特にヒーローのような人物は出てこないが、テレビという装置の巨大な錬金術に誰もがとまどい、その中で正しく生きようとする登場人物たちに共感を持った。最後の教授の声明には、教職者として不正をした後、彼なりに誠実に事態に対処しようという姿勢が感じられた。これはレッドフォード主演の「候補者ビルマッケイ」で少し、戸棚に閉まっといた問題意識に対する彼の一つの答えのように思えた。テレビ、選挙など大きな組織の中で個人が埋没する恐ろしさへの警鐘と思えたのだ。 【トント】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-10-12 18:22:36) |
8.レッドフォード監督はきめ細かい、端正な描き方をしますよね。 センセーショナルに興奮させることを、あえて抑えよう、抑えよう、という演出です。 ちょっとこだわりすぎ?の感なきにしもあらずで、昔はそういう姿勢が苦手だった気もするんですが、今や逆転。 その「こだわり」がいいのです。 レイフ・ファインズ、ジョン・タトゥーロの緊張感の高い演技に、息苦しくなるんだけど、そこがいい。 【おばちゃん】さん 8点(2004-04-23 14:20:13) |
7.昨日何年かぶりで再見しました。初見の時はあまり印象深くなかったので今回とても新鮮に感じました。見直してみてびっくりしたことは、なんと多彩なキャストですこと!!ですね。マーティン・スコセッシは役者としても充分やっていける人ね。バリー・レヴィンソンも出てたようです。ミラ・ソルヴィノは意外にもお堅いキャラでした。物語としては実話といえど、テレビ界のヤラセという今では普通のこととなっているものを取り上げているわけですが、昔はこんなことがこんなに大問題になるほど、世の中も人々も今よりずっと純粋だったんだよ、ということなのかしらん。メディアのヤラセがある程度容認されてしまっていることへの皮肉と勝手に受け取りました。この作品を観て、ドキッとする人は多いのかもね。なんといってもジョン・タトゥーロのコンプレックスからくる執念深さ、いやらしさが見事でしたね。這い上がり人生のタトゥーロと名家のエリートおぼっちゃま、レイフ・ファインズの対比が面白い。今見るなら、こんな人がここに出てる!という発見が楽しい作品です。 【envy】さん 8点(2004-02-19 09:05:52) |
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6.テレビ局の横暴の暴露、ヤラセや差別の弾劾は、社会性のある問題提起ではある。でも。この映画にとって、それはバックボーンにしか過ぎないんじゃないか、とも思う。「社会性」という言葉は、「社会」が変われば包含する内容が変わる。あの当時のあの問題は、現代の我々――既にテレビ局のやらせ問題に飼い馴らされている――に対して、正直、あまりインパクトを与えないだろう。だから「新しさを感じない」という感想が漏れるのも、もっとも。でも、敢えてそんな古めの食材で料理したレッドフォードおじさんが問いたかったのは、そこで苦悶する「人間」の姿だったのではないか。堕ちて行くエリートの姿と、果ての無い苦悶やカタルシスを描く人間ドラマだけは、「社会性」の「社会」が意味を失っても、残っていくような気がする。「人間のドラマ」として見た。俳優が上手かった。それで、この点数。 【中山家】さん 8点(2004-02-19 06:16:13) |
5.テレビ業界のもはや常識とも言えそうな欺瞞の存在をめぐる顛末がきめ細かに描けていた。テレビにおける「やらせ」が罪かそうでないかはとても微妙なことだと思う。その間で振り回される主人公たちの生き方がとてもリアルで真に迫っていた。物語自体が事実であるだけにより一層の説得力があった。メインキャスト3人の演技もそれぞれ良かったけど、ロバート・レッドフォードの監督としての力量には脱帽。 【スマイル・ペコ】さん 8点(2003-09-19 16:08:47) |
4.俳優レッドフォードのファンなのですが、贔屓目を抜きにして、監督としての実力を思い知った映画ですね。丁寧にじっくりと撮られた上質のドラマです。事件そのものを暴いていく推理物の面白さと、登場人物の心情がきめ細かく描かれています。ただ、あいかわらずレッドフォードの作風は観客へのサービス精神にいささか欠ける(よく言えば、媚びない演出?)ので、頭がすっきりしてる時に見ることをおススメします。 |
3.派手さはないけど、堅実に作ったのが伝わりました。終始、緊迫感がありドキドキしました。レイフ・ファインズの表情にはグッときました。テレビ番組について改めて考えさせられました。 【もみじプリン】さん 8点(2002-05-24 10:49:46) |
2.やっぱり実話モノは好き。最後のセリフに考えさせられる映画。被害を被ったのは結局教授だけかと思うとちょっと泣きそうになる。 【てぃむ】さん 8点(2002-01-21 10:40:50) |
1.妙に印象が強い映画。やっぱりテレビ界の裏側は「ヤラセ」が支配しているのは事実なんでしょうね。 【DEL】さん 8点(2000-07-21 11:57:27) |