1.《ネタバレ》 1960年代後半にたった2本撮っただけで消えて(消されて)しまった天才監督マイケル・サーンの傑作カルトです。アメリカでもソフト化されてないそうで、日本で鑑賞するのは至難の業ですが、15年前に大阪の民放局で「マイラ」と「ジョアンナ」の2本立て(!)で深夜放映したのを、運良く録画することができました。ゲイの映画青年マイロンが性転換手術を受けてマイラになり、マイロンの未亡人になりすまして伯父の経営する俳優学校に乗り込み遺産相続争いをするというのがストーリーです。マイロンをレックス・リード(この人はゲイで有名な映画評論家でこの配役はセルフパロディ)、マイラをラクエル・ウェルチが演じるのですが、マイラが行くところにマイロンが幽霊の様に同一画面に登場するというシュールな演出です。この作品の斬新なところは、登場人物の心象風景を往年のハリウッド映画のカットをつないで表現する点で、巧みな編集には感心します。脇を固めるジョン・ヒューストン、メイ・ウェストの怪演も見ものです。英国人マイケル・サーンはこれらの演出作法で米国文化を徹底的にこきおろし、当然ハリウッドからは総スカンを喰い、酷評されたうえX指定(日本でいう成人映画)を受けサーンはハリウッドから追放されました。アンディ・ウォーホルなどこの映画を絶賛する文化人も多かったそうです。オープニングとラストに流れるシャーリー・テンプルの歌声が耳に残ります。