4.想像以上に愛らしい映画だった。
年の瀬、描かれる映画世界の時候的にも、本質的なテーマ的にも、この頃合いに観るに相応しい映画であったことを幸運に思う。
人は人により傷つく。ならば人との関わりなんて持ちたくないと思いがちだけれども、その傷を癒すのも、また人との関わり合いだ。
面倒で、大変なことだけれど、その繰り返しがなければ、生きてはいけない。
その人間ならではの弱さと脆さ、愛すべき滑稽さを雄弁に語る映画だったと思う。
物語はそれぞれに心に傷を負い、精神をこじらせた男と女を軸に描き出される。
この映画が巧いのは、“こじらせている”のは決してこの主人公たちばかりではないということ。
彼らを取り巻く家族や友人、街の人々も、それぞれが心に何らかの問題を抱え、時にそれを仕舞い込み、時にそれを吐き出しつつ、生きている。
それは即ち、決して主人公の二人が特異なわけではなく、世の中全体が抱える普遍的な病理性なのだ。
ほんの少し切り口を変えたなら、容易にもっと悲劇的なお話にもなるだろう。
しかし、この映画は、その社会全体が抱える心の闇を豪快に笑い飛ばしている。
それはとても勇敢で、幸福なアプローチであると思う。
アカデミー賞の俳優部門のすべてにノミネートされるに相応しく、俳優たちの演技はそれぞれ素晴らしい。
その中でもやはり特筆すべきは、主演女優賞を勝ち取ったジェニファー・ローレンスだろう。
この若い女優の存在感には、この映画が持つ愛らしさと繊細さと勇敢さのすべてが満ち溢れていて、あまりに魅力的だった。
彼女がこの先さらにどのようなキャリアを辿っていくのか、映画ファンとして楽しみでならない。