1.《ネタバレ》 展開目まぐるしいノンストップアクションでもなければ、生死が懸かるサスペンススリラーでもない本作は、無気力な女、寂しい女にクズ男、刹那の快楽と暴力で画面が支配されており、決して「愉快」でも「楽しい」映画でもありません。しかし、視終えて頭の中で反芻するうちに、染々と心に響くものがありました。本作のテーマは「女の復讐」。確かに劇中登場する男どもは、みな見事にグズばかりでした。ボコボコにされるのも当然の報いでしょう(※ここで注釈。女子高生による男性襲撃事件の全てを、現実と捉える必要は無さそうです。襲撃の大部分は「復讐のメタファー」で宜しいかと。ジャッキー・チェンも真っ青のアクロバティックな格闘術は、劇中アニメと同じデフォルメと考えます)。しかも、春子が推奨する男への復讐法は、「幸せになって見返してやれ」という極めて前向きで健全なもの。大変結構な考え方ですが、グズ男たちに正論や常識が通じるはずもなく、現実にはノーダメージと思われます。また、オジサン的には「本当にそれでいいの?」と説教したくなる気持ちもあります。お前らの行動も軽率だぞと。一人親の苦労を知っているのかと。ただ、その一方、お父さん的には娘が幸せになってくれれば、もうそれでOKなワケで、ラストカット“春子の笑み”で全てのモヤモヤが帳消しになったのでした。行方不明は、いわば自我の喪失。『MISSING』アートが広く拡散されたのは、世の多くの女性たちが、同じ境遇にあるという証。悪い男たちに、身も心も傷つけられているのでしょう(もちろん男と女が入れ替わるケースも同じくらい在るはずですが)。でも囚われると苦しくなります。執着すると死にたくなります。だから“一度消えて無くなれ”は、生き抜く為の知恵として有効だと思います。どんなに冴えなくても、私の人生の主役は私。自分が笑顔でいられる選択なら、それがベストチョイスに違いありません。(新宿武蔵野館にて鑑賞)