1.《ネタバレ》 人の心ってのは難しい。いやわかりますデイヴィスの気持ちはなんとなく。おそらく彼はずーっと抱き続けてきたのでしょう違和感を。結婚生活に対して、そしてあてがわれた仕事に対して。だって彼は生来「正直が売り」(知人談)の人なのだから。
やり過ごしてきた日常が突然破壊され、どこに自分の心を置いていいのか分からなくなる。だから彼はいったん解体する。モノを。突き詰めれば自分の心を。もう一度構築するために。
なんて感覚の鋭敏な人だろう。彼は義父母のように「普通に」妻を追悼することができない。だって彼らのやってることは欺瞞だもの。義父母の娘は彼らが思いたいほど清廉ではなく、事実デイヴィスへの裏切り行為が最悪の形で発覚するし、ついでに義父の選んだ「人格品行方正な」奨学生は初対面のナオミ・ワッツに手を出す最低野郎だというシマツ。ああなにもかもが嘘っぱち。
だからデイヴィスは壊すのだね。ぺかぺかの居間を、豪勢だけど空疎な家を。
心バランスを失って「変人」すれすれの行動に及ぶ主人公はジェイク・ギレンホール。彼はこういう役をやらせると天才的に上手い。
デイヴィスと心が共鳴し合う15歳のナオミの息子を配したのは心憎い脚本でありました。映像もキレイです。