1.《ネタバレ》 忘れてはならないポイントがある。この映画3つのチャプター構成になっていて、それぞれ「罪」「罰」「人」とサブタイトルが付されている。ゼゼ監督が生涯をかけて言いたいこと伝えたいことって、まさにこの3つなんだと言っても過言ではない(と思う)。実は楽園は、ヘヴンズストーリー縮刷版だ。
なぜそこに人がいるのか必然性が全くない、あのY字路のシーン。柄本明と杉咲花の会話。この映画は、あそこに尽きる。閉塞と絶望と喪失が充填しているこの世界で、杉咲花が立て看板を引っこ抜いて叫ぶあのセリフこそ、希望(折り合い)であり赦し(諦め)である。罪と罰をなんとかして生きていかなければならない人の肯定である。こんな力強い映画は無二だ。
だからこそ、あのシーンをもっと丁寧に、印象的に、分かりやすく「俺が言いたいことはこれだー」という感じに撮って欲しかった。そこがちょっと残念。