1.《ネタバレ》 凄惨を極めた第一次大戦下のヨーロッパを舞台に、愛国心から志願した若き一兵士の目を通して戦争の真実を見つめた反戦ドラマ。過去に何度も映画化されたドイツの作家レマルクの古典的反戦小説『西部戦線異状なし』を再び映像化したという本作、今年のアカデミー作品賞はじめ数々の部門でノミネートを果たしたということで今回鑑賞。いやはや、予想していたこととは言え、凄まじい内容でした。汚泥と硝煙に塗れた塹壕戦はこちらにまで血の臭いが漂ってきそうなほどリアルで、観ているだけで胃のあたりが重くなります。さっきまで和気藹々と話していた同僚の兵士が上官の命令とともに出撃し、呆気なく命を落とすシーンは戦争の不条理を否が応でも分からせてくれますね。そんなこと気にもしない国の上層部は、きれいな広い部屋で豪華な食事にありついている……。戦争の実態をこれ以上ないくらい皮肉たっぷりに描いている。そして最後。あと15分で停戦が成立するというのに、将軍の意地とプライドのために再び出撃させられる一兵士たち。まさに無駄死にとしか言いようのない絶望感漂うラストは、戦争の虚しさをこれでもかというほど訴えかけてきます。自分や自分の大事な人がもしこの場に居たらと思うと堪えられない……。今も同じようなことがウクライナで起こっているのだろう。ますます混迷の度を深めてゆく現代社会に於いて、真に観るべき映画の一つと言っていい。