24.《ネタバレ》 戦国時代。人が集まる町では、節度ある町民たちによって、繁栄が保たれているものの、農村は落ち武者の襲撃に会い、道中は賊が跋扈する混沌とした世界設定。時代の動乱の中、農村に暮らしながらも、野心を胸に、動かずにはいられない男たちと、平和と安定を望む女たちを描いているのですが・・・最終的に女の生き方の強さを、まざまざと感じさせる作品ですね。常に焦燥感に駆られて足掻いている男の生き方ってなんなの的な。あと、とにかく、映像がすばらしいです。農村から町に向かう道中、船で漕ぎ進む先の霧に煙る水面の幻想的風景。主人公が迷い込んでしまう、朽木屋敷での妖艶な誘惑。直接的な表現を排して、なお妖しく艶やかなところは、海外作品では、なかなか見られない日本映画の真骨頂でしょうか。シーンのつなぎでの地を這うカメラワークは印象的でした。また家屋内での、蝋燭を光源とした光と影の繊細なコントラスト。白黒映画で、これだけ幻想的魅惑的表現が可能なのかと驚きました。日本映画のスペクタクルに付き物の安っぽさが微塵も感じられないことも驚きでした。もう、日本映画は新作でも半分は白黒でいいんじゃないかと思ってしまいました。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 8点(2024-10-10 18:23:27) |
23.私は日本人ですので、外国映画祭の審査員ほどにはジャパネスク・ロマンに「おおっ」とシビれたりしないのですが。でも、この映像の幽玄なこと湿度の高いこと、目を瞠りました。ストーリーは「まんが日本昔話」をいくつか合わせたようなもので、驚くほどの展開は無いんだけれど、件の名アニメを実写したらこうなるんだろうなあと思わせるほど雰囲気が似ています。 廃屋だったはずの朽木屋敷に誘われ、いつしか凛とした豪邸に落ち着いているとき、こちらもいつの間にやら幻惑されているのです。明かりの灯る夕刻や、先代の兜の発する気や、妖女そのものの京マチ子らに金縛りに遭わされました。怖く美しかった。 戦が庶民らにとっていかに苛酷であったか、その描写も容赦なく厳しい。里に残した妻が槍の犠牲になる場面は俯瞰ショットで音も無く、素っ気ないけれどとても恐ろしい。 妻が遭遇した残酷さ、弟夫婦らが辿る愚かさと不条理、そして主人公が出会う異界。「昔話」のテーマがてんこ盛りの、見事な映像作品でありました。 【tottoko】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-27 00:12:43) (良:1票) |
22.四回目ですが、見るたびに細々ながら見落としてるような部分が発見につながり、だんだん良くなっていく典型的な名作でしょうか?亡霊との接触部分は、何とも気だるく見事な雰囲気を醸し出してくれています。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-05-20 23:20:04) |
21.《ネタバレ》 溝口健二は好きな監督ですし、この作品も退屈せずに最後まで見れました。けれども「瀧の白糸」や「残菊物語」ほど惹かれるものは無かったです。少し説明的すぎる会話も多いですし、怪奇演出も「折鶴お千」などに比べると二番煎じ・・・なんて感じてしまいます。 時代は戦国時代ですが、おどるおどろしい雰囲気は平安時代の匂いが漂ってきます。真面目に焼き物作りに精を出していた筈の男女四人。でも肝心の男どもは妖艶な美女、成り上がりと殺し合いが魅力的に映る戦場へと行ってしまう。女たちは待ち続ける。ある者は娼婦に身を堕とし、ある者は夫の再会を待ちわびて死んで行く・・・この作品の男はみんな情けない。そんな中で本当に大切な物を思い出していく。そんな様子が人の心を打つのでしょうね。 妖艶な京マチ子よりも、常に献身的な田中絹代の方が美しく見える・・・溝口演出は恐ろしです。田中絹代の死傷率も恐ろしい。溝口健二は鬼です。悪魔です。でも大好きです。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-02-24 16:56:07) |
20.内容自体は多少おとぎ話っぽい雰囲気はあるが、予想以上にシナリオの出来が良かった。 この監督さんは演出にとても安定感があるし、キャスティングに関しては言うことなし。 田中絹代の地味で堅実なキャラと京マチ子の妖艶なキャラとの対比、しっかりと描かれたテーマ、 幻想的な映像とともに完成度の高さを感じずにはいられない。この世のはかなさを描いた秀作。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-04-12 12:04:17) |
19.《ネタバレ》 溝口の映画では舟が出てくると、しっとりとした空気が漂い悲劇が起こる。『残菊物語』の舟乗り込みのような賑やかな舟も、けっきょく悲劇の進行を強調する背景でしかない。行方定まらぬような心細さが、悲劇を引き込むのだろうか。とりわけ本作は、此岸と彼岸の掛け渡しのような存在で、それ以前と以後の世界の違いを見事に表現していた。向こうの世界の幽玄、侍女たちが燭台を持ってくる朽木屋敷の空ろさと、こちらの家の囲炉裏の火の確かなぬくもりとの対比。欠点は小沢栄太郎の芝居のクサさと彼がらみのエピソードの浅さで、あの夫婦のあっさりした決着は投げやりと言われても仕方ないだろう。公開時の観客にとってはつい最近まであった戦後の世相が重なり、「戦地から帰ったら妻がパンパンになっていた」という身の上相談への回答といったレベルで受け止めた人も多いのではないか。しかしそれを補って余りあるほどに森=田中夫婦のほうのエピソードは見事で、森帰還のシーンが素晴らしい。こちらだって戦地から帰ったら妻が空襲で死んでいた、という現実と重なるが、それ以上の普遍性に達している。夫の帰りとともにフッと現われる宮木、そして朝日が差し込むまで家を守って消えていく。彼女はいっさい個人の無念も恨みも述べないが、より深い無念へと観客を導いていく名シーンだ。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-07-29 10:07:53) |
18.二度見て、ようやくこの作品の真価が分かってきた。 隅々まで計算しつくされた構図と宮川一夫の流麗なカメラワークが生み出す崇高な画面にもう脱帽。 幻想。死。欲望。妖気。が溢れ出てくる。 溝口健二が巨匠中の巨匠だということを改めて理解しました。 【せかいのこども】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-01-16 13:52:27) |
17.長回しを多用した構成により、極上の舞台劇を見ているような印象を受けた。幻想的な画によりストーリーの妖々しさに磨きがかかっている。個人的には湖上で舟をこいでいるシーンが心に残っている。 【円軌道の幅】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-12-25 23:43:59) |
16.見事なカメラワークと映像の美しさ、日本昔ばなしのようなストーリー。 京マチ子さんも相変わらず美しい。 【eureka】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-08-27 12:10:25) |
15.《ネタバレ》 この映画は死霊の女性2人が主役です。妖艶で能のように仕草が美しい京マチ子と、母性豊かな賢妻の田中絹代。共通点は好きな男とのささやかな幸せを望んでいることと、上品で言葉遣いが丁寧なこと。対照的に遊女に堕ちながらも、強かに生き抜いた水戸光子が人間臭く、対比が面白かったです。一方、男2人ははっきり言って狂言回し。彼らの望みは、金儲けと立身出世、なんとも解りやすいです。改心に至る過程もすごく解りやすいですね。何にせよ、つきあわされる女たちは大変です。 あと、この映画で素晴らしいのは、墨絵のような画面の美しさとカメラワークです。特に霧の琵琶湖でのシーンと、誰もがよく撮れたなあ。と思ったはずの、源十郎が宮木を捜して家を一周する長回しのシーンです。源十郎が荒れた家を一周して戻ると、火が焚かれ、鍋と酒を温める妻がいる。ほっとして安らぐ夫のそばで、こちらに背中を見せる彼女はどこか不気味な黒い影に見えます。少し夫を責めるような視線を投げたり、やはり嬉しいと涙を見せたり、ここはもう田中絹代の抑えた名演技に引き込まれっぱなしでした。やがて、彼女は朝日の中へ消えていく。一方、1人の男性を獲りこむために存在した朽木屋敷も美しく幻想的な怖さがいいし、闇に消えた若狭と右近も魔性そのもの、素晴らしかったです。海外受けした理由がよく分かります。ただ、惜しむらくは宮木や阿浜の台詞が、ちょっと説教臭く感じてしまったこと。特に宮木はお金なんかなくてもいいのにと、ちょっと悲しげな目を見せるだけでよかった気がします。あと、どうせなら「吉備津の釜」もぜひ映像化してほしかったと思うのは、あの兄弟のような僭越な望みでしょうか?最後に藤兵衛に一言、全部戦のせいにしないで下さい。 【くなくな】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-06-17 00:59:04) |
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14. 溝口健二監督の入門書と考えてもいいだろう。面白い作品の3大要素、「愛」「欲望」「裏切り」が子供でも理解できる範囲で描かれている。 このサイトでの8点は「出来としてはよい」という意味になるらしいが、上から目線で評価しているようで、もう1点つけようかなと考えてしまったりもする(苦笑)。 【クロエ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-01-02 01:51:53) |
13.演出、特にカメラワークが素晴らしい。 船上のシーンはウマいの一言につきる。 【norainu】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-09-06 02:07:50) |
12.《ネタバレ》 朽木屋敷の幻想世界が最高の見せ場だとは思いますが、個人的にはその世界の入口と出口が印象深いです。入口は霧が立ち込める舟のシーンで、出口は妻の幽霊が待つ家に戻ったシーン、どちらも息を呑むほど素晴らしい。それから田中絹代さんが落武者に槍でつかれてしまうシーンは衝撃的ではないのに俯瞰気味に見せることによって傍観者のような冷たさを感じさせたまらなく悲しいです。…ただ一点気になるのが、説明台詞のようなものが何ヶ所かあることで完璧に近いからこそ逆に目についてしまいます。 【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-11-19 18:16:41) |
11.美しい映画だと思う。欲望にのまれて本当に大切なものを見失ってしまう人々がはかない。田中絹代さん演じる宮木の妻として母としての暖かさに感動。自然と映画の世界観に引き込まれた。 【こまごま】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-01-31 20:58:43) |
10.あっ!どうやら溝口監督作品、初挑戦という人がいるらしいけど、私もです。この前、何となく借りてみようかと思って借りてきて初めて観てびっくりしました。何とも言えない怪しげな雰囲気、日本の美学がここにある。そんな感じがして、面白かったです。やっぱりこの頃の日本映画って俳優が本当に素晴らしいです。そう思う今日、この頃であります。今度は「近松物語」に挑戦しようかと思っています。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-08-02 21:13:07) (良:1票) |
9.能楽ファンにはたまらない魅力がある作品だと思います。私は謎の若い女を演じた京マチ子の仕舞の出来をどうこう言えるほど能楽を見たわけではありませんが、能舞台では男の能役者によって面をつけて舞われる仕舞が能面のような顔をした京マチ子によって舞われ男性の謡(うたい)がバックに聞こえるのは官能美の極地です。 【かわまり】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-07-31 15:50:12) (良:1票) |
8.私もぐるぐるさん同様、溝口初体験がこの作品。溝口という名が日本よりもヨーロッパのほうが知名度が高いということ、『雨月物語』がこのうえなく美しいということ、くらいは前々から耳にはしていました。で、いざ鑑賞。はじまってすぐに「え?これのどこが美しいの??」しかし最後まで、いや、途中まで見て納得。私はこの作品で言われるところの「美しい」の意味を取り違えていました。ここでいう「美しい」はモノクロであることを活かした美や目にやさしい美ではなく、構図とカメラワークで見せる美。とくにスローボートさんが絶品とおっしゃるところのシーンと大河内伝次郎ノ介さんが泣けてきたとおっしゃるシーン。あまりの美しさに2度目の鑑賞ではこの二つのシーンを何度も巻き戻して見てしまいました。 「溝口見ぬものは人にあらず」ですか..誰が言ってるんですか?(ニガ笑) でも日本映画の巨匠=クロサワの図式が定着している今日の日本において、そう言われるお気持ちもわかるような気がします。 【R&A】さん 8点(2005-01-05 16:45:35) (良:1票) |
7.溝口健二初体験でござんす。いやあ、JTNEWSにお邪魔して以来、それまでだったら絶対に手を出さないような作品を沢山紹介して頂いて来たのですが、溝口作品はずっと手を出さずじまいでした。だって、何か「日本の様式美」だとか「幽玄の世界」とか「秀逸なカメラワーク」とか、オッカナイ言葉で語られてるんですもの。おまけに「溝口見ぬ者は人にあらず!」みたいな事を言うオッカナイおぢさまもいらっしゃるし(ニガ笑)。ということで今回勇気を振り絞ってレンタルしたのですが(ちなみにこの作品を選んだのは一番時間が短かったから・・・あ、そんな怖いカオしないでぇ)、なんつーか、腹にズンとくる作品でした。むっつかしい事はよく分からんけど、映像も音楽も緊張感があったし、かと言って重苦しいだけの「お芸術」作品ではなかったし。ここで描かれている戦国時代の荒廃と虚無は、少し前に日本が経験していた戦争の影響も大きかったんだろうなあ。偶然だけど少し前にTVでアフリカの紛争についての報告を見ていたので、ちょっとそれと重なっているように感じました。やっぱし戦争は社会の狂気の産物で、尚且つ個人に狂気をもたらすのだ、と改めて思った。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-09-28 18:52:54) (良:2票) |
6.恐ろしい・・・欲望を抱き過ぎて本当に大切なものを見失ってしまう、その単純な人間の心が死ぬ程恐ろしい・・・ 【ボビー】さん 8点(2004-09-23 05:48:34) |
5.不条理な死が連なる戦乱の世。女が死しても欲するのはささやかな条理。日常をつつましく生きる平凡。男が欲するのは条理からの脱出。日常をつややかに生きる野心。幻想幽玄なモノクロームの濃淡が、不条理と条理をきわやかに浮かび上げる秀作。 【彦馬】さん 8点(2004-04-07 18:30:26) (良:1票) |