1.《ネタバレ》 『少女たちの羅針盤』と大いに響きあう。
「駅のホーム」からドラマは開始され、少年は「城下町」松本へ。少年「4人」は地方の高校生活の中で、ほぼ全篇「ロケーション」の瑞瑞しいローカル性に溶け合いながら、葛藤を経つつバンドを「結成」し、「仲間の死」を乗り越えて「舞台」に立つ。
転校早々に理由もなく対立する岡本健一と成田昭次は、殴り合いの喧嘩を通じていつのまにか親友になっている。理屈を超えた「接触」から生まれる非論理の関係性、そしてそこから滲み出るエモーションこそが映画だ。
4人の面構えのみならず、取っ組み合い、殴りあう4人のシャープな打撃の擬斗が素晴らしい。
松本から上京した4人が、有名バンドのコンサートの帰り道、見晴らしの良い夕景の歩道上でじゃれ合いながらバンド結成を決意する長回しもまた、瞬発的なアクションと情感に溢れたショットだ。
4人が楽器を買うためにそれぞれアルバイトに精を出すショットが積み重なる小気味良さと、初セッションで拙いながらも音を合わせ合うシーンなどの持続感とのバランスもいい。
そして見せ場は少ないながらも、渡辺正行、寺尾聰、あべ静江、大寶智子らの好演が4人を一層引き立てている。