1.《ネタバレ》 すっごい面白い! おもだった代表作で溝口健二は知ってるつもりでいたのに、まだまだこんな溝口がまだあったなんて! まず何より、なんとも美しい映像。京都の自然、敷居からふすまから、完璧なまでの調和のある屋内。田中絹代と音羽信子の自然な演技。同じような設定なのに『武蔵野夫人』とはまったく違う田中絹代。こちらの田中絹代はとにかく凛として美しい。それを追う宮川一夫のカメラ。姉妹と男の不思議な三角関係。いや、姉と男が想い合っているのだから、厳密には三角関係は成立しないはずなのだ。だけれども、思いあうふたりが添い遂げられない不条理。愛憎のどろどろ渦巻く世界に決してはまりこむことなく、ひたすら距離を置いて冷静に描き出す監督溝口の演出。感服しました。