1.前作”ピッチ・ブラック”が大好きなので期待してました。今回リディックは前作と比べ物にならないほど大事に巻き込まれてしまってました。この映画で一番感じたのは監督D・トゥーイのあふれんばかりのSFへの愛情でした。彼がおそらく子供の頃から心躍らせたSFの世界を大金を投じて映像化できたわけです。ハイテク技術を駆使しながらもアナログなデザインは前作同様。宇宙船もスイッチなんかを足で蹴飛ばして押すようなアナログ感覚がたまらない。色使いなど映像センスも秀逸。場面にあった構図やカメラワークにライティングはかなり評価されていいと思う。きらびやかな表現に毒されてしまった人には最悪なデザインと思われるかもしれないが、D・リンチが砂の惑星でやり尽くせなかった事を思う存分やってしまっている。実際”砂の惑星”そっくりなラストの決闘シーンは魅力的。ロード・マーシャルの瞬間移動技は”砂の惑星”のバリアーっぽい映像だ。日陰との温度差の激しい星、といった特殊な環境の星が登場するのは前作のようだし、エイリアン3のような刑務所惑星、さらには顔が三つついたでっかい塔はどういうわけか”未来惑星ザルドス”なんかを思い出してしまった。雰囲気や設定は非常に魅力的。残念なのはこの大きく広げた世界を、低予算だった前作のアンチヒーローに背負わせてしまう、という部分に無理がありすぎる。格好いいキャラだが”アンチ”の部分がどうしても希薄になるのだ。低予算だった前作にくらべ見せ場もアクションも倍増しているのにキャラクターの魅力は半減している。しかし前作のファンにも目配せするセリフなどがあるのがうれしい。しかしパンフにもほとんど”ピッチブラック”について触れられていないのはなんでなんだろうか。