1.怪談映画のイメージが強い中川信夫の初期のエノケンものです。エノケンと如月寛多はお互い意地と見得を張り合う会社のライバルでしかも家が隣同士、ということから頑張り戦術となるわけです。オープニングからその二人が揃って家を出る線対称な画面は、その後も列車の中、会社の食堂、温泉・・・と引き継がれ、その対称ぶりは、テニスの試合を見る観客のように右へ左へ慌しくカメラがパンすることにより二人のライバル関係の滑稽ぶりをこれでもかと増幅していきます。小国英雄さんのオリジナル脚本は「弥次喜多道中記」で笠の取り違えを生かしたようにここでも、防弾チョッキと浮き袋チョッキの取り違えが生かされ、按摩に扮したエノケンのナンセンスなアクションがこれでもかと炸裂し、怒涛のコメディ作品に昇華しております。妻の宏川光子の背中で赤ちゃんに扮するエノケンは、宏川の表情が真面目なだけに大笑いしました。最後の最後まで強情っ張りな二人のオチも決まって、エノケンワールドは幕を閉じていくのでありました。めでたしめでたし~。