1.《ネタバレ》 高倉健は演技派の役者ではない。で、登場する中国人は皆素人。よって作品全体に不自然さがないというか高倉健が中国を旅するドキュメンタリー番組をみているようである。(おまけに高田剛一という本名そっくりの役名。息子は健一だし・・・)下記の方も書かれているが、「君よ憤怒の河を渉れ」で高倉健のファンになり、「幸せの黄色いハンカチ」「遥かなる山の呼び声」が好きだと言うチャン監督は高倉健の魅力・使い方を知り尽くしている。実際に「まず高倉健ありき」で5年かけて脚本を完成させたというように、まさに高倉健のファンが高倉健を主役にして完成させた作品という印象。背中で語る男のショット。と思えば不器用ながらも懸命に真っ直ぐ事に当たる男の真摯な生き様。他人に対する礼儀正しさと優しさ。通訳・ガイドとのロードムービー的な要素は「黄色いハンカチ」の武田鉄矢とのコンビを彷彿とさせるし、子役との絡みを中心とするユーモア部分は番外地シリーズや「遥かなる・・」の吉岡秀隆との絡みを彷彿とさせる。正直ここ20年ぐらいあまりいい作品がなかったが、今回は久々に「高倉健」を観たなあという思いにさせられる。残念なのは息子の中井貴一との確執の中身がよく判らなかった事。その事を後悔したり苦悩するシーンもなく、あっさりしているので、中国人親子と自分達親子がオーバラップし突き動かされる部分の描写が弱かったように感じる。
<追記>17年ぶりに再見。感想は全く変わらない。それだけ年齢や時代を問わないある種の「普遍性」があるということなんだろうか。