1.《ネタバレ》 (重大なネタバレあります。鑑賞後にお読みいただければ幸いです。)………主人公は最期の最後に望みを叶えました。飛行機事故で生き残ったのは、彼の願いを叶えるために神様がロスタイムをくれたようなもの。主人公は否定しましたが、本作に神様は存在したのだと思います。そもそも、生きている事こそが奇跡。命尽きるその時まで、あなたならどう生きるか?の問いかけでした。勝つための武器というより抵抗のための爪を装着し、決着の刻に挑む主人公。真っ直ぐな瞳に吸い込まれます。ここで終幕。唸りました。この瞬間に辿り着くためだけに、これまでの苦難があったということ。エンドロール後のワンカットは不要でした。むしろ無い方が良かったかもしれません。でも救われました。彼は満たされた心で愛する人の元へ逝く。突然の飛行機事故のインパクトから、VSオオカミVS風雪の極限サバイバルまで、一気に作品世界へ引き込まれました。効果的だったのは手持ちカメラによる接写とブレ画像。アクションを誤魔化すための安易な演出手法として用いられる事が多い気がしますが、本作の場合は一味違いました。上空で、水中で、息の詰まる感覚を味わえました。音響も臨場感抜群です。回想シーンの使い方も上手い。愛する人との幸せな時間から一転、地獄の現状へ。視覚インパクト大。主人公が感じたであろう衝撃と絶望を見事に表現していました。事故直後の危機感覚異常と判断力欠如、ザバイバーズギルトが重なった“通常ならばあり得ない”決断の数々にもリアリティがあったと思います。言うならば陸上版『オープン・ウォーター』。真夏の日本公開も納得の凍える映画は、熱かった。