1.楽しい食事シーンを持つ映画には無条件に魅了されてしまう。
物語と離れて、演技に拠らない素の「食べる」表情が
キャラクターの人間的な魅力を増すのだと思う。
この映画も、カレーや焼き鳥や団子やクレープや目玉焼きを美味しそうに食べ、
ビールを幸せそうに飲む麻生久美子・大泉洋・三吉彩花らの家族の姿がより一層、
好感度を増す。
普通なら欠点ともなる俳優のクロースアップもさして苦にならないどころか、
俳優の表情に対するカメラマンの惚れ具合までが伝わってきて心地いい。
その極めつけが、ラストでストップモーションとなる三人の
「美味しい」笑顔の素晴らしさだろう。
ご当地映画ながら、商店街やフリーマーケットなど、
生活感のあるロケーションへの俳優の溶け込ませ方も巧く、
移動撮影による二度の自転車のがむしゃらな走行感もいい。
そして、映画に携帯電話というコミュニケーション手段を
安直に持ち込まない点も褒めたい。
女性たちが並んで座るベンチのシーン、校舎屋上のシーン、ライブのシーン。
そして能年玲奈の卒業写真と手紙のショット。
そこには携帯に拠らずに直に言葉を伝えること、直に触れあうことの温かみがある。