10.《ネタバレ》 今だったら「コンプライアンス」的にはヤバい描写が満載で、正直「引いて」しまう部分もあるのだけれど、1980年代に中学生だった自分としては、その時代・年代の「危うさ」の表現に唸るしかない。冒頭のプールでの「イジメ」にしか見えないシーンやら職員室で女子生徒が襲撃されるシーンは今の感覚ではかなり見るのが辛いし、あれを「ノスタルジック」に「あんな無茶なことしたよな」と見る人とは、たとえ同世代でもたぶん友達にはなれないと思う。ただそんな嫌悪感を抱きながらも、この映画からはどうにも目を離せない。 どっちかというと、自分としては、できたらもう二度と戻りたいとは思わない中学生の感覚を、ここまで生々しく詰め込んだ映画はなかったように思う。人間として自分がどうなってしまうのかわからない、明日になったら「普通」でいられるかどうかわからない(だからベタ歌謡曲の「もしも明日が」の選曲には恐ろしさすら感じる)、そういう危うい感覚に満ち満ちている。なのに、周囲の「大人」はなんの助けにもならないどころか、問題の根っこになるような存在。そんな状況を、一人「真面目に」観察していた三上君の最期。長尺での椅子を積み上げるシーンから中二病爆発の台詞の後の「アレ」は、「個だ、種だ」なんて大きなことを言ってみたり、大人たちに「お前のようにはならない」と宣言してみたところで、その顛末は喜劇にしかならない、という大人なメッセージにも見える。自分の思い出したくない部分をえぐられるような2時間。嫌いだけど目が離せない。やっぱり傑作なんだと思う。 【ころりさん】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-11-02 07:10:59) |
9.こんなワケワカラン系の映画も昔はゴールデン洋画劇場とかで放送してて、うわっ、この映画、キライだなあ、なんて思ってました。意味ありげな思わせぶり、そういうのに当時はなんか、イライラしてしまう。しまいにゃ「これが死だ!」なんてブチあげられちゃうと、「いやいや、そんなのは『死』じゃないんじゃないの?」とイジワルの一つも言いたくなったり。 結局は、この登場人物たちと年代が近く距離感が近かったからこその違和感であり、反発・反感だったんでしょう。 そのくせ、そういや自分もまた、高校の時に真夜中にこっそり学校のプールで泳いだことがあったんだよなあ。 今では自分も親の世代になり、この作品を貫く不安定な危うさを、ある距離感をもって眺めるようになって。そう、自分が思春期の頃には、思春期が危ういなどと思わないもの。距離感があってこそ感じられる危うさ、ってのもある訳で。しかし一方では、やっぱり記憶の底をチクチク刺されるような感覚もあって、イライラしないと言えば嘘になる。 だから、大人だから正しく鑑賞できるなんてことは金輪際、言いたくない。あの当時の「そうじゃないんだ」という気持ちは否定したくない。 今では、「キライだけど、面白いんだから、仕方ない」ってなところ、でしょうか。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 8点(2021-05-30 17:23:48) |
8.誰もが通る道なんだよなぁ。 思春期の痛々しい行動と台風が近付いている時の謎の高揚感。 ほぼ中学生達によるドラマが展開されるが、そこには青春の清々しさなんてものはあまり無く、ひたすら鬱屈とした窮屈な感情や性的衝動なんかが正に台風の如く吹き荒れる様を描いている。 彼らの生態をカメラは窓の外からや、教室の外側からなど、まるで覗き見をしているかのように映し出していて、長回しの多用によってよりリアルな風景に感じられた。 台風の到来と共に己を解放していく彼らの行動はなんとなく共感できた。 【ヴレア】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-02-07 19:39:29) |
7.《ネタバレ》 製作当時の80年代にはなかった言葉だけど、この映画は中二病を患った中三が集団発作を起こすお話しだと思います。その中で彼ら彼女たちは性の目ざめや人間の根源的な生死の問題に苦しみ、そしてその中の一人はその問題に決着をつけたってわけです。この物語は徹底的に中学生たちの世界を描いていて、大人は実質的に三浦友和が演じる数学教師とその関連人物しか登場しませんでした。この三浦友和の演じる教師がいかにもいそうないい加減な俗物で、実にリアルです。山口百恵との共演でアイドル俳優というイメージが定着していた彼がよくこんな役を引き受けたと思いますが、本人の回想にもあるようにこの役が現在まで続く俳優人生の大転機となったことは言うまでもありません(当初は糸井重里にオファーしていて断られたそうです)。半面、工藤夕貴ら生徒たちの親は家庭内のシーンがあっても全くといっていいほど登場せず(寺田農だけが暗がりで誰だか判らないようになってワンカットだけ映る)、これが本作の独特のテイストを形成しています。またこの映画には有名な『犬神家の一族』のパロディとしか思えないカットやオカリナを吹く白装束の男女など理解に苦しむところが多々ありますが、相米慎二は脚本にはほとんど異議を唱えない監督だったそうなので、これは脚本家にそういうクセがあったってことでしょう。まあ、土砂降りの中で下着姿になって『もしも明日が』を踊り狂うところをワンカットで見せるという相米らしいシーンもあるので、これは良しとしましょう。とにもかくにも、本作は日本の80年代青春映画の最高傑作だと思います。 この映画は、長野県佐久市の中学校で夏休みに集中してロケしたそうで、在校生もエキストラ出演しています。完成後に体育館に生徒を集めて披露試写会を学校は企画していたそうですが、中身やストーリーを知らずに協力していた先生たちが怖気づいてけっきょく企画は立ち消えになったそうです。これはぜひ実現して欲しかったですね、きっと家族団らんで観ているTVに突然濃厚なラブシーンが流れて気まずくなるような雰囲気だろうなと、想像しただけで笑えてきます。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-12 18:43:46) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 相米慎二監督作品。 思春期の中学生を台風を通じて描いた作品。 子供の頃は誰もが感じたであろう台風が近づいてくる際の高揚感に着眼し、それを契機として中学生の日頃感じている不安や性的欲求、苦悩を見事に表現している。 冒頭から通じて身近に水があり、やけに湿気のある空気感で、それがまた彼らの不安定さを演出しており良い。 健のドアを何度も蹴るシーンや三上の机を積み上げるシーンなどかなり長い長回しが使われているがこれがまた彼らの狂気を引き立てている。 これこそ青春映画である。 【こしち】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-08-07 21:43:13) |
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5.《ネタバレ》 三浦友和がいい。「ああ、台風来ないかなあ」(大西結花の台詞だった?)もいい。ラストの「あ、金閣寺」(工藤夕貴)もいい。しかし、なぜ「犬神家」になってしまうのかがわからない(ぶち壊し、でも8点)。 【ひと3】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-03-23 10:30:23) |
4.《ネタバレ》 狂気!狂気!狂気!映画全体に只ならぬ狂気が充満している。まずはいきなり夜のプールでの訳の解らないダンスで始まるのには驚かされた。この訳の解らなさこそがこの映画の主人公である彼ら、彼女ら中学生の大人への不満、大人になりたいけど、大人にはなれない中学生の有りのままの姿であると思う。奴らにとっては大人社会への不満以上にこれから先への不安の方が多いのである。だからそんな不安を取り払おうとする為に大人には理解できない行動ばかりをするのである。夜のプールでの踊りに始まって、授業中にいきなり鼻血を出す奴もいるし、いきなり女子生徒に対してケガを負わせたり、二人きりの校舎内で襲いかかったりと、やってくる台風と同じように物凄い危険性を感じさせる。相米慎二監督はこの台風の襲来する風景の中にある日常的で且つ、非日常的な両面を見せることでこれから先の不安というものを暗示させ、そして、観る者にどうすればその不安を消すことが出来るのかという答えを考えさせようとしていたと私は思います。ラスト、台風が去った後の学校のグランドでの工藤夕貴の姿には他の生徒とは違う普通のままの姿を観ることが出来る。作品全体に漂う不安定な感じこそが監督の狙いだとすると、相米慎二監督という人の持っている人間的観察力の鋭さ、どこから見ても破錠しまくりの映画的なスリルとリアルさを両方持ち合わせた凄い映画だ!本当は9点でもいや、10点でも良いとさえ思える凄い映画だが、個人的好みという意味ではどうしても9点以上は付けられない。しかし、何度も言うように凄いスリルとリアルさを持つ映画である。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-09-08 22:00:33) (良:1票) |
3.おそらく企画書の段階で、これほどの映画が完成することを想像した人間は、監督を含めて、一人もいなかったのではないでしょうか。ひとつ間違えば、ただの青春映画や、ただのお芸術映画になってしまうようなコンセプトを使って、「人間」と「世界」の関係を見事に描き出しました。とは言っても、まったく哲学的な映画ではなくて、非常にリアルな映画です。ひとつひとつの映像が訴えかけてくるものがまさにリアル。校舎のにおいや、体にまとわりつく雨の感覚、登場人物の体温までもが、こちらに痛いほど伝わってきます。 【コウモリ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2008-10-30 00:09:17) |
2.数人しか観客のいない京都の映画館でリアルタイムで鑑賞。バービーボーイズの「暗闇でダンス」にのって少年たちが疾走するファーストシーン。深夜のプールに静かに潜る少年の行き場のない心。結婚に煮え切らないありがちな教師役の三浦友和。工藤夕貴ののんしゃらんとした表情。長回しより何より、ひとつひとつのシーンに込められたメッセージにビンビン反応しながら、2時間近く食い入るようにスクリーンを見続けたのを覚えている。馬鹿みたいに映画にどっぷりと浸りきっていた大学時代。我が青春の1ページ。 【showrio】さん [映画館(邦画)] 8点(2004-01-11 17:10:48) |
1.台風の日って子供の頃なんか楽しかったですよね。(あたしだけかな)それを思い起こさせてくれた映画ですね。台風の日が辛く感じるようになった今のあたしにとって、この映画は青春の思い出とでもいいましょうか・・・なんかオッサンくさい言い方だな。 【奥州亭三景】さん 8点(2001-09-17 21:39:05) |