5.職人気質な男たちとスタイリッシュな夜の映像を撮らせれば天下一品、マイケルマンの映画デビュー作。良くも悪くも監督のエッセンスが凝縮された一作。シンセサイザーを多用した、タンジェリンドリームによる80年代感全開の妖しいBGMも、意外と映像とマッチしている。
物語そのものは非常にシンプル。たとえるなら、『鬼平犯科帳』に出てくる本格派の盗人を主人公にしたような話。昼間はしがない勤め人、夜は凄腕の盗人。長い牢屋暮らしを経て、最後のお務めを果たした後は、足を洗って堅気に暮らしたい…。書き起こすと、そのまんま鬼平犯科帳にも流用できそうなプロットをしている。池波正太郎の世界観が好きな人は、きっとこの作品を好きになれるだろう。
プロットはシンプルながら、ディティールへの異様なこだわりが、作品に独自の色をつけている。金庫破りの手口は、実際に犯罪者たちが行っていた手口を再現したものだという。金庫破りを達成したあとのジェームズカーンの表情が特に印象に残る。この一連のシーンが映画のハイライトになっており、実はそれからあとの展開は蛇足のようなものだ。身辺整理とはいえ、妻を追い出したり、家や仕事場を爆破したりと、無茶な展開が多い(マン監督の悪いエッセンスが出ているのはここ)。
マイケルマンの原点ということで、少し甘めの8点評価で。