9.《ネタバレ》 最後の戸締まりと銘打って特別上映だったのでようやく初鑑賞した。
新海誠の通例である「ボーイ・ミーツ・ガール」+「描き込まれた映像美」=「セカイ系」には食傷気味だったものの、
『天気の子』よりはモヤモヤとフラストレーションは少なくて見やすかった。
それでもダイジンの立ち位置が不明瞭で、風呂敷を畳め切れていない点はなくはないけれど。
今回はロードムービーとしての面白さがあった。
青年の身体を取り戻すために西から東へ戸締りしながら行く先々での人々との交流。
『君の名は。』や『天気の子』でもぼかした形で描かれていたが、
やがて東日本大震災の記憶と向き合うことになる。
当事者には思い出したくない記憶と恐怖があり、奪われてしまった故郷と人生がある。
叔母の葛藤と吐露がそうだ。
それでも一人で生きていくことは不可能で、旅先を含めた誰かの支えによってヒロインの現在があり、
青年と自分自身の救済に繋がっていく。
無理に向き合わなくても希望に向けて歩くことはできる。
ただ、災いからはいつかどこかで起きて避けられないし、
そこにはかつて人の営みや時間があったことを風化しないで欲しい。
そういうメッセージを感じ取れた。