9.《ネタバレ》 黒澤さんはホント、一流の不良でもあるんだな~ 物語の構成が相変わらず凄い。 前半、長屋からほとんどカメラは出ることなく、 登場人物の紹介をしてしまう。これが絶妙! そして後半、次々不幸が出てくるんだけど、 したり顔のおじいさんが、サッと逃げるとこが面白い。 ラスト、長屋の連中の酒飲んでの乱痴気騒ぎ。 これが囃しになってて、見応えある。 黒澤さん、凄いっす! 【トント】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-05-29 12:40:41) |
8.《ネタバレ》 原作未読。役者の演技が皆キレッキレで名演の応酬の群像劇ときたもんだから、私の五臓六腑に染み渡る様でございました。長屋からみんなが出て行ってふっと無人になり、人が入ってくる、あの間が良い。ラストの締めが悲しくもかっこいい。他人様から見たら只のつまらない嘘でも何でもすがるものがなきゃ生きていくのも辛いのよ。といってただすがるだけでどうにかなるでもない。黒澤映画の底に流れるものの一面を見た思いです。時を置いてまた観たい一本。 【マッイヤ~ン】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-12-13 07:31:20) |
7.《ネタバレ》 音楽はアタマに鐘、ラストにピーッと能管、あとは中のバカバヤシ。『隠し砦』の踊りや、『夢』の葬列もあるが、けっこうミュージカル的な様式を感じさせる作品だ。冒頭はやはり門、黒澤映画で門は繰り返されるモチーフだが、ただ門の内と外のドラマではなくて、これは門の下の人々なの。門の内と外での争いからも脱落し、赤ひげのような“父”的人物もいない世界。これに近いのは『どですかでん』だろうが(どちらにも珍しく志村喬が出ない)、あちらは底に肯定の気分が感じられるのに、こちらにはない。みな嘘の自伝や夢に飲み込まれてやっと生きている。俺は職人なんだと最後まで世間の基準にすがっていた東野英治郎も、ラストではバカバヤシに加わる。その中で不意に現実の寒気を感じてしまった役者が首をくくり、三井弘次のアップ「踊り(夢)を邪魔された」で幕となるわけだ。陽だまり→風→雨と天気の移ろいも的確。職人の鍋をカリカリ引っ掻く音がいらいらを表現する。構図としては直線が直角に交わらない世界、平行四辺形が、圧力下にある世界を感じさせる(美術は先日亡くなられた村木与四郎、あなたの仕事は永遠に残ります)。暗い話を、どうだ暗いだろう、とじめじめ溺れずシャープに描いていて、このあたりの黒澤作品はとりわけ映画としての純度が高い。それにしても左卜全は貴重な役者だった、同じヒョウヒョウでも笠智衆だとマジメ一方だが、こちらはしたたかなずるさも含んでいる。あと個人的なことを言わせてもらうと、これと『蜘蛛巣城』の二本立てが、私が初めて東京池袋の文芸地下という名画座で観た映画でした。その後かなりお世話になって私の映画好きの下地はだいたいここで形成されたもの、その意味でも忘れられない作品なんです、これ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-11-29 12:12:57) |
6.《ネタバレ》 黒澤映画の中でも、特に白黒の黒澤映画の中にあっても比較的評価が低く、一般受けもされてないような作品ではあるが、私はこの映画も好きです。単なる貧乏な人間の集まりの話でありな゛らそれが何故、面白いのか?と聞かれたら私はこう答える。貧乏長屋に集まる貧乏な人達、ここに集まってくる貧乏人達の中には狂気というものが充満している。例えば長屋の大家である中村鴈次郎はいつも何かに怯えている。その女房の山田五十鈴は物凄い悪女ぶりでまるで人間というよりも獣の如く、鬼のような表情で常に狂ってる。山田五十鈴が愛する男である三船敏郎の泥棒には善と悪との両方の顔を持ち、香川京子に対して惚れてるからこそもう、泥棒なんて辞めようと思ってる。そんな二人の仲の良さそうな所を見て嫉妬し、狂乱し、その後、起きる殺人事件について香川京子を罠へとはめよとする。他にも鋳掛屋の東野英治郎にしても常に怒っているし、その妻もまた他人に対して怒りをぶつけている。役者崩れの藤原鎌足、遊び人の三井弘次、殿様と呼ばれている千秋実、いずれの人物にしても人間て如何に馬鹿な生きものであり、感情を抑えようとすればするほど抑えられなくなるものであるというものを見ているようであり、謎めいた部分が多く、お遍路としてやってくる善人のような老人、左卜全にしても見掛けは良い奴かもしれないけど、本当は悪い奴なのかもしれない。気まずくなった途端に去って行っていってしまう。長屋というたった一つの空間の中だけで色々な人物による何とも可笑しなやりとり、あの変な歌、トントンちきめ♪トンちきめ♪こんちきしょう♪こんちきしょう♪地獄の沙汰も金次第♪仏の慈悲も金次第♪て歌に合わせて踊る男達、ここには人間なんて所詮は馬鹿な生きものなのさ!とでも言ってるようであり、またあの三井弘次の残した台詞「ちぇっ、折角の祭りが台無しだぜ」には何だか昭和の名人と呼ばれている人達の古典落語でも聞かされているような震えに襲われたのと当時にどん底に生きる人間の哀しさや辛さのようなものを見た思いでいっぱいになりました。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-01-11 11:59:58) (良:1票) |
5.これは映画というよりも芝居に近い。、、、、、がけの下、崩れかけた小屋の中の濃密な空間、母屋とその外。、、、、狭い、掃きだめの空間を使って、黒澤は何を表現したかったのだろう。、、、、下層の人々が置かれたリアリティ、そしてそこに理想的なものの存在する余地がどれほど乏しいのか、ということだったのだろうか。、、、あるいは、全く希望も、理想もない世界がどのようなものかを描くことだったのだろうか。、、、三船は若い女、山田は三船に明るい未来を見いだそうとするが、それは破れ、東野は妻の弔いに仕事道具も失う。、、、そして、アル中の老人は、覚醒して未来がふと見えると、死にしか、もはや救い、理想を求めることができなくなってしまう。、、、、、、この世界は、求道者・黒澤が、人が道を見失うとどのような存在になるかを描いたものだったと僕には思えた。、、、だけどそれは、黒澤が、実は民衆の世界を描くことが不得手であったことを物語っているのではないだろうか。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-06-28 16:59:04) |
4.貧乏長屋でどん底暮らしの人々に、人生を悟ったようにささやかな安らぎや希望を与えるお遍路老人、そんな人でもいざとなるとケツをまくって逃げ出す始末。長屋の人々は相も変らずその日暮らしを続ける。みんな何をすべきかなんて自分で解っているが、苦しくとも楽な生活に慣れてしまっている。誰かが背中を押してくれるきっかけを待っている、本当にどん底から抜け出すためには自分自身の自己改革が必要である。 【亜流派 十五郎】さん 8点(2003-11-16 15:56:56) (良:1票) |
3.ラストの台詞が強烈。このためにあったような映画。落語の「らくだ」を思わせる部分もある。 【ひろみつ】さん [DVD(邦画)] 8点(2003-11-06 22:45:47) |
2.《ネタバレ》 「白痴」同様、黒澤作品の中では自分的に評価が難しい作品。しかし、閉塞された空間である木賃宿にカメラをおいたまま、飽きさせずに魅せるところはさすがである。好きなシーンは口囃子に合わせて、踊り出すシーン。どん底人の陽気さとしたたかさを感じるさせるシーンだ。(渡辺篤の表情は秀逸!)ラストは、そのユーモラスな動のシーンからいきなりシリアスな静のシーンになり、セリフひとつ、舞台なら暗転というところで終わる。ショッキングながら良い終わり方だ。 【すぎさ】さん 8点(2003-08-18 23:29:47) |
1. 黒澤明監督は1951年にフョードル・M・ドストエフスキーの「白痴」を松竹で映画化した前歴があったが、今回はマクシム・ゴーリキーの名作の映画化に挑んだ。余程ロシアというかソ連文学に造詣が深かったのだろう。原作を全く知らなくても役者の演技のアンサンブルが楽しめるという意味では佳作の域には充分達しているとは思うが、江戸の棟割り長屋に舞台が固定され、黒澤的なダイナミズムを求める向きには余りに躍動感に乏しいと感じるかもしれない。しかし、役者の演技レベルは高く、今日の邦画界にこれだけの芸達者な名脇役はとても揃えられまい。因業な大家役の中村鴈治郎が中でも出色の上手さ。黒澤らしからぬ超低予算&超短期間で作り上げた見事な手腕と出演者のハイレベル演技に…8点! 【へちょちょ】さん 8点(2003-02-13 17:55:38) |