1.船場のぼんぼんのダメ男は仕事もろくにせず遊んでる放蕩息子のくせに、自分が跡継ぎだとプライドだけは高く権利を主張。どこがいいのかこんな男に惚れて「私が一人前の男にして見せます!」、と尽くすしっかり者の芸者蝶子は一見献身的でけ
なげな女に見えるが、彼女もまた男に愛想尽かしをしながらも別れられないダメ女。かくしてくされ縁とも依存関係にあるとも見える二人は、どんなにすったもんだしても元のさやに戻っていく。
これは女が男に尽くす人情話かと思うと実は「人間て弱くて愚かなものなのね」「男女の仲は摩訶不思議」というあたりの人間くさい話で、これを森繁久弥と淡島千景が素晴らしくうまく見せてくれる。
淡島さんはどの作品でも魅力的で大好きな女優さんだが、ここでも表情豊かにはつらつとしてて森繁さん共々惚れ惚れする。
これは演出なのか時折挿入されるクローズアップの顔が白っぽく、男の顔が卑屈で小心っぽく見えたり、美しい淡島さんでさえちょっと汚く小ずるそうに見えたりするのが意味ありげで面白い。