1.オープニングの歌舞伎の世界を思わせる何とも言い様のない、得体の知らない始まり方、相変わらず伊藤雄之助の演技の可笑しさ、そして、あまりの馬鹿ばかしさ、国家権力に立ち向かう男の姿を岡本喜八監督独自の世界観によって描かれるこの変な世界はどこを取っても岡本喜八監督ならでは!伊藤雄之助の演技がとにかく凄い。銀行でのあの変な踊り、ミュージカルシーンにおける馬鹿ばかしさ、人間なんてものはいかに馬鹿な生きものか?てこれを見るとそう思わずにはいられない。布団に寝ている妻とのやりとり、お経の場面のはちきれんほどのパワー、何ともふざけているものの、そのふざけている場面においてもどこか人間の可笑しさ、哀しさみたいなものが滲み出ているのは岡本喜八監督の他の作品にも多く見られる共通点でもある。いつの時代においても岡本喜八監督が描く人間はやっぱり変人だ!そんな変な人間の変な部分を正々堂々と描こうとしている。この映画は完全にミュジカル映画に対して喧嘩を売っていると思えてならないのだが、こんなミュージカルがあっても別に良いのでは?いずれにしてもこの変てこな世界はやはり岡本喜八ワールド!他の監督にはない。岡本喜八監督の岡本喜八監督による岡本喜八作品です。