57.《ネタバレ》 思わぬ良作でした。「失恋」ってチャプターが好きです。まず歩道橋の上での市原隼人のデリカシーの無さ。あのお見合いパーティで手を挙げて欲しかった上野樹里に、誠意の感じられない下心で同情して蹴られます。聞きづらかったけど上野樹里は「ファーストキスも奪いやがってぇ~」って言ってました。自主制作映画の突撃キスの種明かしですな。そして会社の屋上。精一杯の心情を吐露する上野樹里の真意にやっぱり気付かない市原隼人。彼は仕事のことで頭が一杯で、彼女のシグナルを解するような余裕が無く「お前も頑張れよ」って言ってしまう。あの会話のかみ合わないもどかしさは秀逸でしょう。この映画が面白いと思ったのは、このすれ違いがTVドラマのような劇的なシチュエーションではなく、無理の無い等身の流れの中で演出されているところです。響きましたね。こんな決定的なシチュエーションじゃ無くとも、この種の勘の鈍さは自分にも覚えがあるもので…。後になって気付くんだよなぁ。市原隼人も蒼井優も良かったし、相田翔子は面白かった。でもこの映画は上野樹里の映画です。繊細な心情を秘めながらも、不貞腐れて空き缶を蹴っ飛ばしたり、八つ当たりで男を蹴っ飛ばしたり。彼女は変態ピアニストより、今作のようなナチュラルな役柄の方が100倍魅力的です。役者を楽しむ映画でした。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-05-03 12:26:32) (良:3票) |
《改行表示》56.《ネタバレ》 予備情報なしに、「意外に豪華なキャストなのね」くらいのつもりで見たんだけど、岩井さん脚本ということで、納得。『Love Letter』以来の原点回帰で、ストレートなラブロマンス。自分で撮るにはいまさらってことで、熊澤さんに任せたんだろうなぁ。 何もわかっちゃいない男の子の期間限定のうぶい感じが好きになってしまった、女の子のせつない思いを、純粋にとりだすのに、ヒロインを殺してしまって回想っていうのは、そういえば『Love Letter』と同じ手ではあるけれど、この距離感のとりかたは絶妙で職人芸の域に達している。 役者たちの演技も見事なんだけど、観客をお話に100%入り込ませるというよりは、あくまで「上野の芝居」「蒼井の芝居」「小日向の芝居」を見せるというスタンスも良かった。相田翔子もあてがきの芝居で、彼女の果たすべき役割を十二分に果たしていたと思う。あの章があれだけの長さがなくて、そのままエンディングになだれこんじゃっていたら、ラストの盛り上りはなかったはず。冒頭のシーンにふたたび戻ってきたときに、相田との不思議な関係で一息ついてという距離感があってこそ、「ああ、あの冒頭の携帯メールのシーンはこういう状態だったのね」という発見があり、またコーダとしておかれたエピローグが生きてくる。 さらに、劇中劇をはじめから最後まで全部見せちゃうという、ふつうなかなかやらない暴挙にでるんだけど、「ああ、このシーン、あそこで撮ってたんだよなぁ」とか、「練習してたこのセリフこうなったんだ」とか、「クランクアップのあのシーンはこういうことだったんだ」とか、ちらりちらりと見せ続けていた予備情報がうまくここでつながるっていうように作っていて、それにはすっかりやられた。 しかもこの劇中劇、死んだヒロインの元気なところをエンディング近くの、しかも通夜葬式の真っ最中で見せるっていうんだから、ふつうなら間違いなく、泣き落としにくるところが、するっと流して、盛り上りを最後の最後までとっておくというのも心にくい演出だった。ホルスト「惑星」の妙に平坦な素人くさいシンセのBGMの使い方も見事。 最後に死んだ彼女の手書きのメッセージが見つかるっていうのも、『Love Letter』の焼き直しではあるけれど、やっぱりいいね。小津にとっての父娘ものみたいなストーリーなんだろうな。 【小原一馬】さん [地上波(邦画)] 8点(2009-10-03 01:30:05) (良:3票) |
55.《ネタバレ》 予告編で気になっていた映画です。『虹の女神 Rainbow Song』ときれいなタイトルなんですが、シンプルでいて深い、そして切ない映画です。『ただ、君を愛してる』のあとにみましたがあちらがハッピーエンドなのに対し、こちらは終末を感じさせるやりきれない物語になっていて喪失感を感じます。岩井俊二プロデュースだからか、画調は岩井監督のものに近いですね。ただこういうガウスかけまくりの映像はたとえ照明が印象的に作用していても手放しに美しいとは言えず、くどさがあります。好きな人は好きなんだろうけど…。この映画を作った人は、本当に映画が好きなんだろうなと思わせる場面が映研関連の場面に多く見られて気持ちが良かったです。そして何より良かったのが主演三人の演技。とくに上野樹里によるあおいのキャラクター作りはサバサバした好女性で、突然世を去ってしまう喪失感を味あわせてくれます。願わくばもう少し彼女の個性を感じる場面を見せてほしかったですけど、自主製作映画UPのときに岸田に朝倉へのアタックをけしかけるときの表情など、恋する女性の演技がとても上手で目を見張りました。だからこそあおいを出会い系サイトにしている岸田が際立ち、お見合いバーの帰りの「結婚するか」発言のあとの怒りなども観るものに迫ってきます。あおいの片思い、それにあいまいにしか気づかなかった岸田がおたがいの気持ちを本当に知るラストは蒼井優演じるあおいの妹の「ばかだなあ、お姉ちゃんも岸田さんも」に集約され、心に響きます。儚い虹。最後に力尽きた携帯電話。喪失を描く、青春映画の佳作と思います。 【トト】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-19 22:28:09) (良:2票) |
《改行表示》54.《ネタバレ》 あおいと智也のキャラが良い。ストーリーそのものはなんちゃないんですが、映画は面白い。蒼井優、酒井若菜、小日向、佐々木蔵之介、脇を固める面々もはまり役。邦画特有の淡々としたドラマ。これといった山場なし。智也とあおいの心の交流を静かに、でもときに情熱的に描きます。その描き方が純粋で楽しくて、見ていて飽きることはありません。 大学生時代にあおいから、『人を外見で判断するやつは最低だ』とののしられる岸田君。岸田君が最初に好きになったレンタルショップの女の子も、今日子も千鶴も、皆女の子女の子している。ボーイッシュなあおいは対照的な存在。当然岸田君の恋愛対象からはずされるあおいさん。で、女の子の外見ばかり見てきた結果、レンタルショップの女の子にはあっさり捨てられ、今日子の彼氏から殴られ、千鶴のエピソードで痛い目を見る岸田君。痛い目をみたとき、いつもそばにいたのはあおいさんでした。いつも岸田君に厳しいあおいさんも、岸田くんが痛いめをみたときはとても優しいのです。まさに雨が上がった後の虹のような存在のあおいさん。虹の女神というタイトルにぴったり。そんなあおいさんは、劇中唯一内面の美しさを岸田君に見せていました。岸田君は、あおいさんの気持ちには薄々気付くものの、あおいさんの心の美しさ、自分の本当の気持ちには気付きません。岸田君がその美しさに気付いたのは、手紙に書かれたあおいの気持ちを読んだとき。そして1万円札の指輪を、今でもあおいが大切に持っていたとき。はじめて岸田君はあおいの心の美しさを感じ、あおいを好きになります。そして好きになったときにはもうあおいさんには二度と会えないという、あまりにも切ない恋愛。 これが岩井俊二テイスト。正直ちょっと苦手です。もっとわかりやすいハッピーのほうが好みです。 【たきたて】さん [DVD(邦画)] 6点(2019-03-29 12:59:31) (良:1票) |
《改行表示》53.《ネタバレ》 市原隼人のウザキャラに序盤からイライラ。 あんな気持ちの悪いストーカーとすぐに仲良くなるわけがない。 ところが、次第に二人の物語に引き込まれていく。 特にあおいの上野樹里がハマリ役でいい。 上司の酔った上での説教を真に受けて、不器用に好きな道を生きる姿が気持ちいい。 その裏には智也への失恋もあったわけだが、素直に告白できないジレンマがうまく描けていた。 出会いパーティで告白者ゼロというみっともない姿を智也の前でさらし、さらに酔った智也の無神経な言葉で傷つけられる。 「日本にいればいいじゃん」「日本なんだ…そばじゃないんだ…」 屋上での会話で、そばにいてくれと言ってほしかった女心が切ない。 市原隼人のダメ男と相田翔子の計算女のやりとりが妙にハマっていて笑える。 また、盲目の少女を演じたヒロインの妹役の蒼井優も出番は少ないが存在感はある。 結局実らずに終わった純愛だが、手紙に残されたヒロインの本音が胸を打つ。 大学時代の自主映画は全然つまらなかったけど、そのつまらなさも映研っぽくてリアルではあった。 ただ、自主映画の内容と二人の現実が関連しているので、無駄なシーンにはなっていない。 【飛鳥】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-05-31 19:41:56) (良:1票) |
《改行表示》52.《ネタバレ》 いわゆる純愛モノ(というか片想いモノだが)としては、自分には珍しく楽しめた。筋立てがあと一歩の印象だが、少し甘めの7点にしたい。 まず、主人公2人をはじめ、酒井若菜や蒼井優、佐々木蔵之介らの演技は良かったと思う。個人的にはあおいにアメリカ行きをけしかけた翌日の佐々木蔵之介のどぎまぎした演技に一番笑った。 ただし、千鶴(相田翔子)とのくだりが周りから浮いている印象がある。女性を外見や年齢で判断する主人公に対して痛烈な一撃を与えるエピソードと考えるにはちょっと弱い。少し陳腐になるが、千鶴をあおいと正反対のキャラクターにして、そこから何かを学ぶようにした方が良い。また、終盤の小道具使い(携帯電話やラブレター、一万円札など)も少しくどい。 一方で、この映画の片想いの描写は素敵だった。片想いするあおいはとても魅力的だった。そして、その片想いについてだが、僕は智也はあおいの想いに薄々気づいていたんだと思う。でも、彼はずるかった(たいていの男はずるいが)。彼女の愛を正面から受け止める準備も無いままに、彼は歩道橋の上で彼女にカマをかけたのだと僕は解釈した。人は誰だって他人から愛されたいし、愛されていると知りたい。たとえ、それが真剣に好きな相手ではなくても。その愛されているという満足感を彼はちょっと味わいたかっただけなのではないか。しかし、あおいの想いは予想以上に強く、彼女の愛は瞬間的に怒りに変わってしまった。会社の屋上でのやり取りも、彼が片想いに気づかなかったのではなく、気づいていながら彼女を受け止めきれなかったと理解した。 ラストで智也があおいの手紙を読んで泣いたのは、彼がそこであおいの想いに初めて気づいたからではなく、あらためて彼女の想いの「強さ」を知ったからなのではないか。そして、その想いに応えられなかった自分が結果的に彼女の運命を決めたことを思って泣いたのではないか。彼が「ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」を皆と観たがらなかったのも、彼女の秘められた想いが込められた映像であることを知っていたからではないか。「優柔不断」というあおいの手紙の中の文句も、彼が実はあおいの想いに気づいていたことをあおいも知っていたということを暗示してはいないか。この映画はお互いに理解しあった片想いだからこそ哀しいのではないか。こんなに哀しいから、やっぱり7点です。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-08-11 01:04:33) (良:1票) |
《改行表示》51.《ネタバレ》 タイトルが大仰というか、ケータイ小説っぽさを感じて敬遠していたのですが、評判通りの隠れた良作です。 役者の存在感が素晴らしく、特に上野樹里のさばさばとした演技は魅力たっぷり、「ファーストキスまで奪いやがって~!」のシーンの体当たり演技がいい。劇中の映画もいい。本当に大学生が作ったような映像で、リアリティがあります。 ただ、ほかの方も言っているように4章の話が浮きまくっているのは気になりました。エピソードとしては面白かったけど。 監督は別の方ですが、岩井俊二節が炸裂している作品なのでファンなら是非観ておくべきです。 【ヒナタカ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-08-03 22:54:04) (良:1票) |
50.《ネタバレ》 ひょんなことから知り合い、距離を縮めていくが、結局微妙な関係のまま終わってしまうふたりのラブストーリー(?)。最初の場面で、ヒロインが死ぬと観客に分からせたのは、個人的には英断だったと思います。山場の場面で主要人物があっさり事故で死ぬと「盛り上げるために殺しちゃったのかな」ってどこかで思ってしまいますから。まぁそういった死ぬ事も含めて、想いの届かないヒロインのせつなさは充分に伝わってきました。ただ、主人公の描き方がまずかったですね。個人的には全然好感が持てませんでした。根は悪い奴ではないんでしょうが、作品を見る限り軽薄な駄目人間ですね。相田翔子のくだりは、主人公の軽率さを強調する結果になってしまいました。じゃあ一体上野樹里は、主人公のどこが好きになったの…?と思っていたら、最後の手紙で「ダメなとこが好き」みたいなことが書いてあって納得。「おまえも駄目ってわかってたんかい」っていう(笑)まぁ現実でも、駄目人間を好きになるっていうのは結構ありますからね。恋愛は理屈じゃない、ある意味リアルだなぁと思いました。上野樹里のせつなさと、劇中の短編映画の意外なブラックさに+1です。 |
《改行表示》49.《ネタバレ》 失った時に初めて気付く、大切な人。 こんな簡単なことを、改めて再認識させてくれるいい映画です。 相田翔子編の評価が低いですが、僕はアリかと。 ここがあるから、あおいを失ったときのショックが増したのは確かですし。 観た後、実家に電話しよっかな?友達にメールでもせんと。 と思った人は多数いると思われw あと月並みな褒め方ですいませんが、上野樹里と蒼井優。 この二人はやっぱ上手いわ。今後も期待してます。 【ふくちゃん】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-07-26 20:44:57) (良:1票) |
《改行表示》48.何を置いても、見所は二人の女優さんですね。見るたびに違う、しかも素晴らしい顔を見せるまさに女優な上野樹里。魅力を一瞬にして爆発させる能力を持つ蒼井優。圧巻です。 まぁ、この贔屓目を置いても、心地良い爽やかなリアリティとおおげさでない切なさがグーな、綺麗な作品。中盤の相田翔子のくだりが浮いてて、だいぶダメなのが残念。音楽の使い方が意外とイマイチ。軽い感じの序盤が好きです。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-07-03 17:52:45) (良:1票) |
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47.いい話ではあると思うし、せつない気持ちにもなる。ただ、第○章というテロップはいらなかったなぁ。 【Andrej】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-01-17 20:43:53) (良:1票) |
《改行表示》46.《ネタバレ》 地球最後の日でも大切な人が一緒なら怖くない 第二章から失恋までは面白かった。上野樹理の芝居はうまいと思う。主人公を押した後の所在なげにしてる仕草が好きだ。歩道橋での激昂から屋上での会話までの流れがこの映画の中で一番いいシーンだと思うし、映画の核だと思う。激昂した理由は、その時それぞれが抱えているものが違ったから。あおいは自ら選んだ渡米という不安を抱えていた。対して智也はちゃらんぽらんで何も抱えていなかった。酔っていた智也にすればなんでもない一言だったんだと思う。しかし切羽詰まったあおいにとっては密かに心待ちにしていた重い一言だった。このとき彼女は揺れた。が、切迫していない智也は失言を重ねた。彼女は失望し、激昂した。 屋上で彼女は渡米するのは失恋したから日本にはいたくないと告白する。この理由は後付である。「その人にそばにいろといわれれば全部放り出してずっとそばにいると思う」彼女は言った。日本にいろ、という智也は誰に失恋したのかと、問う。「いいたくない」「日本にいればいいじゃん」「…日本なんだ。そばじゃないんだ。」意を決した彼女の言葉に、智也はその真意に気付く。動揺し、困惑する。顔を背けた彼の返答は拒絶だった。「会社辞めようと思ってたんだけど、俺頑張るよ。だからお前も頑張れ」彼は暗に渡米を勧めた。彼女は顔をしかめ涙をこらえる。ここが一番好きだ。解説するとあおいは勝手だ。自分で切迫する状況を創り、彼に重い選択を委ねた。重い責任を背負う準備もない彼は避けた。あおいも智也も不器用すぎる。人間なんてどこまでいったって未熟なんだよ。未熟な人間の象徴としてこの二人は描かれていて、この映画は未熟な人間の失恋物語なんだと考えている。だから物語はここで終結する。この後、虹と声を届け、フィルムを映し、終章へと繋がる。それらはエピローグに過ぎない。飛行機事故も映画的な演出で主題とは関係ない。 地球最後の日でも、大切な人が一緒なら怖くない これは現実となる。 ただ、フィルムの夢では大切な人がそばにいたが、現実には{地球最後の日に}智也はあおいの手の中にしかいなかった。そう考えると、とてつもなく悲しい。だから智也は泣いた。そばにいてやれなかったから、行ってやることすらできなかったから(かなの懇願を断った)。それはいささか現実的ではない、フィルムや夢の中で流される涙だ。 【准将】さん [地上波(邦画)] 6点(2008-01-12 18:13:21) (良:1票) |
45.すごく良かったけど他の方も書いてますが相田翔子の章って必要ないのでは?全くストーリーにからんでこないし時間の無駄。んーー、始めに死んだトコからより順を追って突然死んだ方が自然だったと思います。カフカだったか不条理だったか、前田愛の映画で似たような展開のがありました。でも近所の大学だし大学時代を過ごした人にしかわからない悩みとか学生らしさが良く出ていて見入ってしまいました。 【たかちゃん】さん [地上波(邦画)] 7点(2008-01-05 19:20:25) (良:1票) |
44.あおいは恋よりも、創造の女神を追求する妥協をしらない映像ストーカーだ。しかし人は、一人の人間として、片面だけで生きるのではなく、生を総体的に実現して生きたいとも想う。つまり男勝りの仕事をするキャリアウーマンも、家庭にはいり、愛する人との子供を生んで育てたいと考える女としての一面を同時にあわせ持つ。学生時代、ディレクター時代、あおいは妥協を許さないたくましい創造者と、繊細で臆病な女性の両面の間で揺れ動いている。あおいの自主映画は、表現者としてのあおいを仮託したストーカー智也が、死に行く女としてのあおいを看取る映画と解釈できる。このようにあおいの女性としての一面は、デート喫茶でミットモネー状態となったり、智也からも女を感じない、といわれたりで、創造者の一面とはちがってなかなか世間に認めてもらえず抑えられ続けてきた。そしてあおいが智也の背中を他の女へと押したように、智也はあおいを創造の女神へ向かうように押し続ける。あおいが卓也の背中を、他の女へ向かうように押すのは、幸福な恋愛が創造する魂をスポイルするのを、彼女の創造者としての一面が防ごうとしているからではないか。あおいが智也の鈍感なところを好きなのは、その鈍感が、彼女の創造者としての一面と、恋する女としての一面を共存させてくれるからではないか。そして創造する魂のために彼女は志半ばで倒れることになり、最後の最後に彼女が抑え続けていた、少女のように純粋な女としての一面の想いが、手紙の中の指輪に結実して表現されることになる。 深夜TVでちょっと見ただけで主演二人のリアルな演技にひきこまれ、ラストの指輪でついにかなえられなかった思いの切なさが心に残る。見返すたびに発見があり、解説サイトを読むことで映像の意味が深まり、深読みの楽しみもある上野樹里の魅力が炸裂する傑作。 【マンフロント】さん [DVD(邦画)] 10点(2008-01-05 11:20:59) (良:1票) |
43.《ネタバレ》 予想以上にしっかりした内容でした。まず何よりも、脚本がすみずみまで気が配られていて、台詞の一つ一つまで執念のように作り込まれているのが良い。登場人物のやりとりを聞いているだけで自然に引き込まれますし、各キャラクターの成長を自然に表現しています。上野樹里は、発声はかなり今ひとつなんだけど、役作りに関しては相当気合を入れた様子が窺えます(主人公の彼も、作中の役柄同様、それによってかなり引っ張り上げられてますね)。また、蒼井優も、それほど登場時間は長くないのに、最後のキメの一言をしっかりと決めてしまう存在感は素晴らしい。あと、相田翔子のシークエンスは、主人公の一つの「旅」としてヒロインに向けた感情を固めるところに意味があります。その矢先に事故があるところに落差が生じるわけで、もしあのシークエンスがなければ、ラストの感動は半減したでしょう。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-01-05 03:21:23) (良:1票) |
《改行表示》42.《ネタバレ》 公開時期は東映の市川拓司原作の作品とあたり、更にどことなく作風が似てるが、こちらの作品の方が私としては楽しめた。 圧倒的なリアリズムの中で若い頃の甘酸っぱさ、そして恋することの儚さ、切なさを集約させた本作は胸に沁みる作品であった。特にその見せ方は上手く、故篠田氏のエピソードを念頭に置いて描いたという8㎜の件は非常に良かった。彼女が生きた証、皮肉にもフィルムの中でも現実の世界でも結末は一緒になってしまったが、だからこそあのキスが何とも言えぬ感動を生む。最初のシーンでは笑いを誘うキスシーンであったのがラストではすっかり感動の場面へと昇華している。一万円札の指輪も同様の効果を生んでいた。冒頭とラストでは色を変えてしまうこのリフレインと対比は他のシーンにも見受けられたがこの使い方は素晴らしかった。市原隼人の使い方も岩井俊二が見出しただけあってうまかった。 死んだ人間の生前のシーンの積み重ね、そしてラストに気持ちがアイテムを使って改めて明かされるというやり方は岩井俊二の過去のあの名作にそっくりであるが、こちらのラストはあまりに悲しい。私はあの名作、そして同時期の東映作品の方が希望が持てる終わり方で好きだった。だが丁寧な作りで非常に秀作であることには変わりない。相田翔子の件はいらなかったのには同意するが岩井作品に見受けられる独特のくどさも熊澤監督が温かく包みこみ良い作品に仕上がっていた。若い頃の、そして恋の美しい切なさが感じ取れた秀作であった。 【きいろのくじら】さん [地上波(邦画)] 7点(2008-01-04 01:56:13) (良:1票) |
《改行表示》41.《ネタバレ》 安易にヒロインを死なせるような、べたなラブストーリーは好きじゃないんだけれど、これは例外だった。基本的にリアル志向で、過度にロマンティックな演出がないのがいい。 『世界の中心で…』みたいに、病気のために余命が予測できるというのは(不謹慎ないい方かもしれないが)ある意味で幸せだと思う。その人が逝く前にいろいろなことをしてあげられるし、いいたいことを伝える覚悟もできるだろうから。 けれども現実に訪れる死というのは、しばしば唐突で、暴力的なものだ。それはいきなりやってきて、永久に人生を変えてしまう。たとえばこの映画のように、いいたいこともいえないまま、自分の気持ちすらよくわからないままに愛する人が死んでしまって、一生後悔を抱えて生きていくはめになる。 そんな重い話だが、不思議と後味は悪くない。それどころか爽やかだ。あざとい部分もそうと感じさせず、自然に物語に没入して、二人の主人公を友人のように身近に感じることができた。 唯一気になったのは、他の方も言及されている相田翔子。相田さんは良くも悪くもオーラがあるので、脇役であっても無駄な存在感を放ってしまう。もっと普通の女優さんを採用していたら、普通に流せたかもしれない。 【no one】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-08-25 01:42:00) (良:1票) |
40.《ネタバレ》 予告編を見てすごく期待していたのですが… 最初から死んだことになってて、しかもそれが結構長かったような。死んだかも…っていう雰囲気だけを持ったまま、生前のストーリーに入っていくっていうのが私にとっては王道ですし、その方が私は入っていけますね。私はこの映画は、上野樹里さんは生きたままで、ハッピーエンドが良かったように思います。ラストが携帯電話っていうのもちょっと寂しすぎます… まあそれがいいのかもしれませんが。相田翔子さんのくだりも必要性がよくわかりませんでした… 【mako】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-05-20 21:41:33) (良:1票) |
《改行表示》39.《ネタバレ》 2時間という決して短くない時間があっという間に過ぎていきました。もう、この映画の上野樹里は、個人的にストライクど真ん中で、とても良かったです。正直、相田翔子の出番削って、もう少しシーンを増やして欲しかったくらいです(ちょっとクドかったんで・・・・)。 あと妹役の蒼井優はやはり只者では無いですね。もう存在感があるというかオーラ出まくりで、脇役でも出演シーンでは完全に主役になっていますからね・・・・。 この2人の旬の女優がそれぞれ持ち味を出してるんですから面白くない訳がない。いやあ、映画館で見れて本当に良かったなと思える作品でした。 【TM】さん [映画館(邦画)] 9点(2007-03-18 15:59:56) (良:1票) |
38.《ネタバレ》 これは上野樹里の代表作になる作品だと思います。せりふや無言の演技の積み重ねが、充分にされており、最後の手紙の場面で強烈なカタルシスを生んでいます。見終わってからしばらく気持ちが引きずられました。 【よねぴー】さん [映画館(邦画)] 9点(2007-02-12 11:06:27) (良:1票) |