74.《ネタバレ》 映像は深い色合いが美しく、 音楽も映像にぴったりで素晴らしい。
特に色は、ラベンダー畑や山など自然の景色はもちろん、
美女たちの肌や髪の色も綺麗で、横たわる死体さえ一枚の絵葉書のような美しさ。
反対に、市場やゴミ溜は思わず鼻をつまみたくなるような汚さ。
公開当時さかんに宣伝してたように、映像から臭い、匂い、香り、が感じられる(ような気がする)
孤独で誰からも愛されず愛さず、香りの追求しか関心の無いグルヌイユが
狂ったように追い求める究極の香り。
香りのために女性たちを殺すことに何の躊躇もない。
彼にとって女性たちは人間ではなく、香りを抽出する花のように、ただの材料なのだから。
香りを作り出す過程の求道者のような顔。
ベン・ウィシューの、ちょっと困ったような純朴そうに見える外見がハマリ役だったと思います。
彼に関り彼を手放した途端死んでゆく人たち。
産み落として捨てようとした母親、お金目当てで子どもたちを引き取っている孤児院の院長、
残忍な皮職人の親方、調合師のマスター(ダスティン・ホフマン)
最後は、究極の香りを完成させた後、それを使って大金持ちになることもなく
貧民たちに身を投げ出して消えてしまいます。文字通り肉体が消滅する。
香りによって存在価値を見出したかったのに、結局誰も彼自身を認めなかった。
現在だけでなく過去の彼のことを知る人も誰もいないという、
つまり彼は最初から存在しなかったも同然になります。
こんなに終始一貫して孤独な主人公のお話は初めてです。
せめて、この映画を見た人は覚えておいてあげましょうかグルヌイユのことを。
そんな気にもさせられる作品でした。