52.《ネタバレ》 ツォツィの表情に惹き込まれました。『3年B組金八先生』第2シーズンの最強キャラ、加藤優(直江喜一)を彷彿とさせる風貌。瞳の奥に、諦めと深い悲しみが見えるよう。人を傷つけたときに一瞬だけ見せる不安気な顔。赤ん坊を眺めているときの温かな眼差し。彼がどういう人物なのかよく分かる。ツォツィは赤ん坊に自身を重ねることで、長い間おざなりにしてきた自らの心と向き合うことが出来ました。本当の自分は何を欲しているのか、何が必要なのか。赤子を両親の元に返す時に流れた涙。それは心の扉が開いたしるしだと思います。自分も一緒に泣きました。本作で素晴らしいのは、主役に限らず役者の技量が総じて高いこと。乳飲み子の母、太っちょの親友に“先生”、赤子の両親。みな台詞に頼ることなく、その心情を観客へ届けることに成功しています。外国人の自分にも伝わってくるのだから本物だと思う。シンプルでコンパクトな構成ながら、大満足の作品でした。一つ引っかかるとすればラストカット。尻切れトンボで、もう1センテンス欲しいと感じます。DVD特典の解説によれば、別のエンディング案もあったとのこと。確かに他の結末に比べれば後味はいいです。自分も監督の選択を支持します。ただ、意図して創り出した余白ではなく、結果的に余白が出てしまったような稚拙さも感じます。編集で尻を切るのではなく、このエンディングのためにもう一手間かけたら、もっと素晴らしかった。 【目隠シスト】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-02-14 19:48:14) (良:3票) |
《改行表示》51.子供との触れ合いによって悪党が人間性を取り戻すというベタ中のベタとも言える内容なのですが、変な小細工に走らず王道を通した点は良かったと思います。さらには、チンピラと赤ちゃんの接点の持ち方も非常に現実的で好感を持ちました。赤ちゃんの世話は基本的に近所のシングルマザーに任せっきりで、ツォツィは最後まで赤ちゃんに馴染まないのです。ご存知の通り赤ちゃんの世話は本当に大変で、何も知らないチンピラが見よう見まねで出来るものではありません。そういう現実を踏まえた本作の構成には、「なるほどな」と感心させられました。ツォツィはこの赤ちゃんに愛着を覚えたのではなく、赤ちゃんという異質な存在に触れたことで物事の見方が変わり、そのことが彼の人間性に影響を与えたに過ぎません。この映画はそういう微妙な温度感をうまく表現できており、全体としてはベタな構造をとりながらも独自性を打ち出すことに成功しています。。。 ただし、問題もあります。多くの方が指摘されていますが、そもそもツォツィが赤ん坊を連れ帰った動機が不明確だし、彼を援助することとなるシングルマザーの心境も不自然です。彼女も母親なのだから、我が子を誘拐された母親の辛さは痛いほどわかるはず。ならば一刻も早く赤ん坊を母親の元に返そうと考えるはずなのですが、彼女は数日にも渡って赤ん坊を手元に置いてしまいます。さらには、ツォツィとギャング仲間の関係も意外なほどサラっと流されていましたが、過去の自分と決別することが本作のテーマなのだから、かつての社会とどう折り合いをつけるのかという点も本作の重要なファクターだったはず。その他、赤ん坊を奪われた夫婦のドラマや、ツォツィに迫る警察の捜査網など、多くの要素が省略されています。ドラマの視点を分散させないようムダを省いた構成とした監督の意図は理解できるのですが、全体としては描写が不足しているように感じます。枝葉の部分にこだわることで核となるドラマが引き立つということもあるわけで、この点について本作はバッサリやりすぎたように思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 5点(2013-03-18 00:52:10) (良:1票) |
《改行表示》50.設定は抜群に面白いのに、主人公の人物描写が圧倒的に不足している。 今現在の生活環境だけをひたすら見せられても、彼の内面性などわかるはずがない。 そのため、その後の彼の行動にもまったく説得力を感じることができなかった。 「ふ~ん、人間らしい一面があったんだね」程度。演出は悪くないんだけど、 ドラマとしては底が浅く、残念ながら感動とまではいきませんでした。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 4点(2011-08-01 11:41:08) (良:1票) |
49.《ネタバレ》 映画に登場する不良にはパターンがあって、1ふてくされている、2世間に対してたかをくくった態度をとる、3馬鹿にしたうすら笑いを浮かべる、といったところ。なのにこの主人公はそのどれもしてくれない。常に硬い表情を張りつめ崩さない。世間に対してどちらかというと怯えているようでもあり、それを無理に鼓舞して向かってる感じ。車椅子の男に「なんで生きているのか?」と尋ねるあたり、からかいも皮肉もなく、僧に疑問をぶつける求道者の真剣さすら感じられる。彼の表情がこの映画のすべてだ。話の段取りは、母の記憶や女性のたしなめなど、陳腐に落ちかねないぎりぎりのところで進むが、射殺されるドラマチックなラストを採用しなかったことは成功だった。彼の被害者であるブラザーの声に励まされ、みっともなく手を上げる姿で切り上げる。おそらく求道者が道を見いだしたときの姿というのは、そのみっともなさが神々しいこんな姿なのじゃないか、という気にもなってくるのだ。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-01-16 12:20:25) (良:1票) |
48.饒舌で冗長な作品の多い昨今、極めてシンプルなドラマツルギーを保持しながら、観る人の感情に訴えかける奥深さで、心に染み入るように感動が伝わってくる。上手い映画とはこういう作品のことを言うのだろう。アパルトヘイト以来、アフリカを舞台にした映画が次々と公開されているが、同じ黒人居留区のスラム街を描いた「シティ・オブ・ゴッド」の喧騒に対し、本作が意外なほどの静謐さで貫かれているのは、時代や国家を超越した、謂わば人間本来の「優しさ」と「寛容」と言う普遍的なテーマに集約されているからだろう。地を這いつくばり、貧者がより貧者を襲ってでも生き抜いていかなければいけない生々しい現実の中、生まれながらにして薄幸で、無軌道にしか生きられないツォツイは、他の人間を敵視し決して心を開こうとしない、まだあどけさの残る孤独な少年だ。しかし、無抵抗で純真無垢なる者と対峙した時に見せる慈愛と、思春期の少年らしい女性への憧憬は、母なる者へのイメージと重なり、彼の不幸な生い立ちを感じさせる一方で、本来の人間らしさが芽生えた事を印象づける。このツォツイを演じる少年の荒んだ眼差しとナイーブな表情が素晴らしい。終盤、ブルジョワ夫婦も警察側も、やけに物分りが良過ぎるのが気になるところだが、作者自身が、世の中に本当の悪人はいないという、性善説を前提として創られているからかも知れない。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-10-18 17:54:42) (良:1票) |
47.《ネタバレ》 スラム街のギャングもの。同ジャンルの金字塔「シティ・オブ・ゴッド」が2002年なので、南アフリカ版の追随作品と思われますが、かなり純朴な作品です。少年ギャングのリーダーが主人公。富裕層の邸宅を襲って、車を盗んで逃走したら、車には赤ん坊が乗っていて、育てる羽目になってというような、わかりやすいけど、ちょっとありがちで嘘臭い純朴な話。ストーリーは置いといて、廃墟フェチ、スラムフェチにとって、土地柄を反映したスラムを見るのは楽しい限りです。バラックが並ぶスラムを俯瞰したときに遠く広がる草原がアフリカ的です。そんな広大な草原に高圧鉄塔が並んでいるのは少し不思議な風景。土管が孤児達の巣になっているという設定はちょっとつくりものっぽさを感じました。南アフリカと言えば、エイズが蔓延していて、呪術的信仰により処女または童貞に染せば治ると信じられているなど、超アナーキーで、我々の常識をどう覆してくれるのかと期待感に胸が躍ってしまいがちですが、本作品に限れば暴力も殺人もあるものの、そこまでヒャッハーしておらず、そういった面では期待外れでした。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 5点(2023-02-17 17:57:08) |
《改行表示》46.《ネタバレ》 南アフリカでも、アメリカのドラマに出てくるような暴力が現れるのですね。 これからフロンティア国が発展していくと、どんどんあちこちの国で このような光景が見られるのでしょうね。 でもツォツィには地面に根差したような逞しい性根を感じました。 誘拐した赤ちゃんと触れるうちに、芽生えた感情でしょう。 ラストの涙は・・ 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2019-09-23 15:18:35) |
45.《ネタバレ》 アフリカを舞台にした映画は数あれど、本当のアフリカ資本で撮った映画を初めて見た。悲惨なまでのヨハネスブルクの治安の悪さと貧困の中で逞しく生きる若いチンピラが、偶然さらった穢れのない純粋無垢な赤子と車椅子の初老の男によって、少しずつ人間性を取り戻していく。ベタなお話だが奇をてらうようなことはしないシンプルさが却ってテーマを際立たせていた。彼のしたことはどんな過去があったにしろ許されるはずはないことを監督も承知のはずで、正しい悪いの二元論で下すわけはない。だからこそ想像の予知を残す結末に微かな可能性が見える。「日本で生まれて良かった」と平和ボケで済ますしかないが、どこの国も見えないところで救われない人がたくさんいるのだろう。 |
|
《改行表示》43.《ネタバレ》 ツィツィはもちろんスラムの激しい貧困が生み出した犠牲者であるとは思うんだけど、その問題を論じる以前に物語として語り足りないような気がする。まず、千枚通しで人の心臓を貫くことができるような奴が世界一手のかかる新生児を相手に情愛を持てるものかどうか。子供の頃、犬を飼っていたエピソードがあったけれど子犬と人間の赤子は全くわがままの度合いが違うでしょうに。 被害者夫婦も随分とツォツィに寛大な印象を受ける。何故だろう。二度も襲われて眼前で殺人まで行われたのに?三者に心の交流など無かった気がするけども。どうもこの“社会の被害者”ツォツィに肩入れさせようと誘導するような脚本が引っかかった。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-02-02 18:04:11) |
|
42.環境って大事だねって映画。赤ちゃんが悲惨(笑) 【とま】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-15 23:17:22) |
41.《ネタバレ》 予備知識なしで鑑賞、説明的なセリフ等はないけど、赤ん坊によって人間性に目覚めるきっかけになったのが、上手く表現されていると思います。最近知った老子の赤ん坊の例え話とすこしダブりました。悲劇的な終わり方ではない所に救いを感じます。 【ないとれいん】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2013-10-09 12:11:26) |
《改行表示》40.《ネタバレ》 何が起こっても不思議ではない感じ(多分に、途上国への偏見が含まれる)は最後まで緊張感を持続させてくれるが、主人公の行動原理が説明不足だと感じた。 なぜ赤ん坊を育てようとしたのか(自らが愛されなかったからだとは想像できるが、説明不足)、育てようとした割には簡単に人に預けてしまうのか、なぜ罪を犯すのか(父への復讐?と思ったり)…等々。 もう少し主人公に心情を語らせていれば、共感・理解しやすい作品になったと思う。 (先進国目線からの)途上国の悲惨な現実(っぽいもの)を見るにはいい作品であり、そこがアカデミー賞などでも評価されているのだと思うが、映画としての印象はそれほどでも…。 見て時間を損したとは思わないが、絶対見ておいた方がいいよ!と人にオススメしようとも思わない、そんな作品。 |
39.《ネタバレ》 練乳チュッチュに思わず笑顔になったが、その後のアリンコに顔面蒼白w 気付き学ぶ事ってやっぱり大事。現場から飛び出して外を見る事や過去を振り返り未来に生かす事。そうする事で導いてくれる何かと出会うであろう。足踏みしてちゃ進歩しない、そんな映画。まぁ根本が腐ってる奴は何も気付けないまま死ぬけどね。赤ちゃんや土管の子達も気付きますように。先生が先生になれますように。 【movie海馬】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-07-25 02:33:28) |
38.絶望的な無知、善悪の判断さえつかない主人公 誘拐してしまった赤ん坊 車いすの障害者 乳をくれるシングルマザー によって人として生き始める。 【東京ロッキー】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-10-23 17:55:10) |
37.《ネタバレ》 物語の流れから、最後のシーンでは悲劇的な結末を覚悟したが、それは避けられて良かった。万事ハッピーエンドとは行かないけど、赤ちゃんが両親の元に帰れて本当に良かったと思う。 【珈琲時間】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-25 22:09:25) |
36.《ネタバレ》 作品としての構成は単純なのだが、ラストシーンに至るまで余計な要素に浮気せず、原始的な説得力を持たせることに成功している。また、乳をもらった女性宅から主人公が出てきて、カメラが横に動いて別の店内の仲間をキャッチする動きなど、撮り方にもさりげないこだわりが感じられる。一番印象に残ったのは、紙袋を抱えた主人公が土管の野原を訪れるシーンで、ここが作品に一本の芯を通していると思う。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-11-26 01:11:36) |
35.シティーオブゴッドに並ぶような、生々しい現実が描かれています。かなりナイスな映画だと思います。 【トメ吉】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-05-09 20:24:51) |
34.《ネタバレ》 同情できないけど、生きていくためにどうしようもない。そんな切ない映画。 【ラグ】さん [DVD(字幕)] 4点(2010-11-23 18:47:44) |
《改行表示》33.《ネタバレ》 人間性について考えさせられました。私は真面目な経理マンだし、ゴールド免許ももっているし、当然のことながら、殺人も犯罪も無縁に生きてきました。しかしどうしても赤ん坊が生理的に嫌いです。こいつらは気が狂ったように夜中に泣き喚くし、ウンコもしょんべんも垂れ流しだし、かといって、ペットのように外に放置しておいたら警察に逮捕されてしまうし、こんな世話のかかる知能指数の低い動物のどこがかわいいのだろうかと、つくづく思ってしまう。そんな私は霞ヶ関の官僚のように血が通っていない冷血人間なのでしょうか?反対に強盗も殺人も平気で行なうツォツイは、赤ん坊によって心が癒されていく。彼の優しいまなざしを見ていると、この殺人者と私は、どっちが「まともな人間」なのだろうかと考えてしまう。むしろ人間性を喪失しているのは私ではないだろうか?自問自答せずにはいられなかった。もし仮に私が末期がんになって、その上会社をリストラされたらたちまち虚無主義に陥って醜い本性を晒すでしょう。だから私は私のために性悪説を信じることにしている。人間なんてしょせん善人の皮をかぶった悪党だと叫びたい。常に綺羅を飾って生きてきた私の内面は限りなくどす黒い。しかしこの映画は私の内面の考えとは根本的に逆だ。どんな悪党でも根は善人であると臆面もなく、旗幟鮮明に宣言している。こういうとき、私はあえて反論はしない。素直に感動して涙を流せる人間だからだ。ツォツイが赤ん坊と接してやさしい心を取り戻したのと同様に、私もやさしい映画に接していると、恥ずかしげもなく、自分が善人に生まれ変わったような気がしてくる。エンディングは2種類あるという。殺人をおかした主人公が死ぬパターンと、死なないパターン。前者のラストを採用したら、南アフリカ社会における底辺の悲惨な現状を伝える映画になるし、後者だったら、人は再生することができるというメッセージになる。善人が悪人にチェンジすること、悪人が善人にチェンジすること。それはとてつもなく難しいことではなく、ほんのささいなきっかけで実現する。罪に対する罰の是非はともかく、そんな事実を改めて実感することができる良質なヒューマンドラマでした。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-09-15 20:57:07) |