1.《ネタバレ》 50年前の大学と学生生活がどんなものだったのかが垣間見える作品でした。学問を究める場所、就職予備校、夢を追いかける場所、目標が見つかるまでの猶予期間、などなど…。色んな学生がいて、そこは現在とあまり変わらない。でも、多くの学生がバイトをしている理由が学費を稼ぐ為、と云うところが大きく違う。そんな大学へ、アメリカで実績を積んだ教授が帰国し、鳴り物入りで学長に就任する。彼の押し出す学究的な理想論は学生からも歓迎されるが、大学改革の一環として学費が値上げされたことで様相は一変。値上げ反対の学生デモが起こったりする。その学費値上げ騒動を軸に、多くの学生が絡む群像劇という体裁。学生たちの中心にいるのが、早口で思ったことをズバズバと言い放つ中原早苗。そのキップの良さたるや、相手が男でも女でも、中途半端な態度を取るような輩は片っ端から切り伏せられる。口調は、スピード、リズム、抑揚、どれを取っても天下一品。この映画の見どころは彼女のマウスパフォーマンスです。実は芦川いづみを目当てに観た映画だったんだけど、完全に中原早苗の映画でした。で、芦川いづみはというと、バイト先の経営者のバカ息子にレイプされて何かが壊れ、学費を稼ぐための水商売を恋人に見られたことに絶望(?)し、バカ息子を殺してから自殺すると云うとんでもない役。現在では、あんなことでは自殺なんてしないと思うが、彼女の死が学長の退任に繋がるという意味で重要な役回りではあった。骨太な中原早苗の演技とは対照的に、影のある儚い役回りでした。ちょっぴり下着姿も拝めたりする。この映画の白眉はラストシーン。結局は大学を辞めた中原早苗が校門を出たところに、上空を飛ぶ旅客機の爆音が被さる。おもむろに振り仰いだ彼女が「うるせぇぞ! ロッキード」と怒鳴って幕。たぶん米国帰りの学長を米航空機メーカーに掛けているのだが、この歯切れの良さは一見の価値有りです。日本に於ける大学教育の意義は「あやふや」で、現在と変わらない印象でした。今作の中平康監督は「あした晴れるか」しか観ていなかったんだけど、相当にデキル人ということが良く分かりました。