21.《ネタバレ》 「評価が高いから」「うる星やつらの入りとしてこの作品を」という方にはお勧めしません。
というのも、本作は「原作を読んでいる」「アニメを見ている」「うる星やつらのファンである」という人にはぶっ刺さる作品であるが、逆にそれ以外の人には2021年現在の感覚では刺さりづらい作品かと思うからです。
「完結編」という通り、本作は原作のラストエピソードの映画化作品であるため、それまでのストーリー、キャラクター、世界観に思い入れがあるか否かで全く評価が変わるかと思います。
その上で10点を付けさせていただくのは、「うる星作品としてこれほど完成度の高い原作再現をしてくれてありがとう」という気持ちによるものです。
うる星やつらは「ラムちゃんとあたるの気持ちの違い」言い換えれば「女の子と男の子の感覚の違い」が根底に据えられており、そこにコメディやファンタジー要素が入れ込まれる、という作品です。
それを本作(というか原作のラストエピソード)は完璧に表現している。
女の子は「外面上は何と言っていても本当は不安。心で繋がっていることを確認するために好きだという言葉が欲しい」
男の子は「外面上は何と言っていても本当は心で繋がっているはず。なんでそれがわからないんだ」
これを表すのが「嘘でもいいから好きだと言ってほしいっちゃ」「言わなきゃわからんのか」「こんな状況で好きだと言ったら嘘かほんとかわからんだろうが」という言葉。
最終的に「好きだと言わなければ世界が滅ぶ」という状況に達するも、それでも好きだと言わない。
なぜなら、あたるにとってそれは世界の崩壊よりも遥かに大事なことだから。
だから
「一生かけても言わせてみせるっちゃ」
「今際の際に言ってやる」
というのがこれまでの二人の関係を表した完璧な言葉であるとともに、作品を締めくくる完璧な言葉。
今際の際に言う=死ぬ間際に言う=一生好き、ということであり、それを表しつつも、決して「好きだ」とは言わない。
原作の高橋留美子先生は女性でありながら男性の気持ちをこれほどまでに理解し、うまく作品として表現していることが本当に素晴らしく、それをほぼ完璧にトレースした本作は、私にとって10点に他ならない作品となっています。