97.《ネタバレ》 昔、男友達と二人で観た際には「何だ、この女は!」と意見が一致し、女性と観た際には「結構リアルだね」と言われたりして、戸惑った記憶がある本作。
そういえば一人で観た事は無かったなと思い、再観賞する事にしたのですが、特に評価が変わったりする事は無く、残念でしたね。
(大人になった今なら、ヒロインの言動も可愛らしく思えるかな?)という期待もあったりしたのですが、多少理解出来る面は発見出来たものの、やはり拒否感の方が大きかったです。
そもそも問題の発端となる「ヒロインの両親の離婚」は、父親の浮気が原因なのに
「ママが馬鹿だと思ってた」
「見過ごしていればいいのに、ワーワー騒ぐから」
なんて言い出す時点で、彼女に肩入れ出来なくなってしまうのですよね。
(結局、自分が東京から離れたくないものだから、その為に母親を悪役にして憎んでいるだけじゃない?)と思えてしまうのですが、この予想が当たっているなら「嫌な女」としか評しようがない訳で、どうにも困ってしまいます。
自己憐憫に浸って
「私って可哀想ね」
と泣く姿にはゲンナリさせられたし
「あの人って馬鹿ね。付き合ってる頃は良く気の付く、優しい人だと思ってたんだけど」
と元カレの悪口を言うシーンで、決定的に幻滅。
この映画の後、主人公とヒロインは結ばれるのが示唆されている訳だけど、また何年か経ったら主人公も「元カレ」になってしまって、似たような悪口を言われているんじゃないかと思えてきます。
主人公の親友が告白してきたら
「私、高知も嫌いだし、高知弁を喋る男も大嫌い。まるで恋愛の対象にならないし、そんな事言われるとゾッとするわ」
と言い放つのですが、この頃にはもう慣れているというか、感覚がマヒしてしまって(あぁ、やっぱりそう思っていたんだ)という感想しか浮かんで来ないのだから困り物。
後の台詞からすると、この時の言葉は強がりの嘘だった可能性もあるし、彼女自身が反省もしているそうなのですが、それを直接描かずに伝聞で済ませるものだから、ちっとも真実味が無いのですよね。
終盤、同級生の女子達に糾弾される彼女が同情的に描かれているのも(自業自得じゃないの?)と白けてしまうし、立ち聞きして助けようとしなかった主人公が彼女に頬を叩かれ、その後に親友にも殴られる展開には、唯々呆然。
主人公は良い奴だとは思うのですが「ヒロインに惚れるのが理解出来ない」という意味で、徹底的に感情移入を拒む存在であり、それがエピローグで更に強調される形になっているのだから、非常に残念。
恐らくヒロインに惚れたのは、東京への同行を申し出た際の
「本当? 本当にそうしてくれるの?」
と喜ぶ笑顔がキッカケじゃないかと思えるのですが、何だかココの演出も、あざとい可愛さアピールに感じられたりして、ノリ切れなかったのですよね。
第一ヒロインは美少女って設定のはずなのに「同級生の小浜さんや西村さんの方が可愛いじゃん」と思えてしまうのだから、作中でヒロインが散々その美貌を絶賛されていても、ちっとも共感出来ない。
この辺りの感覚は、昔観た時と全く同じだったりして、そういう意味では、とても懐かしい気分に浸れました。
本来は感動すべき「高知城を見つめながらヒロインの台詞の数々を思い出す場面」でも「ろくでもない事ばかり言っているなぁ」と冷ややかな気持ちになってしまうのだから、とことん自分とは相性の悪い映画なのだなと、再確認。
「紅の豚」を絡めた遊び心など、クスッとさせられる場面もあったし「お風呂で寝る人」という形で、遠回しにヒロインから主人公への告白を描く演出は、御洒落だなと思います。
所々に、好きと言えそうなパーツは見つかるだけに、全面的に楽しむ事が出来なかったのが、実に勿体無い。
「海がきこえる」というタイトルにも拘らず、最も印象的な「海」の場面が主人公とヒロインではなく、主人公と親友の二人きりの場面というのも、何だか変な感じでしたね。
帰郷した際に二人が仲直りする流れには和みましたし、共に海を眺める場面は本作における白眉だとは思うのですが(ココで終わっておけば友情の映画として綺麗に纏まったのに……)なんて、つい考えてしまいました。
残念ながら、自分には海がきこえなかったみたいです。