126.《ネタバレ》 日常からの脱出をもくろむ小市民の悲喜劇。半分近くインチキかもしれぬと疑いつつも、ドライクリーニング話に投資してしまうまでの閉塞感がある。事件を起こした後も、犯罪が露見することをさして恐れていない。今と変われればそれでいいと思っているのに、常に疑いはよそへそれ、彼は床屋に取り残されてしまう。弁護士に俺が殺したと言っても、取り合ってくれない。もう自分の床屋からの脱出はあきらめ、娘のピアニストの夢に賭けるのだが、彼女には才能がなかった。まあ、幻滅のつるべ打ち。日常ってこんなにも手強いものだったのか。ところがひょんな逮捕によって、やっと床屋以外の場所へ旅立てることになる。床屋の椅子のような電気椅子。いままで客が座っていた場所にやっと自分が腰を下ろせた、という皮肉な安堵感、ここらへんがコーエンの味ですか。ベートーベンのピアノソナタの緩徐楽章が、彼が求めてやまなかった慰安の世界を暗示する。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-06-29 12:15:05) (良:3票) |
125.《ネタバレ》 「そこにいなかった男」“The Man Who Wasn’t There”という原題がすべてを説明している。毎日実直に仕事をしているけれど、本当は「そこにいなかった男」の話。じゃあ、例の“虹を掴む男”ウォルター・ミティのように白昼夢の中にいるのかというと、夢想家の素質もなさそうだ。現実の生活でも夢想の生活でも「そこにいない」男。こういう男が行動を起こすと、世界は妙な方向に脱線してしまう。儲け話に気持ちが動いて恐喝を試みると、あっさりバレる。どころか、世界はもっとフツーにタガが外れる。この男、とにかく「そこにいない」方がいいわけだ。清楚な(?)娘の凡庸なピアノ演奏に入れ込むあたり、この男の隅におけない馬鹿さ加減をくっきり表して、かなり痛い。(おまえ、近所の女子高生の未来に勝手な夢を描くなよ。どこにもいないおまえの居場所がそこにはある、ってわけないだろうが。でもスカーレット・ヨハンソンが期待をハズしてくるところは、おおそう来たか、って大笑い。案外ああいうもんなんだよな。)ビリー・ボブ・ソーントンが分別ありげな渋い初老の男なので、痛さもひとしお。所詮は「そこにいない男」なんだから、世界に参加しないでいりゃいいのに、分際を守っていられない。これが凡人の本当のみじめさ。みんな「そこにいない」ヒトに過ぎないのに「何かしたい」ってあがく。死刑になるとき、自分の人生の断片が全部つながったと言っているから、ムチャした甲斐はあったということなのか。でも、どこか無理矢理な感じが残るのも事実。ということで、初老の男としては、おもしろ怖く観て、かなり身につまされたなあ。 【哲学者】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-05-04 18:59:13) (良:1票) |
124.《ネタバレ》 この映画から得た教訓。「据え膳は食えるときに食っとかないと痛い目見る」。 【永遠】さん 5点(2004-08-19 02:33:37) (笑:1票) |
123.これをほかの人と一緒に見て楽しめた、という人なんて、いるんでしょうかねえ。「アメリカン・ビューティー」とかこれって、どうもそのあたりが解せない。私はいたたまれなかったですよー。そもそも映画って何のために見るんだろうか。何のために作るんだろうか。これを見て、何かプラスになったんだろうか。別に、ためになるものを見たいわけじゃないけど、自分にとってマイナスになるようなものをあえて見たいとは思わない。え? マイナスになったのか?って。よくわからない。よくわからない一品です。最近、コーエン兄弟作品があまり好きでなくなってきている自分を感じます。うまいなあ、とは思うけど、幸せな気分にはほど遠い。うまいなあというのは一度見りゃわかるから、これもたぶん、もう一度見たらさらに低い点になりそう。シニカルな作品が好きな方はどうぞ。私はもう二度と見ないだろうと思う。 【おばちゃん】さん 7点(2004-07-18 09:33:02) (良:1票) |
122.《ネタバレ》 コーエン兄弟の40年代ハリウッド作品にありそうな映画のパロディーというかオマージュ的な作品に思えた。話の流れは無理なく結構よくできていると思う。エドのかみさんに対する淡白な態度など非常に身につまされ、リアリティはある。最後の方に円盤のモチーフやUFOのシーンなどこのままだとただの普通の映画で終わってしまうからコーエン印を刻印しておかねばと思ったのかもしれないが、なんか違和感があった。でも、コーエン兄弟を知らない人が見てもそれほど気にならない程度にとどめており、マニアが見ればこんないろいろ穿ったコメントも出てくるが、何の知識もない人が見ても、よくできた男の転落劇で、2時間損した気にはならない、ごくまともな娯楽作品です、ハイ。 【エリア加算】さん [インターネット(字幕)] 6点(2021-09-04 18:03:40) |
121.カラー版にて視聴。色が付いていても映像美は特筆すべきものがある。キャッチコピー通りの、少しでも人生を変えたい男が雪だるま式に取り返しのつかないところまで落ちていく。コーエン兄弟のテクニックが随所に注ぎ込まれた到達点であり、ベートーベンの穏やかなピアノソナタが、常に仏頂面のソーントンに哀愁を添える。 |
《改行表示》120.どこにでもいそうな男の数奇な人生を独特の世界観で描いてて思ったよりも面白かった。がもう1回観たいとも思えない。好みの問題ですが。理容師という職業にはリスペクトが足らないし、自己主張が足らない主人公に苛立ちも。 死刑にならなくても煙草の吸いすぎでガンか何かで寿命は長くなかったでしょ(笑) |
《改行表示》119.ボブの渋い演技と雰囲気だけは良い映画、しかし・・・。 「ファーゴ」を思わせる巻き込まれ型、というより巻き込み型サスペンスで、コーエン兄弟らしい展開が続くのだがもはや意外性を狙いすぎちゃってる感がすごく、有り得なさすぎる展開が続くのでいまいちのれなかった。 UFO→車のホイール→医者の頭に付けるやつ、と連想させる流れには思わずニヤリ。この監督、ほんとに丸い物が好きねぇ! 【ヴレア】さん [DVD(字幕)] 4点(2016-11-15 15:17:48) |
《改行表示》118.殺人事件を中心にちょっと意外な展開が淡々と進んでいく。 落ち着いていて渋い映画だが、あれっという感じで終わってしまう。この映画が好きかどうかは好みの問題だがもう一度観たいとは思えない。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-11-14 14:26:56) |
117.《ネタバレ》 基本的にテンションは低~く進んでいきますね。いかにもなうさんくさい詐欺師が実は先見性があったという皮肉さや、ささいなことから広がっていく負の連鎖もコーエン兄弟らしい&最後のスカーレット・ヨハンソンにはビックリしました^^。カラー版で鑑賞でしたがモノクロ映像の方が雰囲気が出てよかったかも、とか思いましたハイ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-09-11 09:16:24) |
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《改行表示》116.《ネタバレ》 コーエン兄弟って人生のままならぬことを色んな味付けで見せてくれるけども、これまた平凡な人間が予想もつかない方向へ破綻してゆくお話。ビリーボブ演じる床屋のオヤジがお馬鹿さんなんだな これは。見た目が無口で渋くて思慮深そうなのは目くらまし。この人の狙ったコトってひとつも的射てないもの。 好いているのかどうか確信の持てない女と結婚し、なりたくもなかった仕事に就き、女房の不倫がきっかけで鬱屈した日々に仕返しするかのように、ケチなゆすりに及ぶ。ここでも相手がどう出るか見誤って犯行がバレる始末。紹介された“敏腕”弁護士は馬鹿高いばかりの法律屋で誠実からはほど遠い。勝手に才能を見込んだ女子校生にはピアノの才なんて無く、夢想していたような純真無垢な天使ですらなかった。読み間違いだらけの人生だ。ビリーボブはこういう物哀しい役にすごくハマるなあ。 あ、ひとつ先見正しいことがあった。ドライクリーニングの先行投資ね。でもこれも結果実りとなって還ってこないんだもんなあ。お馬鹿ってだけなのに人生ってこんなにままならないものかあ。つらい。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-09-01 00:27:00) |
115.《ネタバレ》 主人公のおじさんが煙草を吸っている画が延々と2時間続く。そこにバカな野望から発した犯罪の顛末がくっついている程度。殺人事件なのに重大さが全然伝わってこないので、死刑と言われても「そうですか。」としか思えない。 【マー君】さん [DVD(吹替)] 4点(2015-08-08 13:58:09) |
114.《ネタバレ》 寡黙な主人公がナレーターを兼ねて、ナレーションも寡黙気味だ。弁護士を擁して、真犯人たるナレーターの側から真犯人を捜すかのようなスタイルをとっており、当たり前のことだが、何も判明しはしないし、とくべつ名案が浮上するわけでもない。アイロニカルなすべてがいいのは、いつも通りのコーエン兄弟。 【ひと3】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2015-04-03 08:32:59) |
《改行表示》113.《ネタバレ》 今までに観たコーエン兄弟作品の中で最下位。 「ある犯罪では捕まらず、無罪の別件で逮捕される」という形も、他のコーエン兄弟作品で観たことのあるような内容。 そして何よりテンポが悪い。 テンポが遅くても、それが心地よさを生めば問題ないが、この作品のスローテンポさは、退屈さを感じさせる。 評価すべき点は2つ。 一つ目は、冤罪の恐ろしさと、裁判の茶番さを訴えた社会派的な部分。 二つ目は、終始、純真無垢な少女として描かれていたスカーレット・ヨハンソンが、実は性的サービスをしてくれるような女のコだったというオチの部分。 これは非常に刺激的で、エロティシズム満開! 女のコをイメージだけで判断してはならないという警告か、それとも、単なる男の希望的妄想か。 いずれにしても、私があの状況に置かれたら、素直に身を任せます。 決して、ビリー・ボブ・ソーントンの様に「よせ!」とは言いません。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 5点(2015-02-14 03:19:49) |
《改行表示》112.ラスト30分が不満です。それまでは非常に面白く観てましたが。 髪を切ることも、映画を作ることも無意味だとでも言いたいのでしょうか。 よく判りませんでした。 【cogito】さん [DVD(字幕)] 5点(2014-09-19 23:21:32) |
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110.淡々とした日常が続く人生に一花いや一石を投じようと踏み出した主人公が陥る皮肉な末路。それこそ淡々と静かに展開する映像に退屈するかと思いきや、ラストまで一気に見てしまった。全然明るくもハッピーにもなれないエンディングなのに、確実に心に残像を残していく作品は、まるでゴーリーやバクスターの絵本のような味わい。やっぱり私はコーエンが好きなのだなぁ・・。どこ切り取ってスチールにしても絵になるようなスタイリッシュな映像にもうっとり。 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-08-14 00:39:25) |
《改行表示》109.雰囲気はとても良いです。映像と音楽のマッチングが素晴らしく、随所随所にセンスの良さが滲み出ています。 本作も、乾いた視点で人間の滑稽さを描く、コーエン兄弟お得意の物語なのですが、個人的にはもう少しスパイスが欲しかったかなという感じです。 それにしても、床屋を本職としている人には失礼な映画ですね。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-03-25 17:52:06) |
《改行表示》108.《ネタバレ》 もともとモノクロ映画だったんですね。DVDはカラーだったので後から色づけしたのでしょうか?カラーでしたが全体的にモノトーンの渋い映像でした。 特に盛り上がるってシーンもないですが、モノトーンの映像とともに進む物語がいい雰囲気でした。主演の俳優の演技とタバコの煙が結構渋かったです。ただ結構淡々と話が進むので下手すると眠くなりますが・・・(笑) 自分としてはハラハラドキドキのサスペンスが好きなので若干退屈ではありましたが、口下手で、自分の意図しない方向に話が勝手に展開していく可愛そうな主人公にちょっと共感を覚えたのでこの点数とします。 【かすお】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-02-13 20:14:15) |
107.《ネタバレ》 コーエン兄弟にしては珍しくグロテスクなキャラがほとんどいない映画でした(鬘の詐欺師がちょっとそれらしかったが)。まあそれはそれで良いのですが、このようなお話をわざわざ脚本書いて映画にすることもなかろうに、というのが率直な感想です。主人公の床屋さんは、それまで平凡ながら人生がそれなりにつながっていたのに、ふとしたはずみで自分を試したくて悪事を働いたばっかりに、物事がすべて悪い方に転がるようになり、人を椅子に座らせて商売していた自分が最後には椅子に座って人生を終える。コーエン兄弟はとことん『人生の皮肉』を観客に見せたかったのでしょうが、ブラックユーモアの味付けなしでは後味が悪すぎますね。最後までビリー・ボブ・ソーントンが演じる人物の頭の中が理解できませんでした。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-12-29 20:24:10) |