31.デビュー当時の若尾文子の可憐さももちろん捨てがたいけれど、何といってもこの映画は美代春姐さん=木暮実千代のものでしょう!彼女の立ち振る舞い、仕草、そうめんを啜る姿に至るまで、いちいち見惚れているうちに映画が終わってしまいました。それにしてもここに出て来る男どもは、どいつもこいつも悉くサイテーな連中ばかりですね。お茶屋の元締め浪花千栄子の、涼しげに憎々しい巧みな名演との相乗効果で、木暮姐さんの虐げられ耐え忍ぶお姿がいよいよ妖艶にみえてくるのも、溝口演出の計算のひとつなんでしょう。暑い夏の京都裏小路の情緒ある風景、クライマックスからずっと背後に流れるお囃子の音色のここち良さ・・・。もうたまりません。格調高い風俗描写映画のひとつの完成された形がここに在ります。(→池袋文芸座「リスペクト溝口健二特集」にて) 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-09-23 12:30:03) (良:3票) |
30.《ネタバレ》 神崎の前で美代春が脱いだ白足袋。何とも言えぬ艶めかしさに息を呑みました。観終わって、単なる売春婦ではない「富士山同様日本の宝」と言われる祇園芸妓としての気位の高さ、乙に澄まして紳士面するものの仕事に欲情を絡める薄汚い本省課長にカラダを売らねばならぬ理不尽さ、相反する二つを繋ぐ人としての情け、それぞれが白足袋に凝縮されていたように思いました。女優三人の好演の相乗効果が構図同様に作品の奥行きの深さを与えていました。 |
29.舞妓さんの仕事も見掛けだけではわからない大変な職業です、木暮実千代演じる美代春姉さんのプロ意識に惚れこんでしまいました。いい映画です。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2008-12-20 13:05:02) (良:2票) |
28.淀長さんもいう、、、「女を描いたら天才ですよ、溝口は」、、、多くの人たちも言う、「溝口の女の描き方は比類のないものだ、、、」、、、でも思うのだが、女のさがみたいなものは、ずっとずっと変わらないものなのだろうか。生物学的に女であると、感情も立ち居振る舞いも、必ずある姿をまとうようになるのだろうか。、、、僕はそんなことはないと思う。母性本能みたいなものが神話であるように、女がどのような感情を抱き、どのように振る舞うかということも、時代とともに変化すると僕は思うのだ。、、、、だから、淀長さんが想定しているのは大正、昭和の女ではないだろうか。、、、、だから、平成の女を引照基準にして見ると、溝口の映画は、女の世界が主題になっているようには見えない。、、、、この映画でも、木暮も若尾も、仕事を持つ女で、映画のテーマも、仕事と自分の個人的な感情の間での悩みであり、今の時代なら、この二人は男という設定の仕方にしても決して成り立たないわけではない。そして、木暮の親兄弟もいないという寂しさ、若尾にむける愛情は、木暮が女だから抱く感情だとは、今の時代なら、思えない。、、、、、、それにしても、木暮の住まいの玄関から右に出た長屋の通路の風情の美しいこと。その先の道路を歩く通行人、路上で花火をする子どもたち、僕たちの多くが見失ってしまった、かつての日本文化のたおやかなたたずまいが、ここになはしっかりと記録されている。 【王の七つの森】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-06-10 10:39:09) (良:2票) |
《改行表示》27.溝口健二の胃もたれしないあっさりした小品。僕は「西鶴一代女」や「雨月物語」のようなおどろおどろしい作品よりこちらの方が好きだ。気取りもてらいもなく心から楽しんでこの映画を作ったのではと思われるようなふしがあるのだ。 祇園の風俗描写が何度見てもあきさせない。祇園は男の天国である。金さえ持っていれば舞妓を囲うことができるのだ。そんな舞妓の世界の中で小暮実千代演ずる芸妓は自分が生きていくために、また妹分の若尾文子をかばうために嫌いな男と寝るのである。しかし少しも卑屈にならず、またいそいそと仕事に励むのである。これは溝口健二の理想の女性像ではなかろうか?心優しき女神である。しかし女性が見たら怒れてくるだろう。 小暮実千代が実にいい。もともと顔が少し派手な女優さんでテレビでは昔よく見かけたが、何かひとくせありそうな感じで子供の頃はどうしても好きになれない女優さんだった。でもこの女優の持っている派手さと役柄の悲しさがうまく折り合って変にセンチにならない優美ですばらしい作品が生まれたと思う。いっぺんに小暮実千代が好きになってしまった。 若尾文子も年齢より少し若い役柄をかわいく演じている。舞妓さんの似合うこと!でも最後にぶたれて髪が乱れた表情は、もう立派に一人の女である。ああ怖い怖い。 【山田 明生】さん 8点(2003-11-03 22:22:41) (良:2票) |
26.《ネタバレ》 みんな若尾さまを目当てに観始めるでしょうけど、すぐ判りますけどこの映画は小暮実千代を愛でるのが正解です。もう何と言いますか、彼女をギュッと絞ったら色気の汁が滴り落ちそうな感じなんです。彼女が冒頭でなじみ客にぶつける捨てゼリフが、現代のキャバクラ嬢の言う本音と大して変わらないところはとても面白い、時代に関係なくこの世界は変わらないものなんだなとしみじみ思いました。若尾文子も時代にあった自我を持った舞妓を好演していて、初めてお座敷に上がる時の初々しさは胸キュンものです。 80分余りと尺は短い映画ですが、実に濃厚な80分間の溝口ワールドです。「女を撮らせたら溝口」と言われただけあって、小暮実千代の演技を観てると、どうしてここまで繊細な演出が出来るんだろうと感嘆してしまいました。また出てくる男と言う男が、だらしなく狡猾で卑怯で女優陣を引きたててくれます。状況が変わる場面になると必ず電話が鳴るという作劇術もなかなか興味深かったです。そして忘れてはならないのが置屋の女将の浪花千栄子で、男も女も操る手腕はまるで老練な政治家みたいで怖くなってきます。 こうなると同じ溝口の『祇園の姉妹』もぜひ観たくなってきました。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2015-06-25 21:54:37) (良:1票) |
25.《ネタバレ》 主人公たちの純粋さや生真面目と対照的に描かれる、世間(?)のシステムの強固さに溜め息。そのシステムに守られている面もあるだろうけど、ちょっとクラクラしてきます。若尾文子が生真面目さから謝罪に行く場面にしても、浪花千栄子の方はまるで「飛んで火に入るなんとやら」といった表情で、彼女を人質にしてしまう。これはびっくり。出入り禁止を解かれた後は、急に仕事の電話が何本も掛かってきて、いつのまにかいなくなっていた男衆が何事もなかったかのように戻ってくる。「何事もなかったかのように」続いていく日常に目眩がしました。けどまあ、今日の昼ご飯はそうめんかなあ。 【ゆうろう】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-07-06 10:51:20) (良:1票) |
24.サクセスストーリーの要素あり、青春ドラマの要素ありで感動。祇園の昔の様子も垣間見れたし、これまで故黒川紀章氏のよき奥さんという印象の強かった若尾文子さんの若かりしころもチェックできました。あと印象に残るのは舞妓さんの色気(?)です。これが初めての鑑賞だった溝口健二作品でしたが、収穫の多い名作でした。 【kagrik】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2008-12-17 12:50:11) (良:1票) |
《改行表示》23.「恵比寿ガーデンシネマ」の『溝口健二 没後五〇年特別企画』において鑑賞。 主演は木暮実千代。 木暮実千代の出演作品を観るのは初めてで、“初”木暮実千代であったのだが、そのお色気に見事打ちのめされてしまった。 若い若尾文子より大人の色気漂う木暮実千代が本作では気に入った。 自分も大人になったということかな? 本作は溝口健二作品の中で一番のお気に入り作品となった。 やはりその要因は京都・祇園の風景や文化を見事に描ききっていることに尽きる。 “うなぎの寝床”と呼ばれる京都独特の長屋が建ち並ぶ街風景には特に目を奪われた。 その他の街風景にもため息が出るばかり。 こういった風景を見られるだけでも十二分に価値のある作品であった。 他の溝口作品で私の好きな『残菊物語』や『山椒大夫』に比べるとライトな仕上がりで、上映時間も短い。 それが逆に私にとっては功を奏し、全体として締まりのある切れ味鋭い作品と感じることができた。 最後は溝口作品に特徴的な“怒涛な展開”。 本作では恥ずかしながら劇場で涙してしまった。 最後の主演二人のやり取りは、まさに圧巻。 涙無しには観られようはずもありゃしない。 他の溝口作品でもそうだったが、最後に急展開し、感動的なラストにもっていく運びは、観ていてゾクゾクする。 本作は特にそれが強かった。 今日は風邪気味で体調が悪かったが、本作を観てカタルシスを得ることにより、ストレスと疲れが吹っ飛び、風邪が治ってしまった程だ。 これでますます溝口健二にハマってしまった。 それと同時に、一人でも多くの日本人に、溝口健二作品を観てもらいたいという思いも強くなるばかりである。 【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 9点(2007-09-02 11:13:19) (良:1票) |
22.祇園の姉妹もよかったがそれとはまた違った味のある話でした。芸者として生きるために遭遇する抗うことのできない出来事に美代春自らが盾となり無垢な美代栄へと自身の理想を投影したラストの言葉が素晴らしかった。男と女の質以前の人権に焦点が当たっていて生きることの難しさがよく現されていた作品でした。コンチキチンと遠くで聞こえるお囃子を背に祇園の町を歩く二人は溜息が出るほど美しかった。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-06-17 17:24:16) (良:1票) |
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《改行表示》21.小暮実千代が情感たっぷりに生真面目な芸妓を演じ、今が旬の「おちょやん」こと浪花千栄子がドスの効いた貫禄ある茶屋の女将を演じている。 若き若尾文子のまだ青臭いウブな演技、と女優の競演が見所です。 華やかな芸妓の世界も裏に回れば過酷で非情な女の世界である事がよくわかる映画である。 昔の日本映画は、祇園を舞台にした良作が多かった。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-03-01 23:02:18) |
《改行表示》20.《ネタバレ》 今の時代ならこんな半分性奴隷みたいなことないだろうけど 当時はあったのかな。 それとも他の選択肢をあえてこの二人は蹴って ラストは一皮むけた二人が気持ち新たに芸者道を進み始めたのだろうか。 いずれにしても不幸になるべくしてなった不幸物語かと思いきや ラストの頼もしい二人にエールを送るたくなる良い映画だった。 【Dry-man】さん [インターネット(邦画)] 6点(2021-01-13 23:00:12) |
《改行表示》19.《ネタバレ》 溝口監督ほど、芸者の世界をシラフで見つめ続けた監督もいないのではないか? 本作以外にも「祇園の姉妹」「残菊物語」と芸者界を一刀両断する。 溝口監督作のは観てないが、「滝の白糸」も良かった。 役人の担当者が、芸者遊びで仕事を業者に口利きする、という世界がそもそも おかしいのだが・・ 【トント】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-10-07 23:50:28) |
《改行表示》18.《ネタバレ》 天真爛漫な若尾文子の可憐さ、それにも増して木暮実千代の艶っぽい風情は素晴らしい。素晴らしいが、男に頼らざるを得ない芸者の悲哀、と言えば聞こえは良いが、内容はかなりドロドロと欲望に塗れた陰惨・醜悪なもので(とにかく男共は本当に碌でもない奴しか出て来ない)、正直中盤は相当キツかった。男なんてこんなもの、そしてそういう男を相手にカネを遣わせる以上は、芸者だってこんなもの、というような一種の諦観すら感じられるが、この感覚も時代と共に変わりつつあるものだと思いたい。 とは言え、ラストの美代栄のまっすぐさ、そして美代春のしなやかさ・強かさはやはり素直に美しかった。気さくなようで地味に冷酷な浪花千栄子の演技も素晴らしい。非常にシンプルで無駄も無いが、味わい深い。 【Yuki2Invy】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-02-15 02:07:01) |
17.いやー、面白かったですね。私もお茶屋の舞妓遊びに連れてってもらったことがありますが、昔も今も全然変わらないんですね。木屋町の佇まいも舞妓さんも同じでびっくりです。ま、木暮実千代みたいな艶っぽい人はさすがに見たことないですが。舞妓さんの世界の厳しさというより、嫂、妹娘の絆がよく伝わってきました。思ったよりエグい場面もなく良い。栄子が可愛らしいのが微笑ましい。 【SUPISUTA】さん [DVD(邦画)] 8点(2018-06-12 22:44:25) |
16.《ネタバレ》 観始めて思うことは今から60年以上前の作品に関わらず、意外にも違和感を感じないということ。それだけこの祇園の世界は特殊で今も昔も変わらない特別な世界ということなのだろうか。若尾文子はまぁ若い、そしてかわいいですね~。なかなかでゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(邦画)] 6点(2016-08-08 05:54:44) |
15.溝口健二というサディスティックな女性賛美者が、鯛のアラをすわぶるように二人の女の受難を愉しんでいる。 【火蛾】さん [DVD(邦画)] 10点(2015-12-18 21:16:23) |
14.冒頭の、祇園の世界に吸い込まれそうなショットに息を飲む。まさにここは、「そういう世界」。木暮実千代演じる主人公・美代春も、「そういう世界」の人間。と言っても我々庶民には「そういう世界」ってどういう世界だか、なかなかわからないんですけれどもね~。まず美代春が、金の切れ目が縁の切れ目とばかり、自分に入れあげた客を邪険にする場面があり、ああオソロシや。と思いきや、形式的なしきたりの世界に生きる彼女にも、一方では、栄子やその父に見せる愚かしいまでに情に厚い一面も。そしてそのしきたりの世界に表面的には憧れても結局は馴染めぬ栄子と、その世界に生きていかざるを得ない美代春。彼女たちを利用しようとする者たちも含め、みんな何かしら、不自由を味わっている。ここは、そういう世界、なんだなあと。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-03-17 22:55:09) |
13.《ネタバレ》 作品のポイントはたった1つしかないのに、それをじっくり90分かけて描き出す落ち着きと丁寧さ。中でも、中盤、浪花千栄子が木暮実千代に翻意を促してじわじわとたたみかける際の、陽炎のようにゆらめく迫力があまりにも強烈。 【Olias】さん [映画館(邦画)] 8点(2015-02-23 04:13:29) |
《改行表示》12.二十歳の若尾文子の可愛さが印象的です。戦後間もない時代の作品ですが、一見すると時とともに大きく変ってきたように見える人々の価値観も、本音の部分では今も大して変わってないのが伝わってきます。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-02-19 18:10:32) |