19.《ネタバレ》 高峰秀子は、木下作品で明るくしっかり、成瀬作品で暗く不貞腐れ、と松竹と東宝で昼と夜を繰り返してたって印象があるが、今度「自薦十三作」で何を選んだか興味があった。そしたら断然「夜」の成瀬の勝ち。木下作品で選ばれたのは『二十四の瞳』一本だけで、ほかの作品のコメントでも、『喜びも悲しみも幾年月』は「演ってて面白くなかった、優等生すぎて」とか『永遠の人』は「脚本があんまり陳腐なんで」など、まるで成瀬映画の登場人物のようにグダグダ言ってる。もちろんこのコメントは演技者としての評価なわけだけど、高峰が木下作品の役にあまり満足していなかったのが分かって面白い(一観客としては木下の高峰も好きよ)。で成瀬作品で選ばれたのが三本、つねづね思い入れをエッセイなどで語っている『放浪記』と、公的な最良作『浮雲』の二編と本作。ちょっと意外な気もしたが、これでは彼女が“衣装”でスタッフに名を連ねており、そんな点でも思い入れが深いのかも知れない。いかにも成瀬的な、すがれ気味のバーの雇われマダムの話だが、脚本が黒澤映画の菊島隆三で(たぶんこれ一回きりだと思うが)どうもいつもと違うゴワゴワした手触りになっている。そのせいかどうか、高峰を含む女優陣よりまわりの男優たちの適材適所ぶりが光った。常連客の関西の実業家中村鴈治郎、銀行の支店長森雅之、こういったいかにも銀座のバーに出没しそうな男に混じって、加東大介が場違いの客として誠実そうにニコニコしている。また彼女の実家が佃島で、銀座の近くでありながらひなびた感じが漂い、そこにうだつの上がらない兄の織田政雄がピタリとはまる。ヒロインが病んだとき佃島に見舞いに来るのは、森ではなくその風景にピタリとはまる加東の方。加東はさらにひなびた、上流の千住のお化けエントツの近くに住んでいることもあとで分かる。子どもの三輪車がうるさく回るそのお化けエントツの見える荒涼としたシーンは、シュールな美しさが漂った。こう男優たちが東京の地理にふさわしく配置されているのが面白く、そういった非銀座的な男が絡むシーンが光るので、単なる風俗映画に閉じてしまっていない。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-05-28 12:14:23) (良:1票) |
18.《ネタバレ》 一度きり寝ただけの男の、転勤の見送りに行き、男から貰った株券をその男の嫁さんに手渡す女、こわいです。 【Snowbug】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-07-27 05:17:21) (良:1票) |
17.《ネタバレ》 菊島隆三と言えば黒澤映画の名脚本家というイメージがあるけど、成瀬巳喜男作品も書いていたとは知りませんでした、しかもプロデューサーまで務めていたとは。そして高峰秀子はやはり成瀬巳喜男とのコンビネーションがベストで、木下恵介作品で演じるヒロインよりも生々しい女性像を見せてくれます。銀座のバーで雇われマダムという役柄は、これが大映ならば間違いなく若尾文子が演じるだろうけど、色々と所帯じみた苦労を背負った身持ちが固く堅実なマダムとなると、やっぱ高峰秀子にピッタリのキャラです。若尾文子だとどうしても妖艶な不思議ちゃん的なヒロイン像になりがちですからね。高峰秀子が務めるバーは二階にあるので階段を昇って店に入るわけだが、これが苦労の絶えない私生活から自らの戦場である異界に足を踏み入れる様な感じがします。この階段を昇るというカットは、面白いことに2年後に川島雄三が『しとやかな獣』で若尾文子が再現(こっちは階段を下るんだったかな?)していて、これは一種のオマージュなのかな。ホステスたちの生態もけっこうリアルで、中でも高峰にモーションかけていた中村鴈治郎に横からちょっかいかけて、ちゃっかり独立して自分の店を持つ団令子がいかにもな感じで良かったな。ラストで高峰秀子の店を辞めて団令子の店に移ろうとしていた仲代達也を相手にしないしたたかさもあり、きっと彼女はこれから銀座でのし上がってゆくんじゃないかな。仲代達也は徹底的にクールで実利的な男を演じていましたが、ちょっと影が薄いキャラだった感があります。そして、やはり一番強烈なインパクトを残したのが加東大介でしょう。その正体が明らかになったところでは、それまであまりに善人としか見えなかったので、「この男はサイコパスだったのか…」とゾッとさせられましたよ。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2024-07-21 22:01:46) |
16.銀座のクラブが舞台のお仕事映画。ホステスも大変なのよ~を謳ったお話で豪華キャストの割には盛り上がりに欠ける。お久しぶりの森雅之さんも「家庭を犠牲にする勇気はない凡夫だよ」(当然やね)当たり障り無い姿で残念。MIPは姑息な加藤大介かな。 |
15.《ネタバレ》 心にグサっとくる映画。高峰秀子が抜群。仲代たつやがギラギラしている。そして、衣装(高峰秀子の担当)が、特に着物がスタイリッシュで素敵。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-01-05 21:45:28) |
14.《ネタバレ》 成瀬監督の映画はどうしてこんなに面白いのだろう。邦画の三巨匠のように明確なスタイルがあるわけではないのだが、ただただ映画を撮るのが(物語、あるいは感情をフレームの枠内に綺麗に収めるのが)巧いのだ。そんな成瀬監督が高峰と組んで生み出した良質な作品群の中でも、本作は最良の出来といえる。高峰演じる主人公が、群がる男たち(現実に疲れ、汚れた顔の男たち)を掻き分けて力強くも儚く生きていくというストーリーは、古典的ではあるが一人の現実の女性を創出することに成功している。特に終盤で仲代達也が高峰に言い寄るシーンでの、男と女の空間的・精神的距離感と、剥き出しになった生身の台詞の応酬は、痛ましいとさえ思えるほど人間という生物の核心を突くものだった。話は変わるが、本作の題名にあるように主人公が階段を上っていく象徴的なショットが幾つかあるのだが、あれがどうも鼻につくというか、安牌な映像表現のように思えて少し残念。 【吉田善作】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-12-31 01:50:45) |
13.モテてるけど全然幸せじゃないなあ~。なんか悲しい職業やなあ…。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-02-13 21:38:09) |
12.《ネタバレ》 実際の銀座の女性たちが本当にこの映画のようだったのか、主人公のような女性が実在したのか確かめようもないが、少なくとも最初から最後まで人物描写、感情描写は秀逸であり、リアリティを感じた。それにしても、このところ高峰秀子主演作をたてつづけに見たが、彼女の演技力、表現力には感服。どちらかと言えば淡々として起伏が小さく練られた脚本とは言えない物語なのに、高峰秀子の演技力と脇役陣のドンピシャの配役と成瀬監督の映像構成力とが相まって、見るものを最後まで引き込み心に染み入る映画になっている。 【nobo7】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-01-15 00:34:43) |
《改行表示》11.ホステスといえば、現代では華やかで逞しく生きる女のイメージばかりが先行するけど、 本作では夜の世界に生きなければならないヒロインの状況、女の弱さやはかなさと、 裏の顔までをとことん描いてます。昔と今では女性の考え方や生き方、 こういった職業に対する見識も違うんだろうけど、これはこれで興味深く鑑賞できた。 きれいだけど、ちょっと陰のある高峰秀子は、この役柄には適役だったかなと。 地味な内容なれど、中々の佳作。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-09-28 19:38:35) |
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《改行表示》10.《ネタバレ》 やっぱり成瀬巳喜男作品の森雅之はカッコよすぎる・・・究極のダンディズムだ! さて、脚本に成瀬巳喜男が参画せず、あとはお馴染みのキャストとスタッフで作られた、微妙な異色作。 そこの辺りの影響は、ほんの少しだが出ていたようにも思う。 全体的に漂う退廃的なムードは、一見、その他の成瀬巳喜男作品と同じようにも感じられるが、人間と人間との交錯の深さがやや浅かった気がしなくもない。 成瀬巳喜男作品と言えば、切っても切れない男女の仲、深いつながりみたいなものを感じさせる作品が多いが、本作は沢山の人間が交錯するものの、それ以上の深みがない。 別につまらないわけではないが、作品に引っぱられ、のめり込む吸引力が少し劣る気がした。 その影響か、最初から最後まで淡々とし過ぎた感は否めない。 一方で、高峰秀子のラストの笑顔。 これはとても印象的だった。 “真冬を耐え忍び、春の芽をじっと育てる銀座の街路樹のように”、きっとまた復活するに違いない笑顔を、彼女は最後に見せてくれた。 当時の銀座の風景描写も印象的だった。 現在の銀座と言えば、一流外国ブランドのビルが建ち並び、路地裏もそれほどの淫靡さを感じさせない。 どんどん綺麗になり、浄化作戦とやらで変わっていく東京の風景。 そんな郷愁も、本作を観て感じずにはいられなかった。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-02-27 17:20:02) |
9.ママ(高峰秀子)が誰と結婚するか賭けをするバーの女たち・・・ やっぱり観る側もその点を意識しちゃうから、終盤の怒涛の展開にはびっくりした。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-11-24 19:11:44) |
8.いいですね~このレトロな雰囲気。オヤヂ達はこんなとこで飲んでたんだね。でもこの頃のウイスキーって一杯いくらしたんだろう?加東大介いい味出してます。仲代達矢が若い! 【イサオマン】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2009-09-28 22:00:33) |
7.銀座のクラブのシステムは今も昔も変らないなぁ・・。高峰秀子さんのキャラクターもあって、本当はもっと、もぉぉっとドロドロなプロの銀座の女性がかわいらしく描かれていると思います。だまし・だまされも男性と、、ですから。本当は女性同士の方が怖いもの。しかし銀座っていつまでもこのままで行くんだろうか・・世界中でこういう商売が成り立ってるのってあの街だけなんじゃ・・? 【グレース】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-04-11 20:05:21) |
6.《ネタバレ》 高峰秀子がやると、全部同じ女に見える。 【みんな嫌い】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2007-12-02 19:12:10) |
5.えっ?団令子って亡くなっていたんだ!知らなかった。川島雄三監督の作品によく出ている女優さんで個性的な女優さんです。それはそうと、これはかなりドロドロしているなあ!まあ、そのドロドロ感こそ成瀬巳喜男監督の得意とする分野なのかもしれない?と何だか見ているうちに思えてきてならない。マダム役の高峰秀子、相変わらず見ている側に対してまるで自分がお客さんになっているように本当に感情移入させるのが上手い。話としてはかなり湿っぽいものの、これはこれでなかなか面白く、特に高峰秀子と一緒になれば幸せになれたはずなのにと思ってしまう加東大介が良い味を出している。それに比べるとやたら冷たい仲代達矢は、う~ん? 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-09-24 21:52:40) |
4.《ネタバレ》 『流れる』の現代版みたいな感じ。タイトルにある階段を上る時の音楽が独特で高峰秀子の心の声と共に印象に残る。外の疲れた開放感と店の作られた開放感、その間にある階段だけはいつも薄暗く、薄暗いけど階段を上る高峰の背中だけは光が当てられ、その階段だけが別の世界であるかのように映される。出てくる男どもが意識無意識にかかわらずみんな高峰を食い物にする展開の中で、女であることが常に彼女を苦しめる。強がってはいるけれど実は弱い、でも好きな男を見送って株券を返すことでスッパリと切って、その後店で見せる商売用の笑顔に女の強さを思い知る。結局苦労するだけして何も残らない。なくしたものは多くとも得たものは厳しい現実を身をもって経験したということぐらい。けしてハッピーエンドとは言い難い。それでも前を見ているから出る笑顔に救われる。 【R&A】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-04-24 16:39:50) |
3.若い頃、酒も飲めないのに、いい子といい仲になれたらと夢見たものです。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-08-19 16:31:14) |
2.《ネタバレ》 お正月公開の豪華キャスト作品で成瀬巳喜男作品の中でもヒットしたほうの作品とか。銀座のマダムも華やかなばかりではなくむしろ辛いことばかりだが、今日もバーへと続く階段を上り生きていくといったストーリー。どこか「祇園囃子」や「赤線地帯」を思い出したけど今回も交通事故が出てきたり成瀬らしさも見える作品。加東大介も成瀬作品見慣れてくると時代劇の定番悪役のようにどんなに良い男してても胡散臭さがたまらない。 【バカ王子】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-06-20 00:31:21) |
1.銀座の高級クラブを舞台にした男と女の駆け引きがストーリーの主軸、成瀬監督らしからぬ派手目な題材と思いきやこれが意外に面白い。出演者は成瀬映画の常連で巧い人ばかりだが、先日亡くなった若いホステス役の団令子と、ヒロインの高峰と結婚までこぎつけようとする加東大介が特に好演。自分は去年池袋の文芸座で観ましたが、観客席はほぼ満席の状態で、成瀬人気の相変わらずの高さを思い知らされました。 |