345.《ネタバレ》 「小説家を見つけたら」と共にガス・ヴァン・サントで一番好きな映画だ。
舞台は1970年代、大学の講義のシーンからはじまる。
数学の難問を朝飯前のように解いてしまうがウィル少年。オマケに「f●ck!」を連呼する命知らずの馬鹿でもあるバリバリのインテリ不良。
出会う人間にはデッドボール(暴言)ばかり投げているが、本当は打ち解ける事を恐れていた。親も含めて大人なんざクソッたれ、頼れるのは子供の頃からつるんできた不良グループだけ。
能力はあるが己の能力に少し酔っているというか、とにかく過去のトラウマを引きずり自分の殻から抜け出せずにいた。“超絶クソすばらしい完璧主義者”である彼は。
完璧だと思い込む人間ほど、その均衡が崩れようとする際は動揺するものだ。
物事を知りすぎて逆に自分の目で直接見る事を恐れていた。傷つける・傷つけられる事を誰よりも恐れ、面接すら“替え玉”。
一体過去にどれほどの苦痛を味わってきたのだろうか。
彼の才能に目を付けた教師たちは彼を更正させるべく“司法取引”で勉学を薦める。
しかしウィル少年の心の傷は予想以上に深く、彼を更正させようとする教師も心の傷を開いていく。
教師たちは知識ではなく経験や“癖”によって本だけでは得られない“本当に大切な何か”を語っていく。
「答えは自分で探すんだ」
「ああ言えばこう言う。なのに簡単な質問には答えられない。つまり“答え”を知らないんだ」
ウィルも痛いところを突かれてダンマリ。先生の“女房自慢”を何処か羨ましそうに聞くウィル。
ウィルは知り合った女性に性行為をせがんで“現実逃避”。それは同時に初めて芽生えた対抗意識でもあった。
ウィルは先生のような“良い大人”にもっと早く出会いたかっただろう。ウィルの心も次第に変化していく。
旅立ちの時…とにかく自分の殻を“ブッ壊したくて”しかたない。
不良グループの兄貴のセリフはトドメの一撃。
「他の奴が持っていないもんを無駄にするなんて俺は許せねえっ!」
ウィルは“宝くじ”を既に持っている。しかも努力しだいでどんな夢でも叶えられる大切な宝物を。
いや、不良たちが手に持っていたのはバットだったが、心の中には最高に“グッド”な何かを持っている奴らだった。
ウィルはようやく先生たちに本音を打ち明けられたのかも知れない。
最高のオンボロ車、最高の手紙、そして最高の“サノバビッチ”。良い映画です。