237.《ネタバレ》 終戦の日。ということで鑑賞。
父親からの星条旗が思ったほどピンとこなかったため、劇場には行かなかったことを後悔してしまった。
アメリカ映画のスケールで、日本側の視点から極力中立に、丁寧に描かれた戦争映画。
ここまで違和感のない日本の文化と考え方を表現した映画を、アメリカが作ったことが驚く。夜中に国旗を掲げてるとか、あれ?って思う描写は少しあったけど、日本で作っていたら、きっともっと違和感を感じる、反戦メッセージの強すぎるチープな作品になっていたんじゃないかな。と思う。
廃トーチカ、朽ち果てた戦車。調査隊が洞窟を調べる現代から、戦中の硫黄島、灰色の空と土。西郷のボヤきに繋がるのが上手い。
一兵卒でさえ無意味だと思う穴掘りをさせられ、ボヤくとムチで打たれる。新しい司令官が作業を止めさせるよう命令しても、直属の上官が止め!と言うまで穴を掘る。今の日本社会もそう変わらない。
「ありゃいい司令官じゃねぇか」「メリケン好きじゃないか?」小澤や野崎との、今ならLINEなんかでするような普通の人の会話から、彼らと今の私達との距離をグッと縮めてくれる。
敵と撃ち合う事もなく、ひたすら戦場を駆け回る西郷の目を通してみる硫黄島の戦い。撤退命令に背き集団自決を選ぶ指揮官と、従うしかない一兵卒たちの現場の空気。私があの場に居たらと思うと、恐怖以外の何物でもない。
地雷を胸に体当たりを敢行する伊藤大尉。死ぬことが出来ず一晩以上放置され、軍人としての誇りも無くなり、孤独な自分と向き合うと、やはり死が怖くなる。助かりたい一心で士官の軍服まで脱ぐ、人間の弱さが生々しい。
負けて諦めて自決して。無能な士官ばかりでなく、バロン西のように人望のある士官も、活躍しすぎない適度なバランスで描かれる。
鬼畜米英と教えられた敵兵の母の手紙。日本兵もアメリカ兵も家族の思いは変わらず、また当時の彼らと今の私たちの思いも変わらない。
西郷が燃やさずに埋めて、61年後に発見された手紙。家族や子に宛てて書いた祖先たちの気持ち。
私達と変わらない普通の日本人が、あんな怖いところで書いた手紙。
生きて本土には還れない、家族には届けられないのを知っていて書いた文面の、何と穏やかなことだろう。
「ここはまだ日本か?」「はい、日本であります」
当時映画を見たあと、どこにあるかよく知らない硫黄島を地図で探した。彼ら英霊が眠る地は、今も日本の領土だ。
あんな遠い南の小さな島で、36日間も頑張ったんだ。