66.《ネタバレ》 原作はベストセラーになった年に読みましたが、内容は細かいところは忘れていたので割とすんなり入り込んで見れました。
また、原作を読む前にルース・レンデルの「ロウフィールド館の惨劇」を読んでいたので、文盲であることを知られるくらいなら無期懲役の方がマシという点も、ある程度納得して読めた記憶があります。
読んでもらう物語に一喜一憂する感受性があるハンナ。
でも、自分の言動についての考察は余り無く、過去の行いを考えるようになったのも裁判から。
そして、本当に物語の意味を自分や他人の心情に重ねて思い描けるようになったのは
文字を獲得してからではないかと私は思います。
書くことで、自分の気持ちを整理したり、相手に伝えたいことをまとめられたりするのではないでしょうか。
書くことで考察が深まります。
そして読むことは、もう一度記憶をなぞれることでもあります。
マイケルは、裁判の傍聴の際、自分が心から愛してると思っていた女性がナチの残党であり、自分を単なる「朗読者」としか見ていなかったのかと二重にショックを受けます。
ハンナが文盲であることを告げ彼女の罪を軽くするのと、彼女のプライドを守ること、どちらが重要か。
また、彼女の罪を軽くするためには、自分との関係も話さなくてはならず自分の将来に重大な影響を与える。
結局何もしなかったしできなかった。
15歳の夏の喪失感とこの時の罪悪感や無力感が、彼を人を深くは寄せ付けない人間にしてしまったのは容易に想像できます。
出所間近のハンナに会いにいったマイケル。
ハンナの出した手も取らず別れ際に抱きしめもしない。
テープを送り続けてくれたのは愛情からではないと気づいたハンナ。
彼女のしたことは許せないけど、そうするしかなかったことも理解している。
愛とは違うけど力にはなりたいと思っているマイケル。
でも、言わずにはいられなかった一言。
ハンナを追い詰めることになってしまった、この再会のシーンは痛々しいです。
ハンナが自殺するときに本を踏み台にするのは原作に無かったと思いますが、ちょっと悲しすぎます。
俳優陣、特にケイト・ウィンスレットは素晴らしかったです。
彼女以外は思いつかないほどハマリ役でした。
最後に、皆さんも書いているように邦題は酷いですね。
「朗読者」にしないとダメですよ。