127.《ネタバレ》 当時小説も映画も話題になっていましたが、テーマ的に
気が進まずスルーしていました。今回テレビで放送されて初めて観ました。
観る側の立場や年齢によって評価が分かれる作品ではあるとは思いますが
現在の自分にとっては、非常に良かったです!映画館で観ていたら野々宮
さん確保からラストのことろで号泣してしまったかもです。
4年間とはいえ、仮の母親からの最大限の愛情を注がれて育った薫ゆえにその
後のわけのわからない展開に混乱し苦悩してしまうというのは皮肉ではあります。
子役も含めて役者さんたちの演技がすばらしかったですね。井上さんは
これまで可愛いだけのパッとしない女優さんだと思っていたのですが、こんな
演技力があったんですね、お見それしました。
他の人の評価の中でも触れられていたのですが、この悲劇的なお話の原因は母娘
にまとわりついた自分勝手で無責任なダメ男たちの所業であるのに、その点につ
いてほとんど描かれていないのはやや片手落ちとは思いますが(特に丈博さんは
実際なら世間から叩かれてボロボロになっていてもおかしくないのにその雰囲気が
なかった)、赤ちゃんを置いて外出したいきさつや秋山家の社会的立場などはくど
くど描くことなく、あくまでも野々宮さんと薫の描写に集中したということかも
しれませんし、それで良かったと思います。
無名の俳優で充分だった薫ちゃん確保の婦警さん役で吉田羊さんが出ていましたが、
あれって友情出演か何かだったのでしょうか。どこで出てくるのかと思っていたの
であれれっていう感じではありました。
【番外編】ダメ男たちについて:
本筋とは分けて考えるべきかと思いますが、最も非難されるべきは丈博氏である
ことは明らかですね。
避妊をせずにセックスすれば子供が出来る可能性があることを知りながら、子供が
出来ると将来は一緒になりたいが今は子供は作れないと堕胎を強要、その一方で奥
さんとはセックスして子供を作るという、支離滅裂な場当たり的な行動をとっています。
奥さんは当然そういうことを分かってはいるが、丈博氏への怒りも含め全てを野々宮
さんにぶつけてしまうような弱い人間と言えますが、非難する気にはなれません。
そんな男と不倫をした野々宮さんも、きつい言い方ではありますが、自業自得の一面
はあるし、責任は逃れられないとは思います。
もし実際に野々宮さんの裁判が行われた場合、弁護側が優秀であれば徹底して丈博氏の
責任を追及し、野々宮さんの行為は追い詰められ心神喪失となった結果の犯罪として情状
酌量を求めるでしょう。野々宮さんは薫ちゃんには危害を一切加えておらず、薫ちゃんは
両親から逃げ出して交番に駆け込んだことからも野々宮さんを愛していることは明らかで
この点も情状されるのではないかと思います。一方、生まれたばかりの赤ちゃんを家に放置
したことから、秋山夫婦の子供への愛情の希薄さも指摘できるでしょう。
また裁判で奥さんが「死んでしまえ」と罵倒したのは、野々宮さんの「空っぽの女」と罵倒
されたという供述を裏付けてしまいました。
奥さんは裁判ではあくまで子供を誘拐された可哀そうな被害者を演じなければなりません。
これらの点を訴えれば執行猶予はつかないにしても刑期はかなり短縮される可能性は高い
ように思います。
そして再び同じタイプの岸田氏と恵理菜さんは関係を持ってしまうわけで、物語の結末に
持っていくために必要だったとのでしょうが、これはいささかやりすぎではあります。
世の中はこんなダメ男だらけではないことを祈るばかりです。