5.《ネタバレ》 戦争というものに対して、これほどまで正面から堂々と踏み込んだ映画は他に類を見ない。昭和初期の日本の成長発展とその野望とともに歩んだ戦争への道を、これ以上詳しく表すことができないほど、丁寧にかつ客観的立場で踏み込んでいる。おそらく相当入念な検証がなされたことだろう。日本の近代史を知る上で教科書以上の歴史的教材である。
映画は1928年(昭和3年)の張作霖の乗った列車を関東軍が爆破させるということから始まる。常に戦争は大義が必要であり、そのためにはいかなる画策、謀略も辞さないということが手に取るようにわかる。
また、日本の新興財閥は利益拡大のため、清王朝滅亡後の弱体化した中国につけこみ、満州の地を我がものにしようと勢力をひろげていく。
伍代家にあっては、強行推進派の喬介(芦田伸介)英介(高橋悦司)と慎重に構える由介(滝沢修)、また若輩ながらそれに疑問を持つ俊介(中村勘九郎)を軸に、ヒロイン由紀子(浅丘ルリ子)の奔放な愛をからめて、壮大なドラマとなっている。
印象的なシーンは数多くあるが、音楽好きの私には、由紀子がサロンで弾く「幻想即興曲」が美しい調べとなって記憶に残っているし、石原莞爾や板垣征四郎という実在の関東軍参謀も登場する。
また伍代家を取り巻く人物として、標兄弟や柘植中尉、伍代産業で働く高畠や鴫田、親中派の服部医師、中国人趙親子など、有名どころが数多く登場、石原裕次郎も出演しているのだがどこに出てきたかかすんでしまうほどである。