22.《ネタバレ》 溝口健二にしてはちょっと押しが弱いかなと思った。
ちょっと押しが弱い気がする。
他の作品に比べると(同時期なら「浪華悲歌」とか)キャラの印象を薄く感じる。
ただ、溝口健二の最盛期だった1920年代~1930年代(淀川長治いわく)の名に恥じない作品であるのは確か。
登場人物もそんな感じに抑圧されている印象が良かった。
人物のクローズアップが滅多に無いので、ロングショットの迫力と美しさはスクリーンで楽しみたいものだ。
特に本作は「唐人お吉」の梅村蓉子、山田五十鈴の若く美しい事だけでも楽しめるし、クローズアップされた山田五十鈴の笑みが良い。
若い二人の姉妹は芸妓と一見すると性を自由に謳歌するようなイメージがあるが、実情は幼い頃から芸妓として生きてきた抑圧された面を覗かせる。
普段は着物で“縛られ”、時折の洋服姿は解放された女性像を感じさせる。
この和服/洋服が最も共存し、女性が自由になろうと背伸びしていた戦前の日本。
貧しく辛い身の上、更には女性軽視(嫁が男を尻に敷いている家庭も結構あったけど)が当たり前の時代。女性は慎ましくも自由になろうと抗う強さと美しさを持っていた。
和服と洋服が共存するという映画は、日本じゃなきゃ撮れない独特の美意識を感じさせる。
そんな抑圧された女性ほど魅力的で怖い者は無い・・・!
本作は姉妹でそれぞれの男を取り合い決裂、男を振り回した女は仕返しを受けるし、男の方も手を出してタダでは済まない。
時代に押さえつけられた女の主張、男として何でも強く生きなきゃならない男の主張、どちらも意地の張り合い。
気持ちは解るがどっちもどっち、男も女も勝手だよと、そんな感じがよく出ている映画だねえ。本当溝口はこういうの描くのが上手い。
溝口独特の飽きそうで飽きさせない絶妙な“間”、
映像の切り替えが結構あるし、印象的な長屋のロングショット、美人二人に酌を受ける先生の満更でもない表情、酒に酔った先生が今で言う“逆ナン”的に誘拐されたり、終盤の車の窓越しの夜街のロケーション、直接的な描写を見せずとも伝わる袋叩きにされた娘の悲痛。
悲惨でもあるけど、「そうなってもしゃあないわ」と何処かユーモアすら感じてしまう。
仲違いしていた姉妹が結局仲直りする様子は微笑ましくもあり、「負けてたまるか」と叫ぶ妹の姿は痛々しくもあるし力強さも感じられる。