14.《ネタバレ》 これは珍品。単純な恋愛物、それもハッピーエンドのラブストーリーなのだが、作品全体を覆い尽くす不穏なムードはレベッカあたりの心理サスペンスのようだ。精神的に壊れた小姑のいる旧家に嫁ぐ栗原。普通ならどえらい事が起きるはずのプロットなのに、小姑はよくいるアスペというくらいのもので結局何も起こらない。では見所はどこか。まず画面構成が素晴らしい。日常風景の中の幾何学的オブジェ(階段や橋のトラスや障子の桟など)を上手く画面に活かすその美意識に感服した。そしてそれらの素晴らしい背景画にはめ込まれ、テクスチャマッピングみたいな異様な顔の加藤剛と、これまた人間離れしたハイパーブリッ子演技の栗原小巻。このプラスチッキーな二人のラブラブな様を見ているだけで、人様の悪夢の中に迷い込んだような居心地の悪さと不条理感を味わえる。主役なので当たり前とはいえ、両人ともこの世のものとは思えない浮きっぷりで、画面からせり出すような顔の圧迫感が凄い。物語はそんなカップルがラストは初夜の貫通式を無事迎えられてめでたしめでたしという脳天気な話で、恐ろしげなムードは一体何だったの?と肩すかしを食らわせられる。これが却って意外性があって良いのだから映画って不思議だ。但し残念なことにクライマックスの濡れ場があまりいただけない。栗原が浴衣を脱ぐプロセスで、裸のバックショットを狙える場面があるのに手慣れたストリッパーのようにサッと隠してしまい、尻とか一切見えない。乳首がチラチラ見えるのは結構なのだが、終始布団に入っていて体全体のボリューム(特に下半身)が分かるカットがひとつも無い。愛撫に対する反応もごく控えめでまるで不感症のように見える。ウブな女ということを表現したのだと思われる硬い演技の結果、全く欲情をそそられない。これでは加藤剛も内心あてがはずれたのではないか。清楚系女子は性行為中狂気を感じるくらい豹変してこそ、その清純さが価値を持つのだ! 【皮マン】さん [地上波(邦画)] 7点(2017-11-24 16:55:09) |
13.○志乃の役、サユリさんではなくてコマキちゃんで良かった。 おかげさまで観音様の美乳をタップリ拝観することができました。 ○この映画、志乃の優しさと、美しさと、言葉遣いが三位一体となって、極上のエロスが醸成されています。 「エロ可愛い」ではなく「エロス美しい」映画です。 現代の若者の嗜好に合うかどうかはわかりませんが、ぜひ一度ご覧になってください。 ○↓ 下の、「川島雄三監督の『洲崎パラダイス・赤信号』が見たくなってきてしまった」と仰った方、激しく同意です。 ○↓ 下の、「昔の日本映画で舞台になった東京の風景を、暇な休日とかにテクテク歩いて探してみるのが結構好き」と仰った方、地方生活者にとっては激しく羨ましいです。 【火蛾】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-02-15 13:42:39) |
12.最初は年食った大学生の加藤剛に違和感を感じていたが、志乃が死を間近にした父親の元へ旅だったあたりから俄然物語に引き込まれてしまった。栗原小巻はとても美しく、加藤剛とともに清純派カップルの純愛ぶりが凄く良い。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-09-30 20:18:10) |
【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-12-15 00:03:07) |
《改行表示》10.近所の映画館の40周年を記念した映画祭で、40年前オープン当時に上映されていた作品ということで観賞。 しかも、リマスター版とかいうものではなくて、当時のフィルムを無理矢理に上映するという荒業の為に一部の音声が途切れたり、映像がワープしたりという視覚効果も交えての観賞となりました。 まあ、それはそれで味があって良かったとは思うけど、肝心の内容の方も味があって良かったですね。 男と女の出会いから結婚までを描いた純愛物ではあるけど、それぞれの人生の背景に深みがあって、中盤以降は重厚な人間ドラマの様相。 人がたくさん死んで話が重過ぎるかなという印象もあったけど、栗原小巻の魅力に牽引されて最後まで興味深く観賞することが出来ました。 特に終盤の結婚前夜の家族のふれあいには涙しましたよ。 戦後から高度成長期への時代の移り変わりを象徴するように古いものが消え去り、新しいものがどんどん出来てくるという演出が印象的だったけど、その新しいはずの東京の街並みですら現在と比べるとやたら古臭い昭和の香りが漂うというギャップがなんだか面白かった。 シナリオの展開はその逆に大都会東京から雪深い東北の故郷にタイムスリップしたようなノスタルジックな味わい深さがあり、その景色の荘厳さに感動すら覚えました。 【もとや】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-10-03 05:21:54) |
9.《ネタバレ》 こんなに幸福なラブシーンがあるだろうか。女の子がなりたいものは「お嫁さん」という気持ちもわかる。かつては、こんな幸せな映画があったのだから。今は2時間の映画の中で女性と男性が出会って、すぐラブシーンなんかあるから、何か薄っぺら~いもののように感じられて、性の解放なんて叫ばれたが、やはり人生は二人の男女が共にお互いを大事に思い、その愛の結実として、二人が抱き合う、そういうものではないか。結婚が何かつまらないことのように感じられて、少子化である今、このような映画こそ、創られるべきではないか。というより、熊井啓監督は飽きさせない展開で、この純愛を描いた。が、男女の恋愛というのは、本当飽きさせない展開で、若者は映画なんか観てるより、お互い大事に思える異性を探すべく、「旅」に出るべきだ!などと思ってしまった。社会派の熊井監督は、この男女の背景に当時の社会的状況を置いて、この映画を描いたが、本当は男女の愛とはこうあるべきだというテーマこそ描きたかったのではないか?この映画を観て、夜、レンタル屋に返しに行く町の風景が、東京から故郷へ帰る夜汽車から見えた地方の町の風景と同じように感じられた。 【トント】さん [DVD(邦画)] 10点(2011-05-17 23:59:00) (良:1票) |
《改行表示》8.《ネタバレ》 ストーリー自体は単調で、とりわけ特筆すべきものはない。 しかし、モノクロ映像がそのストーリーと世界観を巧みに増幅しており、モノクロ映像が十二分に良い影響を与えている。 単なる男女の恋愛ドラマの域にとどまらず、例えば加藤剛の兄弟たちの多くが自殺をしているという設定が、ちょっとした猟奇めいた独特の雰囲気を醸し出している。 そして実家の田舎に暮すサングラスをかけた目の不自由な姉。 この人の存在が、前半からずっと不気味に描かれているが、意外にも嫁いできた栗原小巻に優しかったり、サングラスを外して弟の加藤剛に泣きつくシーンなどで、不気味に見えた姉が、実はとても人間的で普通の優しい人だった、と分かるくだりも素晴らしい。 それと、東京の木場や洲崎、浅草などの風景描写、東北の田舎の風景、こうしたその土地土地の描き方にも、観る者をモノクロ映像の世界に深く誘う効果を発揮している。 私は自宅で鑑賞したが、映画館で観たら、更に深くその世界の雰囲気にどっぷりと浸れたに違いない。 医学や自殺といったテーマとの絡みに、熊井啓監督ならではの個性も感じられ、ありがちな恋愛ドラマと一線を画す出来栄えである。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2011-03-27 03:48:13) |
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7.とりわけ前半がいい。州崎パラダイスのあたりの美術(木村威夫)なんか丁寧で。木場での兄さん(井川比佐志)の最後の表情とか。奥のほうにピントが合ったまま、主人公がこっちに来るってのもあったね、浅草のシーンだったか。カモメを見る少年のシーンとか。メロドラマってのは、こうそれにふさわしい情景の中に、美男美女のアップがポンポンと入らないといけないんだ。リアリティを追及した演技じゃなくていいんです。美男美女であることを自覚している立ち居振る舞いが求められている。栗原小巻って、ちょっと下あごを突き出すと、ちあきなおみなのね。ときどきひどくドンくさく見えるカットがあるんだけど、男(加藤剛)はこういうところがいとおしいんだろうなあ、と思わされちゃうのがメロドラマの魔力。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-01-14 10:31:28) |
6.話そのものは今から見るとどうってことはない少し暗めのラブストーリーなのだが、全体的に白黒であることを生かした美しい映像が印象的だった。熊井啓監督は撮影時、体調がすごく悪かったと聞いていたが、それでも(傑作かどうかは別として)それを感じさせないとても完成度が高い作品になっているのはちょっと驚かされる。ヒロイン役栗原小巻がとても美しく、今までも「男はつらいよ」シリーズのマドンナ役とか見てるけどここまでとは思わなかったし、見ていて可愛らしく思える。相手役の加藤剛は実は「砂の器」しか見たことなかったのだが、ここでも暗い過去を持つ役柄を演じていて和賀英良と少しダブって見える。(劇中、彼が演じる哲郎の口から「宿命」という言葉が出て、やっぱり意識した配役なのかと思ったら、「砂の器」よりも前の作品だった。)そんな二人が初夜を迎えるクライマックスは卒倒しそうなくらいにドキドキしてしまった。このシーンをめぐって吉永小百合が降板したエピソードは有名だが、原作小説が出た60年代の初めにも映画化が企画され、監督には川島雄三が予定されていたんだとか。洲崎橋でのシーンや哲郎の実家が青森という設定なのを見ると、ぜひとも川島監督で見たかったという気持ちになり、個人的には川島監督で実現しなかったことがとても残念に思えてならない。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-04-16 00:02:46) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 芥川賞受賞作と言うことで原作を読んでから何十年も過ぎてしまっていたから時代ははっきり覚えていなかったけれど,昭和30年代初期が舞台なんですね。ヒロインが子供の当時は特飲街の射的屋の娘で,それでも父親の優しさを受け継いでの素直さを奇麗に表現しています。戦災で焼けてしまってからの深川・木場の光景ですが今では全く失われた東京の風景が残っている貴重な映像です。浅草の様子も現在とは全く違ったものとして残されているだけでもこの映画の価値があります。原作者の自伝的小説とのことだったのですが最近の風潮ではこの種の表現はフィクションであっても困難になってきているので内容の古さなど抜きにしても一見に値する(もちろん栗原嬢の胸も合せて)映画でした。 【たいほう】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-07 17:18:02) |
《改行表示》4.邦画に長けたおかたがたの中におじゃまするのが心苦しいのですが、、 自分の持ち場だけ済まして帰りましょう(笑)。 ’♪二人の世界があーるからだーから強く生きるんだー’の小巻さんと大岡越前の守ワガエイリョーの加藤剛さんの映画です。(私の母イチ押しの岩崎加根子も脇にいます。)それだけでもう満足です(笑)。いやいや、その二人がそれぞれの過去に引け目を感じている男女の物語・・昔人間の私にはよくわかるが、確かに時代性のある作品だとは思う。しかーし! 小巻さんのお胸先お見せシーンの美しさときたら!「犬神家~」(’76)の島田陽子のそれ(笑)と並んで70年代が誇る監督の腕前を見せつけられます(いつものごとくオーバー)。熊井監督、このとき御病気をおして撮ってはった記憶あります、流石やー。 女が階段を上るとき、始まる初夜シーン・・鑑賞時ワタシ45才、それでもほんとーにドキドキしました。/<先日N響アワー出演小巻さん。ロシアへの愛まだ冷めやらず?>彼女はまだこれからアンナ・カレーニナ、また演じるそうな。すごいなー、やるわー。 【かーすけ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-03-05 15:01:26) |
3.これは何と言えば良いのか?おそらくこの時代だからこそ評価され、その年の日本映画のナンバーワン映画に選ばれたと思えるような作品です。そんなこの作品、とにかく画面全体、本当に美しく、その美しい映像の中にあって主演の二人、加藤剛と栗原小巻がそれぞれ事情によって言いたくても言えない深い過去を背負って生きているその姿が描かれている。作品そのものは特に傑作だとは思えないし、むしろ今ならもっと評価が低くなるだろうと思われるものの、印象に残る台詞が多いこと。一つだけ挙げるとすると、栗原小巻演じる志乃の父親が志乃に向って言う台詞「いいか、銭が人間を幸せにするんじゃねえ!」には本当にその通りだと思うし、この台詞をどっかの金持ちで元社長のほりえもんとかいう奴に聞かせてやりたい。だけど何とも思わんだろうなあ!それにしても本当にこの作品、話そのものよりも美しい映像に心を奪われそうになるぐらいでした。何だか見ている途中で洲崎パラダイスの橋の上での二人を見ていたら川島雄三監督の「洲崎パラダイス・赤信号」が見たくなってきてしまった。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-12-30 16:03:10) |
2.クライマックスにヌードシーンがある事で、当初ヒロイン役に予定されていた吉永小百合が拒否して役を下り、栗原小巻が新たにキャスティングされたという逸話が残されている映画。この年のキネマ旬報ベストワンにも選出された作品。全編、ホントにキレイキレイ、まるで栗原小巻が着る丹精こめた手織りの花嫁衣裳みたいにキレイな映画。モノクロ映像も、主役コンビお二人も、ストーリーも、細部に至るまでとにかくきめ細やかな美しさに彩られた作品です。「相寄る魂」っていうのはこの映画の主役二人にあるような言葉みたいです。今はもう残されていないであろう、下町木場洲崎あたりの材木貯水池の情景なんかもすごくいいです。自分、昔の日本映画で舞台になった東京の風景を、暇な休日とかにテクテク歩いて探してみるのが結構好きなんですが、残念ながらもはやほとんど失われているんですよね、30年前のこの頃の風景でさえも。あまり映画の印象と変わらなかったのは柴又帝釈天くらい。・・・なんか悲しいなあ。ついでにこの映画のレビュー数の少なさも。 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2006-12-09 11:55:35) (良:1票) |
《改行表示》1.忍ぶ川というのはヒロインの志乃が働く小料理屋の名前。 そこで訳有りの27歳の大学生哲郎と出会って、というラブストーリーなのだが主演するのが栗原小巻、加藤剛というこの時代きっての美男美女カップル。当時はただもううっとりロマンティックだった。 久々の再見ではそれ以上に、傷ついた魂が寄り添いあうような純愛が静かに激しく感じられてやはり感動する。 二人とも家庭的に暗い影を負っているが木場、洲崎とそれぞれの思い出の土地を歩き過去を打ち明けあう。 お互いの傷を感じて親しみを増し、志乃の実家栃木を訪ね家族に会うが父の死で一家は離散、紆余曲折の末彼らは哲郎の故郷秋田で結婚する。暗い過去に決別し、二人がここから新たな人生を生きていくというまさに人生の門出。 昔見た時もこの結婚初夜が印象的で、特に毛布に二人でくるまって雪明りの道を行くソリの鈴の音を聞く所が美しい。 加藤剛は和製G・クーパーといった感じなのでそれはもうウットリの美しさで、小巻さんもしとやかな美しい女性像なので男性ならメロメロでしょう。 この年このカップルで「忍ぶ糸」というのもあったが、こちらよりはずっと印象深い作品です。 【キリコ】さん 8点(2004-06-08 17:55:05) (良:1票) |