6.《ネタバレ》 時代に取り残された老いた二人のテキサスレンジャーの目を通して、
『俺たちに明日はない』で暴れ回ったボニー&クライドというアンチヒーローに縋り付くしかなかった、
大恐慌下の絶望の中にいる人たちと背景をディテールを以て描き出す。
治安維持という仕事のためとはいえ、過去に多くの悪党を殺してきた男二人がその業を背負い、
アイドル的存在のボニー&クライドが持て囃される時代の流れに抵抗しながら、
与えられた役割を全うしようとする。
禿げた頭に弛んだ腹、小便は近く、早く走ることもできず、かつて引退したのもあり銃の腕も衰えている。
若造の捜査官が使うハイテク機器に負けない二人にあるのは長年培われた経験と勘。
二人が追う間にも、ボニー&クライドは警察官たちを情け容赦なく至近距離から顔面を撃ち抜く。
『俺たちに明日はない』で描かれていたボニー&クライドの反骨的なアイコンは虚像でしかない。
追跡側のヒューマンドラマなんだから、凶悪犯の素顔もドラマもほとんど映さない潔い姿勢は正解だろう。
捻りもないオーソドックスさで中弛みがあるのは事実だが、製作陣の誠実さが伝わってくる。
かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだったスターのケビン・コスナーとウディ・ハレルソンのいぶし銀の魅力と共に、
過去の存在になっていったテキサスレンジャーの枯れ具合に哀愁を添える。
結末は既に誰もが知っている。
ボニー&クライドが死に、遺体を載せた車には遺品を自分のモノにしようと群がる人々、
葬儀には2万人ものファンが参列した裏側で、カップルによって落ち度のない人々の人生が壊されたのも事実。
1000ドルを受け取る代わりにインタビューを求められるも、「恥を知れ」と断る二人。
殺さないと自分たちが殺される、こうするしかなかったと虚しさと無力感に苛まれるも、
車で帰路につく途中、運転を交代するまでに信頼関係を築いた二人に誇りと感慨を覚える。