22.《ネタバレ》 映画「鬼畜」は様々な視点から観ることができる作品であろうが、個人的には実話という場合は、何よりも「実行者の心理」に興味を持つ。妻の言いなりになって我が子を次々に捨てるという、信じがたい行為に及んだその心理に興味を狩られる。どうすればそうなるのか。彼自身は積極的に子供を疎んじているようには見えないし、「本当は殺したり捨てたりしたくない」し、何より「子供が彼を慕っている」=「何らかの愛情を感じ取っている」ように思う。「何でも他人の言いなりになって、抵抗できない」→その理由「自分はおよそすべての他人より劣っている」=「自分より優れた人間に常に従うほかはない」という固定された構図が、この男の頭の中にあったのではないかと推測する。これは、成長過程における「成功体験の欠如」が原因としか考えられない。この映画に見る彼は、知的障害者でもないし、精神を病んでいたわけでもないからである。このように考えるに至ったのは、身近にモデルとなる男性(同僚)がたまたま居たためである。「誉められたことがない」「常にバカ、グズと言われ続ける」このように育って「自分だって人並みに頭が良い」と思うことができるであろうか。このような「成功体験を欠く」人たちの中には、私の同僚のように常に他人の言うことが正しいと思い、自ら考えたり要求したり交渉したり闘ったりすることができない大人が存在する。そして「鬼畜」の主人公の行動を可能足らしめたものはこのような心理ではないかと思うのである。よって、愛人によって初めて「誉められる」を与えられた彼が、簡単に彼女の懐に落ちたであろうことは当然である。映画版は、この構図を納得のいくよう描いていたと思う。この推測に添って考えると、ビートたけしのTV版の主人公は、「違う」ように思われるのである。「それなら捨てないで済むでしょう」と思えてくる。ともあれ姪っ子を見るにつけ、まことに「子供は誉めなければならない」と思うのであった。 【パブロン中毒】さん [ビデオ(吹替)] 8点(2006-01-22 19:08:03) (良:2票) |
21.ラストで原作にはないエピソードが追加されていて、より切なさ倍増(;;)。原作より面白い映画を久々に見ました。 【ゆうろう】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-01-05 09:41:07) |
20.結婚して所帯を持つまでは今ひとつピンとこなかったが,子の親になった後で観ると一気にくる,私にとってはある種の時限爆弾的映画。緒方拳扮するダメ親父の行為は許し難いとはいえ,父性を確立できなかったその弱さに同情心をかき立てられるのも,父親の目線で観ているからだと色々な意味で思う。他の方が書いておられるように,私も東京タワーに置き去りにされた少女の行く末を案じている。娘を置いて立ち去った父親が夕暮れの街中でふと振り向くと,夕空に浮かび上がる東京タワーに照明が灯るシーン。はっと胸を衝かれた。野村芳太郎の演出は残酷で美しい。8点献上です。 【Roxy】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-07 09:53:16) |
19.豊かな現代にのほほんと暮らしていると、本作品の時代背景や描写にぴんと来づらいものはあるが、それでも最後まで釘付けにさせる緊張感はさすが。 【じゃん++】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-08-17 12:22:16) |
18.子供への虐待..それでもなお、父親を守ろうとする..ところに、見せ場があるのでしょうが..私的にそれほどの感動はなかった..映画としての演出、映像は時代を感じますね..それから、子役の台詞棒読み、無表情、は如何なものか... 【コナンが一番】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2005-03-30 12:25:38) |
17.子供に対する母性という幻想が確立したのは、日本では明治以降のことだと言う。親が子供を思いやる気持ちというのは、ある意味で作られていくものなのだ。しかし、子供にとってはそうではないだろう。この映画を昔何度となくテレビで観た。ラストシーンでの少年の赦し、父親の懺悔には、毎度必ず涙したものだ。しかし、少年が本当に父親を赦せるのは、ずっと先の話だろう。いや、実際、そう簡単には赦せるはずがないのだ。社会の中で、子供は親を必要とするものである。ただそれだけのことかもしれないではないか。人が自らのエゴを抱えながら、生きていく原理としての「優しさ」を掴む為には、あなたが私と同じ弱い人間であるということを認めることから始めるしかない。だから人は人を赦せるのである。少年もいつかは大人になる。生き難さを生み出す様々な生の捩れに身を裂かれながら、いろんなことを徐々に赦していくのであろう。そうであれば、少しは救われるのだが。。。ということを今では考える。 |
16.《ネタバレ》 やっぱ一番怖くて残酷なのは人間なのだと改めて痛感。 何が怖いって岩下志麻の鬼畜ぶり。 極妻の片鱗を見ました。あっちより怖い。 最後に子供が「父ちゃんじゃない!」と言うのは色々意見がありますが、私は父親をかばったのではなく彼は、父親を「捨てた」のだと思います。弟・妹が捨てられ今度は自分が・・・・。長男だった彼は一番父親との思い出も多いでしょう。だからこそ私は彼が父親を許せないかったと思いたい。 あんな親こっちから捨ててやる!ってね。 【あずき】さん 7点(2004-06-13 16:46:49) |
15.よくこんな後味の悪い映画を創ったものだ。ちょっと前にタケシと黒木瞳でテレビドラマ化してたけど、こっちには全然敵わない。邦画の傑作。 【マックロウ】さん 8点(2004-06-09 10:52:00) |
14.《ネタバレ》 息苦しさを覚える映画です。自分たちが実母に捨てられたことを知らず、ただ無邪気に父を慕う幼い三人の子供。 自分が産んだわけでもない三人を押し付けられ、憎しみを抑えきれない義母。そして、子供は可愛いが、同時に厄介者とも考えている優柔不断な父親。私はこの映画の初見が中学時代だったので、どうしても子供へ感情移入してしまい、そのために彼らの居場所の無さが気の毒でならなかったです。中でも、東京タワーに置き去りにされた瞬間の女の子の表情が。よく考えれば死んだりしたわけじゃないのですが、背筋のぞっとするシーンです。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 8点(2004-05-28 22:53:01) |
13.《ネタバレ》 岩下志麻の鬼畜ぶりと緒方拳のダメ男ぶりはとてもよかった。小川真由美もよかった。蟹江敬三もなかなか良かった。 ただ 子供の演技が下手すぎる。子供の学芸会みたいで全てを台無しにしている。もうちょっと他にうまい子がいなかったものだろうか。音楽はよかったと思う。 【ぷー太。】さん 5点(2004-04-02 17:32:48) |
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★12.《ネタバレ》 小学生のときに初めて観て、映画を観て泣くことがあるということを教えられた作品です。親が子供をひとりずつ「消していく」という行為が本当に恐ろしかった。真夏のいらだつような暑さの描写が、爆発寸前の狂気をより一層効果的にみせています。赤ん坊の上に被さったビニールシート(でしたっけ?)を取らないで、冷ややかに見つめる岩下志麻が忘れられません。子役達がまた上手ですよね。ラストで警官に「君のおとうさんだね?」って聞かれて、男の子が「おとうちゃんじゃないやい」っていうシーン、言葉通りの意味なのか、それともかばっているのか、ものすごく考えさせられました。どちらにとっても、泣けて泣けて仕方ないわけなのですが…。蟹江敬三が緒方拳に「あんたがしっかりしなきゃ子供が可哀相だろう」っていうシーンだけが、唯一この映画でまともな大人がでてくるところっていうのも、主役の3人の鬼畜ぶりを際立たせていますね。東京50km圏道路地図さんが書かれていますが、私も東京タワーを見るたびにいなくなってしまった女の子のことを思い出してしまいます。 【へっぽこ】さん 10点(2004-03-23 14:50:17) (良:2票) |
11.《ネタバレ》 小さい頃に見て、怖かった思い出があります。特におどろおどろしいのでは無く、人間と言うか大人の感情が剥き出しになるのが、子供にとってはこの上なく怖いのだと思いました。岩下志麻と緒形拳の演技もリアリティーがあって(こういう夫婦いる!みたいな)一層始末されてしまう子供への同情心が湧いてきました。ストーリーと演技と映画の演出が成功している作品だと思います。捨てた親と捨てられても尚親をかばう子供。この感情の違いに、涙せずにはいられません。 |
10.真夏のうだるような暑さの中、生活苦に追われる印刷屋夫婦のもとに、夫の隠し子3人を引き取るハメになる。松本清張原作の同名小説を映画化したものなんですが、問題提起であり戒めとも受け取れる作品です。突然襲ってくる最悪の事態に対して、貴方ならどう受け止めどのように解決しますか? …と、作り手は提示しているようだ。気弱な主人公・宗吉は突然の出来事で気が動転してしまい、とんでもない解決策をとる。子供達には何の責任も罪もないのに…。この映画では、(見方にもよるかも知れないが)救いようのあるラストで締めくくってくれる。やはりこういう時はまず冷静になり、受け皿を広くして、ひとつひとつ問題を解決していくべきであろう。うーん、何だか身が引き締まる思い。社会派サスペンスの秀作です。 【光りやまねこ】さん 8点(2004-02-18 15:54:04) |
9.子を捨てた実母、突然夫の隠し子を押しつけられた女、そして自らの不始末の結果を目前にして何の行動もとれない男。三人三様の鬼畜の物語だが、私は岩下の嘆きと怒りに共感を覚えるのだ。実母も男もある意味自業自得だが、岩下だけは違う。信じていた者の裏切り、いきなり降りかかってきた不幸に、どうして平静でいられようか。やりきれない怒りに切れてしまった岩下が、幼児の口に「食べろ、食べろといってんだよ」とごはんを手で押し込むシーンはすさまじい。圧倒的な迫力に観客は飲み込まれてしまうだろう。 【駆けてゆく雲】さん 7点(2004-01-27 20:58:05) |
8.鬼畜にさせられたのが緒方拳。だけども、ほんとに怖かったのは岩下志麻なんだよね。捨てられるも育てられるも鬼母岩下志麻の胸三寸・・ ほんとの鬼畜は岩下志麻だったのだと物心がついた頃に知りました。 【3737】さん 7点(2003-12-28 00:15:19) (良:1票) |
7.山の手線にのっていて(浜松町近辺で)東京タワーがビル越しに「見える・見えない」状態になるといつもこの映画を思い出して切なくなります。 今この電車に乗っている何人の人が「鬼畜」を思い出してるのかなあって考えたりして。とても悲しい映画ですが、最後のシーンで心が救われます。 |
6.ラストの親子のシーンは、自分が見た日本映画の中で最も印象に残るものである。高校生の時以来何度見ても泣けて、泣けて、泣けて・・・映画を見て涙した唯一の作品。 |
5.怖い映画ですね。子供ができて、その残酷さと悲しさが改めて分かります。岩下志麻と小川真由美のバトルは日本映画史上に残る対決です。そこでの「もぉやめてくれよぉ」という緒方拳の無能っぷりもよい味出してますね。また何よりこの映画は、芥川也寸志の音楽をおいては語れない。ストリートオルガンのかわいらしい音色が映画の不気味さをより際立たせていたと思います。 【神谷玄次郎】さん 9点(2003-12-17 21:47:47) |
4.イヤな話ですが、邦画の中では好きな作品の一つです。緒形拳のダメ男ぶりも、岩下志麻の悪妻ぶりもなかなかの見ものだと思います。最近観てないのではっきり覚えていない部分も多いですが、ラストシーンでは胸の詰まるものがありました。この頃の日本映画って評価される機会が少ないですが、ちゃんとアメリカンニューシネマに対する日本なりの回答になってるような気がします。小粒ながら、訴えるものはある作品です。 【anemone】さん 8点(2003-12-13 00:40:42) |
3.話が話だけに強烈なインパクトがあるが、とても怖くて辛いものがあるので何度も見たいという気にはなれない。岩下志麻と小川真由美の迫力がすごいが、二人の役を変えてもまた違う凄さがあったかも、、優しいのに気の弱い父がだんだん追い詰められていく様を見せる緒方拳もリアル。苛立ちややるせなさを暑苦しくじっとり滲む汗で表現しているようだった。子捨ての北陸の旅のロケーションやラストの子供には「砂の器」を感じた。 【キリコ】さん 7点(2003-11-26 18:55:12) |