1.《ネタバレ》 登場人物が3人だけの映画、それも画面に映る人間そのものが3人のみで、他はエキストラや、たまたま写った、みたいな人すらも全く登場しないという徹底ぶり。その誘拐された一人の女と誘拐をした二人の男の心理劇は、最後まで退屈させる事なく流れてゆきます。ただし。途中、前半に二回の「映画の見方が大きく変わる意外な展開」が用意されているために、映画に対する興味が「いかに最後まで意外な展開で楽しませてくれるのか?」という状態になってしまうんですよね。結果、後半の印象はあまりにフツーで肩すかし。もうタネは他に用意されてないの?みたいな。密室の心理劇と思いきや、部屋の中だけで完結させる訳でもなくカメラはクライマックス以前にあっさりと外へ出てゆきますし。終わってみれば、ある意味古めかしい愛憎の物語。その関係こそ、ちょっと特異ではあるけれど、その辿り着くところは、まるでアメリカン・ニューシネマを見るような雰囲気。宣伝では監督をタランティーノやクリストファー・ノーランの再来みたいに持ち上げてウリにしている感じがありますが、いや、そこまでじゃあなくね?っていうのが正直なところ。「志村~、薬莢薬莢、弾痕弾痕~」って、ツッコミ入れたくなるような箇所もありますしねぇ。脚本の甘さをそのまま伏線にしてない?みたいな。二人の計画がシンメトリーの画面構成で進行し、それが狂ってゆくと共にシンメトリーが出てこなくなるあたりは、セオリー通りっぽい感じではありますが、面白いんでない?って思いました。