16.いいなあ・・・。是枝監督が独特のリズムで描く何気ない家族の日常の風景。
3姉妹が暮らす鎌倉に離れて暮らしていた末っ子すずが引越してくる。
時にはクスッとさせてくれる描写を含みながらの、4人ののどかな風景が心地いいのですが、
序盤は3姉妹プラス1という空気感も拭えなかったりする。
3人の姉に対し敬語を使うすず。ずっとここにいていいのかという思いが拭えない。
でも、学校やサッカークラブですっかり鎌倉での日常に溶け込んでいるすずの姿にほっとさせてくれる。
自分の知らない、でも確かに父がこの街にいたことを少しずつ感じるすず。
すずの学校生活や放課後の様々な青春の風景がいい躍動感をもたらせています。
姉妹の周りにいる鎌倉の人々や姉妹の何気無い日常を積み重ねていく内に、
気がつけばすずは3人にすっかり溶け込み、4姉妹になっていました。自然に、何の違和感も無く。
やはりこの監督はどうってことの無い家族の日常の中にあるドラマを描き出すのが本当に巧いと思う。
姉妹が暮らす古民家の佇まいがいい。
今時のドラマには見かけなくなった畳と丸いちゃぶ台の茶の間。
縁側。仏壇。年期を感じさせる茶箪笥。背の高さを測る柱の傷。家族の歴史を感じる。
こんな家には一家の大黒柱的な存在がつきものなのですが、
綾瀬はるか演じる、しっかり者の長女がちゃんとその役割を果たしています。
少しシリアスな内容を含みながらも次女、三女が産み出すちょっとした笑いが効いています。
姉妹の思い出の中にいる父の姿を徹底的に見せない。それも今を生きている感じが伝わってきて良かったのかな。
どこか昭和の空気をも感じさせる現代の姉妹と家族のドラマなのですが、
是枝監督にはこれからもニッポンの色んな現代の家族のカタチを見せ続けて欲しいと思います。