16.《ネタバレ》 戦後さほど経過していない製作時期等を考えると、一家の大黒柱が核や放射能被害に遭わないように家族ぐるみでブラジルに移住(多分日本の裏側に位置する国だからという意味だと思う)しようと言い出す明確な心情までは分かりませんが、戦争体験をして死と隣り合わせの部分までいくと、ひょっとしたらこういう風になってしまうのではないかなと考えさせられてしまいました(でも地球上どこでも100%安全な場所は無いと誰も家族が言わないのが不思議)。今の時代で言えば、あの国のミサイルに置き換えられると思います。しかしどんなテーマであれ、ある程度スッキリとした結末を見せてくれていた黒澤映画の中でも、後味の悪さはズバ抜けています。主の考えを阻止しようと準禁治産者の申し立てが通った事がきっかけで更に精神は病み、結局は自分の工場に火をつけ刑務所行きとは・・・。しかも彼は刑務所の中を地球以外の星だと思い込むなんて・・・。もしかしたら危険と隣り合わせの中で平気な顔して暮らしているこっちが普通ではないのかなと考えさせれてしまいました。凄く重いテーマなのに「三船先生が頭の中で移住した星は、こりん星?」とかネタを考えてしまった自分が情けないです・・・。 |
15.三船敏郎演じる中島喜一は確かに普通ではないし、狂っていると思う。しかし、彼は家族を思い、人間としての本能を心から実現させようとしてみせただけである。私はそんな中島喜一の人間性に深く考えさせられました。黒沢明監督は人間の持っているエゴイズムを「羅生門」でも見せたようにここでもまた見せている。「羅生門」に比べたら作品の完成度では劣るものの、同じような戦争をテーマとして描いた「八月の狂詩曲」なんかと比べたら圧倒的に上である。まず何よりも俳優の質の高さからして全然、上です。やや説教臭いものの、白黒の画面からひしひしと伝わるその映像と凄みのある内容は一度見たらけして忘れることは出来ないし、この映画を観ても解るように黒澤明監督は並みの監督とは明らかに違う映像作家としての質の高さというものを持っている素晴らしい監督だ! 【青観】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-12-13 21:58:53) |
14.《ネタバレ》 「狂っているのは実はこんな状況にのうのうと生きている僕達ではないか。私はそう思わずにはいられないのです。」風なことを最後の最後に病院の先生が言います。この一言に集約されてるんじゃないでしょうか。正直、このセリフはありがたかった。それまで僕は「一体、何がどう『生きものの記録』なんだ?」とモンモンとしていたからです。社会性をもった利己的な人間と生物としての原初的な感覚に突き動かされる主人公。いや、あの…生き物=主人公って特定するわけじゃないんですけど、まあ物語全体の騒動も含めて記録、と。結局、最後は明らかに狂ってしまって「あ、なんだ。やっぱりコイツは狂ってたの?」と思われがちで物語を逆に難しくしているんじゃないか?なんて考えてしまう。「社会が人間を破壊した」みたいな?僕はそういうふうに感じました。最後に主人公について。あのオヤジが三船敏郎なんですね…。気付いたっていうか「もしかして…」と、最後まで確信できませんでした。見事な化け具合ですね。確かに三船敏郎が演じたほうが本物のジジイが演じるよりも「狂ったパワー」みたいなのが出ていいのかも。最後の音楽もねえ…退廃的といっちゃちょっと違いますが…イイですねえ。 【ようすけ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-07 05:29:06) |
13.最後がとても衝撃的だった。時代劇・現代劇を問わず、当時の黒澤作品はわりとキレイに話がまとまって終わっていたのに、これだけは違っている。映画が終わっても観客に考えさせようとしているのだ。確かに喜一老人は狂っているかもしれないが、目の前にある核戦争の危機に対して目を反らし知らん顔して生きている奴こそが本当は狂ってるのではないか、と。深い映画です。 初代『ゴジラ』や『世界大戦争』などとセットで観るのもいいかと。 【とかげ12号】さん [ビデオ(吹替)] 9点(2005-11-20 18:14:10) (良:1票) |
12.黒澤明が「七人の侍」の次に発表した作品。娯楽大作だった前作とは逆に静かな社会派の良作。当時35歳で老人役を初めて演じた三船の老けブリが見事。黒澤監督は晩年にも「八月の狂詩曲」という反核映画を作っているが、やはりこちらのほうがいい出来だと思う。「ウルトラQ」を思わせる不気味な音楽(早坂文雄の遺作)とラストシーンが印象的だった。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2005-08-09 22:27:30) |
11.もちろん、原水爆の問題を重要なアイデアとしているが、この映画の根底的なテーマは家族だと思う。、、、、、、三船はイタリア映画に出てくるような家父長を演じようとしている。子どもたちのことを配慮し、世話をしようと、paternalisticに振る舞う。しかし、子どもたちは、父である三船を尊敬せず、その意思に従おうとせず、家族は崩壊する。、、、、、「生きる」ですでに表現されていた「家族の否定」という論理は、この作品で、全面的に展開されることになったのである。、、、、、そう考えると、最後のシーンの意味も、なんとなくわかった気になる。赤ん坊を背負って昇ってくる根岸。根岸は、三船、赤ん坊、自分とで、小さな家族を形成しようとしているのだ。しかし、その小さな家族は、すでに崩壊した三船の大きな家族と同様に、崩壊することを運命づけられている。あるいは三船が狂気に囚われている時、成立することさえないのだろう。、、、、、、、黒澤という人は、家族というものに、何か怨念のようなものを持っているのだろうか。、、、、、それと、三船の演技は、最初は、「生きる」の志村喬に匹敵するとも思われたが、考えてみると、特に、そこまで狂気を演じなくても良いのではないだろうか。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-06-30 11:51:13) |
10.今現在、こんな主人公はただの被害妄想狂として扱われるんだろう。今は良くも悪くも平和を享受したり持て余したり、で、世の中危うくも成り立っている。禁治産者の老人の屍を礎にして成り立っている現在に、ダラダラと生きているという認識を、とりあえず私はもっておこう。と、思わせられてしまう作品。ラストシーンの精神病棟の廊下を分岐する二人のショットは、何とも言えないヒンヤリ感でした。 【aksweet】さん 7点(2005-02-16 23:44:24) |
9.水爆を怖がるガタイのいい爺さんが怖い!!しばしば喜一は水爆への恐怖で錯乱し暴れて、家族をパニック状態に落しいれる。特に最初の裁判所の迫力は凄まじい。マルチ・キャメラ撮影は、圧迫感でむせ返る様な臨場感を醸し出すのに成功している。私は中島家の人々と一緒に困惑し恐怖に慄いた。夕立の閃光瞬く中「こんな馬鹿な物を作りやがって!!」と水爆実験の記事が載っている新聞を引き破るシーンを見て私は子供のとき見た第一作目の「ゴジラ」の恐怖が蘇って来た。他にも濃密な絵の連続で、完全に映像がテーマを凌駕している。映画にとって最も幸福な例である。故に、しょうもない啓蒙や説教に墜落するのを回避出来ている。と言う訳で私はこのテーマや喜一には全く感情移入が出来なかったが、「ゴジラ」同様、自分の理解を超えたものへの恐怖を存分に堪能した。ウーン流石東宝。特撮映画の最高傑作!!次はサンダとガイラ対中島喜一で御願いします。 【水島寒月】さん 9点(2004-05-03 10:14:42) (良:1票) |
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8.精神病患者となってしまった老人を、家庭裁判所の男と老人の妾が見舞いに訪れるラストがとても素晴らしい。このシーケンスにこの物語の全てが集約されていると言っても過言ではないでしょう。妾の背に抱かれた赤ん坊の寝顔がほんとうに印象的で、「何も知らん赤ん坊を水爆なんぞに殺されてたまるか」と言う老人の台詞に素直に共感させられ、「狂っているのはあの老人なのか、それとも正気でいられる我々なのか」という最後の問いかけには思わず言葉に窮してしまいました。登場人物の中で、老人の理解者として印象づけられるのは、血縁関係にある妻や息子達ではなく、見舞いに訪れた家庭裁判所の男であり、妾という、いわば他人である人物です。実際、彼等の立場は非常に弱く、実に無力な存在として描かれ、黒澤監督は、ここに「正しきもの=無力」という図式を作り出し、社会に対する怒りとも言うべきメッセージを全面に打ち出しています。原水爆反対という社会的な大テーマを家族ドラマの中で訴えようとしたことでかなり無理が生じている部分もありますが、メッセージは徹底的に強く、娯楽は徹底的に面白くというように、作品のコンセプトがはっきりしているところが黒澤監督の魅力。作品の中でとことん突っ走ってしまう黒澤監督は良い意味でとても「不器用」な監督だと思います。これは娯楽大作でも同じだと思うのですが、実にわかりやすく明確なテーマを持って突っ走った本作は、特にその「不器用」さがまともにでている作品と言えるでしょう。原水爆というものに対する知識や理解については、現在では随分変わってきていると言えども、この映画で黒澤監督の発したメッセージはとても重要だと思いますし、強く共感できます。マルチキャメラ方式を採用した最初の作品であり、早坂文雄の遺作となった作品。ちなみに興行成績は黒澤作品中で最低らしく、こんなところもまた良かったりします。 【スロウボート】さん 7点(2004-02-21 23:55:10) (良:1票) |
7.晩年訴え続けられる原水爆への想い、この老人こそが黒沢監督なんだろう。核の恐怖に恐れおののき狂ってしまうほど純な人間と核を政治の道具として弄ぶ人間とどちらが本物の狂人なのか。 【亜流派 十五郎】さん 8点(2004-02-13 21:12:35) |
6.《ネタバレ》 ウルトラQに似てるテーマ曲の不気味さが妙に印象に残っている。ラストの三船のセリフはぞっとした。 【ボーリック】さん 8点(2003-12-10 22:19:30) |
5.水爆がどうのとか言いながら、実は他に理由があるのか?とか思ってたら、本当にそれだけだったとは・・・。狂って終わりってのは、今となってはありきたりで新鮮味も無いが、過程はそこそこ楽しめたような気がする。 【のほほん息子】さん 6点(2003-10-31 03:23:35) |
4.かなり狂っているな。三船が主役っていう映画ではない気がするがな、顔力あるし個人的にはもっと荒々しい三船が好きだ。しかし、原水爆の恐怖を狂ったように語るあの老人のおかげで勉強になりました。 【たましろ】さん 7点(2003-10-13 20:53:48) |
3.《ネタバレ》 人災をあれほどまでに気に病む老人に、最後まで違和感を拭いきれなかった。賛成派(?)の志村喬様も、あの後ブラジルへ移住したとは、とても思えず。 |
2.原爆の恐怖で狂わんばかりに叫び続ける老人を三船が演じた異色作。この老人の気持ちは監督の気持ちでもあったのだろう。晩年の八月のメモワールでも、オムニバス映画の夢の一話でも原爆の恐ろしさを訴えている。黒澤監督は娯楽作以外ではメッセージ性の強い作品も作っている。晩年にその傾向が強いが、この時期には珍しい。第五福竜丸事件がこの頃だったか?それがきっかけかもしれない。 【キリコ】さん 6点(2003-05-31 16:39:37) |
★1.うーむ、あのじいさんにはどうも共感できん、、、。なぜブラジルが唯一安全なの? 【あろえりーな】さん 5点(2003-02-07 14:28:10) |