20.《ネタバレ》 人種問題を扱った映画は多くありますが、これほど核心を突いた映画は珍しいと思います。人種映画は白人の手によって贖罪の意味で作られたものが多く、そのためどれもが腫れ物を扱うような作りで、黒人は決まって立派だが言われなき偏見を受ける人と決まっています。そこに来て本作は黒人社会から見た人種問題という他にありそうでなかった視点で、自身が黒人であるスパイク・リーだからこそ作れた映画だと言えます。異人種がすぐ隣に住んでいることの人種的緊張は「被差別者=一方的な被害者」という単純な図式には収まらないものであり、この映画では黒人側の問題点を浮き彫りにします。言葉が満足に通じないにも関わらずわずか1年で店を成功させた韓国人、彼らは人の何倍もの苦労をして成功を手にしたのでしょうが、一方おしゃべりをして1日を終えるような黒人のじいさんは、彼らを見て「古顔の俺たちより成功するとは何事だ」と自分を棚に上げて八つ当たり。またクライマックスの暴動のきっかけを作るメガネの黒人バギン・アウト。彼はイタリア人のサルが経営するピザ屋にイタリア系の有名人の写真しか飾られていないことに腹を立て、「黒人の写真を飾れ」と怒鳴り込みます。同じく暴動のきっかけとなるラジオ・ラヒームも、あれだけのボリュームで店に入られれば迷惑に決まっているのに、それを注意されると「黒人差別だ」と問題をすり替えてしまいます。水戸黄門の印籠かのように「差別だ」という言葉を使い、自分の都合のいいように相手を黙らせようとする黒人のずるさがきちんと描かれているのです。そして、そうした人種間の行き違いは登場人物の中でもっとも人種的にフラットなイタリア人サルへと向けられます。人種の違いを意識せず、誰とでも同じように接してきたサルは、そのフラットさゆえに「差別」という無敵の言葉を振りかざすバギン・アウトやラジオ・ラヒームとの関係をこじらせ、25年間同じ街で暮らし愛着を感じていた黒人の隣人達から店の襲撃を受けることとなる皮肉。その挙句、不真面目な勤務態度も大目に見て「お前は息子みたいなものだ」と愛情をかけてきたムーキーまで、襲撃でショックを受けているサルの気持ちも考えずに「俺の給料をくれ」と平然とやってくる始末。人種が絡むと思考回路が停止する黒人に対して「正しいことをしろ」と訴える実に珍しい映画で、人種問題をよく知るのには欠かせない作品だと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-04 03:21:31) (良:2票) |
19.《ネタバレ》 キムベイシンガーが「なんでコレに賞あげないの」ってわめいたやつ。私は自分の背景価値観に基づいて映画に言及させてもらう。あたりまえだが。プータローなのに避妊しないでHして、孕ませちゃっても責任もろくにとらずにあいかわらずプータロー、だけどHするためだけに通ってくる、って、どうよ。サイテー。「それは黒人が差別されていて仕事にありつけないからしょうがないの」って、じゃあHすんな。するなら避妊しろ。とこのくらい言ってやらないと、こんな映画見てマネするやつがいると困るから。 しかし本などによると、黒人社会においては父親としての男性の地位が昔から低かったようで。それは白人である主人に自分の妻がいいようにされちゃってても文句言えなかったりしたかららしい。当然責任感も育たない。そこにデンゼルが登場してだな、「完全無欠の頼れる親父」ぶりを全開にしてがんばっているわけだ。 【パブロン中毒】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-12-25 14:25:13) |
18.この当時に観れば面白かったんでしょうが、ギャングスターラップ全盛の今ではパブリック・エナミー同様この映画も過去のものに思えてしまいます。 【たま】さん [DVD(字幕)] 4点(2005-10-22 20:12:31) |
17.1989年に3年後のLA暴動を予見したような、アメリカ多人種社会の構図をきっちり描いた点は凄い。インナーシティのネイバーフッドの黒人たちとイタリア人のピザ屋、韓国人の雑貨店との微妙な関係は、どっちが正しい/間違っているでが切られない人種関係の複雑さを象徴している。黒人映画独特のセリフの表現や細かい描写のため、前半部分では1度見ただけではわかりにくいところもあるけれど、溢れんばかりのエネルギーと「熱さ/暑さ」は魅力的。スパイク・リーの出世作にして、やはり最高傑作だと思う。 【ころりさん】さん 9点(2005-01-03 21:59:28) |
16.スパイク・リーって感じの作品やった。考えさせられた。 【はりマン】さん 8点(2004-11-12 18:26:46) |
15.すみません。前半は寝そうになりました。 でも、後半でめん玉飛び出しました。 個人的な意見で、「1時間でこの映画は自分の感性に合わないなあ・・・。」と思うと最後まで見ても9割方駄目なのですが、この映画は後半にやられました。 ちょっと意外です。 【やぶ】さん 9点(2004-10-10 23:27:43) |
14.《ネタバレ》 スパイクリーはマルコムを尊敬しているが、私はキングの考え方に近いので相容れない。正直、事なかれ主義で民族意識の希薄な日本人に人種問題は対岸の火事かもしれない。実際、世界に目を向ければ、宗教上の理由も複雑にからみ、人種、民族問題で多くの命が奪われているし、目の前で身内を殺されれば正気を失い、「行動」する人もたくさんいるだろう。だが、「戦いからは憎しみしか生まれない」のキングの言葉を貫くほうが犠牲が少ないと思うし、“先祖の憎しみを晴らす為の戦い”よりも“子孫への愛情を守るための調和”のほうが、はるかに建設的だと思う。タイトルの「Do the right thing」=間違ったことを正す為の行動(暴動)は是と言う意味なら余計に悲しいと思った。アメリカでは人種問題=黒人対白人の構図だけど、黒人からも迫害されているマイノリティだってたくさんいるよ。問題作としての評価。 【小僧】さん 7点(2004-09-22 03:02:42) (良:1票) |
13.うむ。凄い。重いのに、軽やか。「憎悪」というのは愚かしくも、哀しい。ただ、重い社会問題を扱っていて、かつハッピーエンドではないにもかかわらず、単なる「重苦しさ」だけではない余韻が残った。それはきっとスパイク・リーが全ての登場人物に愛情を注いでいるからではないか、と思う。この作品の登場人物たちはお互いファッキンファッキンと罵り合っている。んが、そこには単なる憎しみ・苛立ちだけでなくある種の「愛情」がこもっているのではないだろうか。例えばイタリア系のピザ屋の主人はいわゆる「善人」ではないが、それでも「(この街に住む黒人は)みんな俺のピザを食って成長してきた。俺はそれを見るのが好きだ」と黒人に偏見を持つ息子に語りかける。日本人の自分にはなかなか実感できないが、あの街にあるのはそういう「憎しみすれすれの愛情」ではないだろうか(確かに一歩間違えば暴動に発展してしまいそうな危うい「愛情」ではあるが)。スパイク・リーが本当に表現したかったのは単なるコミュニケーションの不信や絶望感だけではなく、どん底の日常の中にある「愛情」や「希望」だったのだ、と僕は思う。 【ぐるぐる】さん 9点(2004-06-09 18:15:28) |
12.「ルーツ」を観てから他に何か黒人俳優の出演してる映画を観てみようと思い手にしたのがこの作品でした。これを観終わった後自分的にかなり衝撃を受けました。今までの映画には感じなかった”何か”を感じ取れたのです。正直なところその”何か”とは説明は出来ませんがいままでの自分の頭の中に無かった領域が造られたというような感覚です。抑圧されてきた人たちの感情というものどういうものだろうか?アメリカで生きる黒人達とはどういった感性の持ち主なのか?などと自分に無いものねだりな安易な発想でいろいろとブラックムービーを観始めました私ですが”はじめの一歩”の作品として良い作品を選択したんだなと今でも思ってます。 【tetsu78】さん 10点(2004-06-03 00:01:58) |
11.公開当時起こったL.A.での黒人の大規模暴動も相まって興味深く見れました。一般的な米黒人の本音が垣間見える所が良かったです。 主人公の黒人達と対立する朝鮮人コミュニティの様子も興味深かった。「何処へ行っても嫌われ者」ってのは居るんだなぁ…って感じ。 【番茶】さん 7点(2004-04-24 02:37:30) |
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10.90年代のある年、私はアカデミー賞の中継をTVで観ていた。リポーターとして現地に行っていたある日本の俳優が、通行中のアカデミー会員らしき中年の白人男性にインタビューをした。彼がおそらく何気なく言ったであろう言葉に、私は衝撃を受けた。「白人は黒人の映画なんて観ないんですよ」。公正に審査をすべき立場の人間の放った言葉とは思えなかった。今でも忘れられない。アメリカの人種差別というものは根深いどころの話ではない。なんてアンフェアな国なんだ、と気分が悪くなった。この作品も草の根レベルでは熱狂的に支持されつつも、あらゆる映画祭から無視された。アンフェアだ、と各界から声が上がった。そして少なくともこの作品は非常にフェアだ。人種差別を提起しつつ、差別される人間をそれでも全く美化しない。そして黒人だけでなく、イタリア人、韓国人、と被差別側の様々な人種の視点も盛り込んでおり、独りよがりの展開を押し付けていない。メッセージ性をいかにもというように押し付けず、個々の観客にその読解を求め、思考を促す。私も私なりに考えるものはかなりあったのは確か。でも私はアメリカの人種差別の体感温度は分からない。日本にどっぷり浸かっているから。だからこの映画のメッセージなり何なりをきちんと受け取れたかどうかはかなり怪しい。そういう意味で高得点はどうしても付けられない。私の理解、精進を促す意味も込めて、この点。 【ひのと】さん 6点(2004-01-04 13:31:26) (良:1票) |
★9.ひえ~、レビュー、すくなっ! スパイク・リー作品を1本でも気に入った人は、これは見とかなくちゃね、と思うんで、私も1票。 その後の監督の作品と比べ、熱気というか温度というか、迫力が格段に違う。 ほとばしっていました。荒削りなんだけど、それが吉と出ていたと思います。 タイトルも秀逸。無理矢理にオリジナル邦題をつけなかったことに、プラス1点。
但しこの採点、かなり昔に観た時の印象で言ってます。 細部は忘れました。 ノリは軽いんだけど、ひねりがたくさん効いていて、ひとすじなわじゃない・・そんなことを覚えています。 ほかのレビューヤーの皆さんも高採点だし私も同様ですが、少なくとも誰にでも合うという映画ではないはず。そこ、割引いて読んどいてほしいですね。
それと、リー監督が主張したかった、黒人のアイデンティティーの、その熱さは、正直、最近の映画での黒人の俳優の方々の活躍ぶりを見慣れた人たちにとっては、「?」というところもあるかもしれない。 ですが、昨年のアカデミー賞の、デンゼルとハル・ベリーのコメントを思い出すと、この映画の伝えようとしているものも、わかりやすいかも、と思います。 月並みですが、映画とはほんとにすばらしい。地球レベルでの私たちの共有財産ですね。 【おばちゃん】さん 9点(2004-01-04 10:58:18) |
8.主人公はピザ屋の店員に扮するスパイク・リー自身。NYハーレムでの黒人たちとイタリア系白人のピザ屋がからんでの騒々しい日常ぶり。ごく市井の人々の姿を坦々と描いた所が秀逸な作品だと思います。また切り売りのピザがアメリカ人の国民食的存在である事をこの作品を観て初めて知りました。 【Mr.MONK】さん 8点(2003-12-15 15:32:40) |
7.あれだけの低予算でよくもまあここまでいい映画を撮ったと、スパイクのセンスが光る逸品。何回観てもピザが食いたくなる。あと、7点つけたいところだけど、TAKE6とPEに+1点ですな。 【DeVante】さん 8点(2003-12-12 00:26:24) |
6.<ネタバレあります>考えさせられました。う~ん、だいぶ前に見たくせに自分の考えがちゃんとまとまってないんだけど・・・。そうですね、正直☆さんのコメントが完璧すぎて書きづらいのですが、少しだけ。最後の場面、店が襲撃された翌日に主人公が「バイト代をよこせ」と言ったシーン。ここが印象に残りました。そこまでして金かと。日本人は人の気持ちを察する点で他の民族より優れてるらしいのですが、これも全て歴史が作り上げてきたものだと思います。何を美しいと思うか、何を素晴らしいと思うか、そして何を『正しい』と思うか。差別され続けてきた黒人にとってはあの襲撃は正しい選択だったのかもしれない。ていうか積み重ねられてきた歴史が正しくなかったのでは?今起こっている戦争はどんな人間を作り上げていくんだろう・・・。正しい戦争は無いんだ、ブッシュ。(半分寝ながら書いたので文章めちゃくちゃでごめんなさい) 【d-baby】さん 9点(2003-05-04 02:04:38) |
5.パブリック・エナミーが好きでねぇ~。タイトル曲を監督がチャック.Dに頼んで作ってもらったって言うだけで観に行こうと決めてた。当時は黒人として監督自身が「何かをしなきゃ!」という気迫に満ちていた。(金も自分で集めに廻ったんだしね)アクセ、ファッション、壁の落書き・・・多数に散りばめたメッセージ。キング牧師かマルコムXかと言えば本音はマルコムXなんだろう(?)けど、もう監督自身は言いたい事を言い切っちゃったのかな。日本の若者がヒロシマ/ナガサキを独自のカルチャーにまぶして表現し、そして次世代に伝えていくって風潮は出てきゃしないのを考えてもアンタはエライ。それにしても最近はどうしちゃったんだ?スパイク・リー・・・。もっともっと「ドゥ・ザ・ライト・シング」しろよ! 【シュールなサンタ】さん 7点(2002-10-21 11:40:28) (良:1票) |
4.スパイク・リーは同年に創刊された「03」という伝説のサブカルチャー誌の創刊号で特集されていて,そこで知りました.ドゥ・ザ・ライト・シングはスパイク・リーのデビュー作ではないけれど,世間に知れ渡ったのは☆さんの言うようにこの作品からです.蓄積された「構図」からどうやって抜け出せというのか.理不尽な世界が現実だと思うのは怖いですが,事実でしょう.これは人間誰しも作り出しうる状況なのですか?ぼーっとしてる場合ではないです.考えましょう. 【じぇる】さん 9点(2001-12-16 05:31:37) |
3.スパイク・リー、カワユイです>^_^<こんな若い雰囲気の人がこんな過激な映画を作ったなんて・・・ 【HIKKI】さん 7点(2001-06-23 12:38:35) |
2.遅れ馳せながらやっと最近、観たんですけど、う~ん、確かに問題作ですね。テーマにしていることはスパイク・リー御馴染みだし、別に他の作品でも良く見掛けるところですが、その作風と“黒人の目から見た黒人の失態”とでも言いましょうか?なかなか黒人でない者にとっては言いづらいことがストレートに表現されていて驚かされてしまいます。いつもの白人批判ではなく、その点が感心しました。・・・・・あとはふ~ん、そうそう、“Soze”さん同様、(↓)“☆(DANGO)”さんのコメントを読んで下さい! 【イマジン】さん 9点(2001-03-16 17:01:04) |
1.’89年のアカデミー賞は、話題作、傑作が犇めいた。「ドライビング・ミス・デイジー」「7月4日に生まれて」「フィールド・オブ・ドリームス」「いまを生きる」「マイ・レフト・フット」の5作品がノミネートされた。授賞式当日、プレゼンターとして舞台に立ったキム・ベイシンガーが、「今年のノミネート作品ほど素晴らしい作品が揃った年はない。しかし一つだけ最高の傑作をアカデミーは忘れている・・・」その言葉に偽りはなかった。10年近く経った今見てもかなりの問題作である。これはただ人種問題を取り上げたものではない。人種差別を非難するだけでなく、そこにある日常生活の深い問題を取り上げている。この物語に登場する白人(白人と言っても、アメリカ社会では、時として同じく差別を受ける側にもなりうるイタリア人なのだが・・・)は、決して悪いことをしているとは言えない。差別意識はあるのかもしれないが、もしここに登場する黒人たちが日本人の元で仕事をし、生活をすれば、もっと問題が起きるであろう。この作品に登場する黒人たちは、どう見ても決してマナーがいいとは言えない。問題を起こしているのは黒人たちの方である。当然、差別を受けてきた方からすれば言いたいことも不満もあるだろう。この作品で彼等がやっていることは、何代にも渡って受けてきた差別意識、それが親たちから受け継がれてきて蓄積されてしまい、若い黒人たちは完全に屈折してしまっている。この作品で繰り返される台詞、”正しいことをしなさい”。果たして”正しい”とは何だろうか?少なくとも自分は、この作品で正しいことをしている人を一人も見つけることが出来なかったが? 【☆】さん 9点(2001-01-29 23:23:04) |