25.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。すばらしい。他には見たことがないような非凡な傑作。 これは「入り口」の物語なのですね。赤線地帯の内側の様子は一コマも出てきません。何もかもが外側のギリギリの地点で繰り広げられる。そのことが、煮え切らない付かず離れずの男女の物語を何ともいえずスリリングにしています。 主人公の二人は突出して魅力的というわけでもないし、物語がそれほど面白いわけでもなく、原作を読んでみようという気にもならないけれど、やはり内と外の境界という絶妙な設定が効いていて、そこを出入りする人々や、その周辺で働く堅気の人々や、土砂を運ぶトラックや、水辺でボート漕ぎに興じる人々や、たわいもなく遊ぶ子供まで、すべてがスリリングに見えてしまって飽きません。 撮影所の技術に裏打ちされているとは思うけれど、まるでヌーベルバーグのようなしなやかさと軽さもあります。川島雄三の技ありの一本。 【まいか】さん [インターネット(邦画)] 9点(2022-08-25 03:21:02) (良:1票) |
24.《ネタバレ》 戦後まもなく、今日を明日を生きるって時代、何の因果か別れることのできない二人。刃傷沙汰になってもおかしくない。こういうストーリーはあまり好きでないけど、新珠三千代が、電気屋の親父のバイクのうしろに乗っかてゆく軽さと、明るい色気。彼女を見ているだけで、楽しくなる。それと、ビルが何にも無い東京が見られて良かった。 【kirari】さん [DVD(邦画)] 8点(2021-08-10 20:48:49) |
23.《ネタバレ》 筋だけみれば、まったくどうということのない話。つまり、「駄目カップルが巻き起こすあれこれ」の一言でまとめられてしまう話。しかしそれを、この作品は、絶妙な脚本と演出で、無限の広がりを持つ別世界にまで高めている。それは、各登場人物の出し入れのトリッキーなほどのタイミングであったり、そこから重ねられる心理の綾だったり、おかみさんや蕎麦屋の娘の的確な設定だったり(そしてもちろん終盤に登場する「彼」も!)、ということである。●途中で男がふらふら出ていく神田の電気店街は、その暑さと熱さがこちらにも伝わってきて、幻想的ですらある。その男の足取りは、オアシスを離れた旅人が砂漠を放浪するもののようにも見えてしまう。●そして実は、どこまでもカメラ内では脇にしかならない、決して焦点が当たらないあの子供2人が、いい味とアクセントを出しているのではないかと思います。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 7点(2021-05-24 00:50:05) |
22.《ネタバレ》 YouTubeの日活公認、無料放送でみた。ずっと見たかったので、ラッキーでした。 男女の人情のもつれを描いた中々味のある良い映画ですね。 主役の二人はどうしようもない浮草人生を別離をきっかけに抜け出しそうになるのですが、結局元のもくあみに。 人生ってなかなかうまく行かないもんですねぇ。 終盤、刃傷沙汰があり、てっきり主役の二人かと思いきや、意外な人物でした。 ラストの不思議な明るさは何だったんでしょうか?でも暗い雰囲気で終わるより良かったかな。 新珠三千代はいい女優さんですね、好きになりました。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-05-30 18:30:03) |
21.脚本の力で引っ張っていく正統派の映画。役者の演技や映像に頼ることない素晴らしい脚本、役者の演技も文句なし、構図も計算し尽くされている。男女の業を肯定したラストに、映画を見終わった後どこか救いがある。減点のしようがない。 【ブッキングパパ】さん [インターネット(邦画)] 10点(2020-05-14 20:20:37) (良:2票) |
★20.古い映画には当時は評価されていたのだろうけど時代とともに評価が落ちるものも多い。逆に時代に色あせないものや時代とともに魅力が増してくるものもある。この映画はまさに後者。
蓮っ葉なのに上品さのある新珠三千代もダメな男の愛しさ満開の三橋達也もほれぼれしてしまう。 ぽっちゃり体形になってからしか知らない轟夕起子も「青春怪談」と同じくらいのいじらしさ。 でもやはり主役は洲崎パラダイスと街の風景。 知らないはず時代の知らない風景なのに不思議な郷愁に誘われて気が付くと当時を知っているような懐かしさを感じてしまった。 50年以上前の映像なのに勝鬨橋も万世橋の欄干の石の表示板も今も健在。 映画の中から現在を探してしまった。そんな愛しさのある映画です。 【omut】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-10-20 08:35:37) (良:1票) |
19.映画はタイムマシーンである。ぼくたちはこの映画と一緒に昭和31年の深川州崎を散策する。当時の人たちと一緒に。――それにしても、ああ、なんと愛しい人たちだろう。 【火蛾】さん [DVD(邦画)] 10点(2015-10-31 16:33:49) (良:1票) |
18.《ネタバレ》 本作品、川島雄三監督、得意の題材と見た。彼の作品を何作か観て、戦後の日本の苦しい時代、みんなが支えあって生きてた時代を描くと、彼は名人のような、後味のうまい作品を創ると感じていた。「愛のお荷物」「あした来る人」などのような作品より、「暖簾」「わが町」のような作品に、僕は彼の生き生きした演出を感じてならない。川島監督の早逝した理由は、商業主義の映画界にあって、自分の不本意な作品作りを強いられたための彼のアイデンティティの危機だったのでは?と勝手に解釈してる。もっともっと彼の戦後のヒューマンな映画が遺されていたら、と悔しくてしょうがない。 【トント】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-07-28 22:03:47) |
17.《ネタバレ》 ろくでもない男女の愛憎劇だから、もっとデロデロするもんだと思うのですが乾いている。因果応報とか一宿一飯の義理とかがまるでない不思議な世界。だから、なんかこう、感情移入できる登場人物がいないんだ。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 4点(2012-12-29 07:21:41) |
16.おどろおどろしい娼婦ものかと思いきや、人情味溢れるカラリとした青春物語。最大の功労者は飲み屋のおかみさんで、彼女を中心に物語は回っていました。さらに玉子ちゃんの瑞々しさが作品に彩りを添えていました。起承転結全てが見事な一品。 |
|
15.洲崎パラダイス一歩手前の赤信号、よくぞ留まった。最初の方は、義治の駄目男ぶりが嫌でたまらなかったが、次第に物語に引き込まれてしまった。男と女の間柄はそう簡単に割り切れるものではない。この映画はそれを深く掘り下げ、鋭く描き出している。名作という以外ない。 新珠三千代の演技力はすばらしいし、芦川いづみさんもいい。最後はちょっとかわいそうだったけど・・・。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-10-12 20:47:28) |
14.《ネタバレ》 完璧である。主人公カップルが脱出してきた洲崎パラダイスへと架かるあの小さな橋は、カオスとコスモスを分節する橋であり、そのカオスへの逆戻りをこのカップルはぎりぎり踏みとどまる。しかしこちら側カタギの空間とて「コスモス」となりはしない。50年代の時代の寵児たる「オートバイに乗ったラジオ商」が、彼女を奪い去る。 主人公は人に尋ねる、二人が去った方角は「橋の中か外か」。「外の方」だという答え、つまりカタギの物象化された都会。同時代のイタリアでも「自転車泥棒」(デ・シーカ)すら捕まらないご時世に、相手がオートバイでは探し当てることは不可能だ。そうしてさらに、ひとりの純情娘がこの橋に現れ、主人公へのかなわぬ恋心を水面に映す。見事な橋の映画である。 【ひと3】さん [映画館(邦画)] 10点(2011-03-02 17:57:39) (良:1票) |
13.大人がつくった大人の映画。これなんかを観ると、日本映画もガキンチョになっちまったなあ、とつくづく思う。見ごたえあり。 【goro】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-11-02 13:10:58) |
12.《ネタバレ》 今作は【 「 予見 の 提示 」→「 予見 の 裏切り (トラップ) 」→ 「 トラップ の 途中放棄 」 → 「 予見 の 具現化 」 】 というプロセスを推移していく、2つの事例を織り交ぜながら表面的なストーリー展開と並行する 【「制作者の文脈」 を推理する楽しさ】 に満ちた鑑賞となりました。 ■そして、川島雄三 という天才が、日陰者の視線から、日本の近代化と経済成長の 「予見」 を 語っていたことに対して 、【社会学的な価値を見い出せた作品。】 と、評価します。 制限文字数では語り切れず、完成版はこちら、ネタバレ注意 ↓ http://ouiaojg8.blog56.fc2.com/blog-entry-98.html 【マーク・レスター】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-08-08 11:33:48) |
11.《ネタバレ》 ダメカップルが周りに迷惑をかけながらくっついたり離れたり…なんだかどうでもいい話で、もう勝手にしておくれ感が強い。この二人より、魅力的な脇役達にもっと物語を与えて欲しかった。お玉ちゃん可愛い。 【すべから】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-03-15 12:21:23) |
10.わたしは、”旧赤線地帯フリーク”なので、前から見たいとおもってました。この時代の東京が見れることがまず嬉しいし、当時の洲崎パラダイスがみたかった。(健さんも行ったという東京パレス、なんてデカイのも小岩にあったらしい)この時代の日本映画ってほとんど知らないんですけど。いいっすねえ!世界のクロサワ作品がマジで、ガキんちょにみえます(笑)。しかし、ひょっとして、非常に上質ではないですか?コレ? とくに、酒屋のおばさんのやさしさ。なんという、ふところの深さ!泣けてきたなあ。ほかにも、やはり”銭のハナ”も”藤達也”もスキになっちゃう!みんないいオンナやなあ。 この監督、他のもガゼン!観たくなった。 【男ザンパノ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-10-02 00:41:22) (良:1票) |
9.場末っていうのはつまり、都心で進行している社会活動の濃密な人間関係から離れた場所。遊郭ってのがそもそも後腐れのなさを売ってる場所だったわけで、そういったフワフワした感じがもう洲崎という土地にしみ込んでいる。身元の保証などなく、ざっと店主が上から下まで見下ろしただけで、蕎麦屋の出前になれる自由さ。でもかえってそういう頼りないフワフワした土地だから、腐れ縁は腐れ縁としてクッキリ浮かび上がってしまうのかも知れない。このなんともブヨブヨした場末ならではの空気が見事に写し取られていた。やたらに雨が降るし。新珠のシャキッとしたところと対照させるためだろうが、三橋のウジウジぶりはやや過剰に感じられる。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-11-24 12:14:11) |
8.洲崎パラダイス 赤信号。もうネーミングの響きがいいですね~。冒頭の洲崎パラダイスの通りに連なる賑やかな店先を、上から見下ろし延々と横移動するシーン。長回しもさることながらエネルギッシュな芝居にも感服。ああ、こんな風に物語は進行するのかと思ったが、ここからが少し違った。本編は洲崎パラダイスの入口手前で進行する。溝口健二は中からこの世界を描いたが、この設定は正直、斬新です。しかしそれからの展開は男と女の愛情のもつれに終始し、前半ほどのインパクトはありませんした。玉ちゃんの扱いも中途半端だし、ラストもね・・。でも背景はおもしろかったですよ。秋葉原(でしたっけ?)の電気街などは賑やかさも建物も壮観でした。それにしてもこの時代は勢いがありますねえ。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-01-30 00:00:10) |
7.ビックリした!見る前は川向こうの歓楽街【洲崎パラダイス内】で繰り広げられるオハナシなのかと思っていたら、それは最初のタイトルバックだけ。結局最後までカメラは川のこっち側、普通の人々が日常生活を送っている側から頑なに離れようとはしない。どうしようもないダメ男から離れられない女の姿から、自分も成瀬巳喜男「浮雲」を連想しましたが、こちらの方が良い意味でより軽佻浮薄、何より深刻ぶらないのが良いです。脇役ながら芦川いづみ、この映画でもメチャメチャ可愛いっすねえ~。全シーン、地味な蕎麦屋の店員の前掛け姿なのに、こんなに可愛いなんてよっぽど素材が良いんでしょう。何気なく前掛けの2つのポッケに手を入れている仕草を見ているだけでも、こっちの顔がほころんできます。昔、『山口百恵は菩薩である』なんていう言葉があったような記憶があります。私は同監督作「風船」のレビューで、ラストシーンの芦川いづみからは後光が射しているようだと書きましたが、この作品や「陽のあたる坂道」「乳母車」での彼女のたおやかな微笑みを見ていると、ついこんな言葉が浮かんできます、『芦川いづみは千手救世観音像である』と。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-12-29 11:03:40) (良:3票) |
6.《ネタバレ》 最初は「赤線地帯」のような娼婦たちの生き様を描いた作品かと思っていたが、男女の腐れ縁を描いたラブストーリーだった。川島雄三監督らしいユーモラスなシーンもあり、同じく男女の腐れ縁を描いている「雪国」や「秋津温泉」ほど見ていて暗い気持ちにはなることはなかった。また、それでいて人間ドラマが非常に深く描かれた傑作に仕上がっており、川島監督がやっぱり並の監督ではなかったと実感できる。出演者の中では新珠三千代が今まで見た役柄のイメージとは少し違う印象の役(とはいえはじめはちょっと気づかなかった。)を好演していて新鮮で良かった。ダメ男を演じる三橋達也も素晴らしい。でもやっぱ出演者の中でいちばん印象に残るのは芦川いづみ。この間見た「愛と死の記録」では印象が違いすぎて違和感しかなかったのだが、本作ではこれでもかと言わんばかりに可愛さを振りまいていてとてもキュートだった。ほかにもチャンバラごっこに興じる子供たちなど、製作当時の時代風景も印象的だ。ラストシーンも余韻を残す終わり方でよい。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-12-04 18:12:49) (良:2票) |